【設計因子】
木材の見映えに影響する主な因子は以下の通りです
・色彩,濃淡
・模様,周波数
・凹凸,光沢
【色彩,濃淡】
色彩の表現手法にはいくつかの方式が存在します
ここではJIS-Z8781-4に定められているL*a*b*表色系を用いてご紹介します
L*は明暗を表し,数値が大きくなると明るくなります
a*b*は色みを表し,a*が大きくなると赤みが,b*が大きくなると黄みが強くなります
主な樹種のL*,a*,b*の値は以下の通りです *1)
樹種 L* a* b*
ヒノキ 73.98 8.25 30.67
サワラ 68.42 10.06 30.22
ネズコ 65.24 10.7 15.8
ヒノキアスナロ(ヒバ) 73.12 5.16 25.66
トドマツ 82.53 1.03 23.91
カラマツ 68.93 9.63 30.04
エゾマツ 83.66 0.76 25.01
アカマツ 83.83 0.5 26.21
ツガ 73.03 7.07 24.58
イチイ 64.67 16.3 35.9
スギ 70.34 10.4 26.92
アガチス 65.25 8.17 29.43
ベイヒ 73.22 7.3 28.88
タイヒ 76.01 4.42 32.47
ベイスギ 64.77 6.54 23.81
ベイマツ 71.69 9.08 29.22
ベイツガ 71.02 6.75 25.7
シトカスブルース 78.79 4.03 25.67
ラジアータマツ 75.60 5.17 28.39
ソレンカラマツ 69.43 6.68 32.22
ベニマツ 71.62 7.94 29.22
イタヤカエデ 69.14 7.95 20.38
ハリギリ(セン) 74.27 2.71 22.95
ハンノキ 58.63 10.8 25.06
ミズメ 67.38 12.15 21.12
ウダイカンバ(マカンバ) 61.71 11.88 25.01
アサダ 49.52 14.9 20.9
カツラ 62.55 12.77 28.05
クリ 74.45 2.63 22.3
ブナ 64.91 7.64 24.64
ミズナラ 65.85 5.47 23.68
シラカシ 72.89 5.37 22.01
トチノキ 79.20 4.62 26.65
オニグルミ 54.16 8.75 18.84
ノグルミ 68.56 4.60 18.12
クスノキ 70.91 5.88 23.74
イヌエンジュ 51.52 9.15 21.28
ホオノキ 60.96 1.81 19.9
ヤチダモ 66.82 6.65 24.15
シオジ 69.99 7.0 23.4
シウリザクラ 54.89 12.4 26.34
キハダ 69.71 4.3 49.92
キリ 68.4 5.11 18.97
シナノキ 78.30 3.8 21.45
ハルニレ 63.70 5.45 21.62
ケヤキ 66.04 6.38 33.1
ニューギニアウォルナット 53.49 5.67 16.67
パルサ 72.23 8.23 21.33
メルサワ 70.67 6.69 29.26
アピトン 52.95 12.42 19.84
カブール 56.32 11.61 23.22
バクチカン 67.91 6.95 25.19
ダークレッドメランチ 52.70 11.59 18.36
レッドラワン 66.67 9.83 22.93
ライトレッドメランチ 65.43 10.21 22.39
イエローメランチ 58.88 6.5 24.99
ホワイトメランチ 73.94 5.63 28.25
コクタン(濃色部) 25.26 0.25 1.38
ラミン 76.16 4.11 31.76
ブラックウォルナット 41.36 9.03 12.65
アカシア・コア 54.53 15.06 26.15
インディアンローズウッド 34.80 11.48 8.51
ブラジリアンローズウッド 34.94 7.71 5.83
