澤田 政廣
澤田 政廣
澤田政廣:1894ー1988 芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞、日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章 (熱海市立澤田政廣記念館、谷村美術館・澤田政廣展示館にて)
蓮 華 (木彫り)
1983年(昭和58年)89歳
私はこのごろ墨の味わいを楽しむことが多い。もともと絵描きになりたかったのを彫刻の世界に入ったわけで、現在の私にとっては、絵を描くことも、木を彫ることも、芸術するという点でかわりはない。
西洋の美術に比べると、日本のものは、いかにも生きているという感じが強い。東洋人独特の、非常に鋭い、デリケートな性格を有しているせいか、ノミや筆のはしりかたが、生きていて、作品自体が生物である。
東洋の芸術は、心の芸術である。日頃からそれなりの素地をつくり、常に破壊し、自分を組み立てていく。
若い人は若い人なりに、壮者は壮者なりに、作家の魂は変化しても、生き続けていかねばならない。
常に生活の中に、動いているものでなければ、芸術ではない。
私は、今の時代を背景とした作家的態度で仏像をつくりたいと思うんです。
宗教家としてではなく、近代芸術家としての訓練の結果を仏像に表現したい。
近代の心がにじんだ仏像、言いかえれば過去と自分の勉強した近代と、次の時代までつながっていく仏像をつくりたい。
そんな野望を持っているんですよ。
澤田政廣が目指した仏像は、伝統墨守的な仏像ではなく、明治、大正、昭和という現代を生き抜いた、生きた芸術家の手になる、今の時代に生きた仏像であると言えるでしょう。
以下、続きます。