ブビンガ 47.37 16.72 18.87
ゼプラ 56.27 8.99 21.84
ナーラ 45.39 20.21 23.27
セペチール 59.92 8.42 19.14
ジュンコン 64.08 8.1 26.09
マホガニー 57.87 14.64 28.87
カメレレ 58.04 12.86 22.9
マトア(タウン〉 60.43 10.54 24.49
ニヤトー 55.32 13.12 22.32
チーク 47.60 7.66 22.12
平均 64.10 8.09 24.00
【模様,周波数】
木目の模様は,木材断面に表れる年輪の見え方です
年輪は,成長速度の変動による細胞の密度差が濃淡となって表れたものです
模様は樹形や切断の方向により変化しますが,周期は年輪幅と,明瞭さは濃淡差と関連性があります
主な樹種の年輪幅と濃淡差(輝度のコントラスト)の値は以下の通りです *2,3)
樹種 年輪幅(mm) 濃淡差
イチイ 1.0 0.157
カヤ 0.9 0.089
イヌマキ 1.1 0.175 *
モミ 2.1 0.140
トドマツ 3.9 0.069
カラマツ 2.5 0.089
エゾマツ 1.7 0.044
アカマツ 2.5 0.181
クロマツ 5.0 0.120
ヒメコマツ 1.0 0.179
トガサワラ 1.6 0.048
ツガ 1.6 0.104
スギ 3.2 0.148
コウヤマキ 1.4 0.079
ヒノキ 0.9 0.119
サワラ 1.2 0.073
ネズコ 0.9 0.190
ヒバ - 0.078
ドロノキ 3.4 0.123
オニグルミ 3.7 0.191
サワグルミ 3.5 0.178 *
ハンノキ - 0.110
ミズメ 1.2 0.133
マカンバ 3.2 0.141
アサダ 1.3 0.150
クリ 3.4 0.121
スダジイ 3.5 0.099
ブナ 1.6 0.073
ミズナラ 1.0 0.127
アカガシ 1.5 0.212
シラカシ 1.8 0.154
ハルニレ 2.0 0.130
ケヤキ 1.5 0.171
ヤマグワ 3.0 0.226
カツラ 1.6 0.179
ホオノキ 1.5 0.089
クスノキ 2.0 0.179
タブノキ 1.6 0.206 *
イスノキ 1.3 0.421 *
ヤマザクラ 1.3 0.140
イヌエンジュ 1.9 0.236
キハダ 2.9 0.268
イタヤカエデ 1.6 0.084
トチノキ 1.3 0.091
シナノキ 1.3 0.051
ハリギリ 1.3 0.147
ヤチダモ 1.8 0.295
アオダモ 1.4 0.127
シオジ 1.5 0.135
キリ 6.9 0.167
平均 2.07 0.145
(*赤身,白太など年輪以外の濃淡あり)
【凹凸,光沢】
木材は多孔質で不均質な材料のため,平らに加工しても,表面に微妙な凹凸が残ります
一般に表面粗さを小さくすると光沢度が増しますが,木材での関連性は明確ではありません *4,5)
樹種や木取り,加工方法・条件など設計因子の解明は今後の課題となります
【設計指針】
木材の見映えを活かすには以下のような工夫が有効です
・色彩 赤み:a*,黄み:b*,明暗:L* を指標に樹種を選定
・模様 粗さ:年輪幅,明瞭さ:濃淡差 を指標に樹種を選定
【参考文献】
1) 基太村洋子 林業試験場報告 347巻(1987)
「内外産有用木材の測色値」
2) 林試研報 第319巻 (1982)
「木材の特質一覧」
3) 信田聡 木材学会誌 62巻 6号 (2016)
「日本産木材50種のデジタル画像を用いた視覚的好ましさの評価」
(論文画像より輝度のヒストグラムを作成し,“3×標準偏差/平均”を算出)
4) 米原牧子 精密工学会誌 82巻 11号 (2016)
「表面性状パラメータを用いた質感の定量化手法」
5) 増田稔ほか 京都大学農学部演習林報告(1989)61号
「木材の表面加工性性状と光沢感の関係」