【特徴】
古い町屋やログハウスなど木を多用した家は温かな印象を与えます
木材は細胞に隙間のある多孔質材料であり,その構造が保温性・断熱性を高める要因となっています
木材の熱伝導率は0.1 (W/mk) 程度であり,金属やコンクリートと比較して1/10~1/1000 の小さい値となっています
木材,金属,石材などの表面に触れた時の印象とこれら熱伝導率との関連性が確認されています
木製のケージで飼育したマウスの生存率が他の材料よりも高いと言う報告も,その要因は保温性の違いにあります
これらの特性は住宅の居住性だけでなく,木製品の手触りや肌触りの向上に活かすことができます
木材の熱伝導率はその比重と相関があり,主な樹種の値は以下の通りです
・ブナ,ナラ,クリ 比重:0.5~0.7 熱伝導率:0.12~0.16 (W/mk)
・スギ,ヒノキ,マツ 比重:0.4~0.5 熱伝導率:0.09~0.12 (W/mk)
一般に広葉樹は針葉樹より比重が大きく,熱伝導率も大きな値となっています
また木取りの方向とも関連があり,繊維方向の熱伝導率はそれに垂直な方向の約2倍の値となります
滑らかで塗装のある場合には皮膚との接触面積が大きくなるため,体の熱が伝わりやすくなります
アカマツにポリブタジエン系塗料を塗布した試験では,熱伝導率が 0.17 から 0.19 (W/mk) に上昇しています
【設計要件】
樹種,木取りなどにより熱伝導率が決まります
表面粗さ,塗装の有無などにより接触抵抗が変化します
樹種ごとの熱伝導率は“設計の指針”に,床材の表面温度については“機能性の試算”に記載しています
【留意点】
壁材や床材など木材が薄い場合には外部への熱の逃げを考慮する必要があります
壁が外気に接する場合やコンクリートの上に直貼りした場合は木材を介して熱が伝わり保温性が低下します
【参考資料】
特徴
・伊藤晴康ほか 静岡大学農学部研究報告 36巻 (1987)
「生物学的評価方法による各種材質の居住性に関する研究」
・葉石猛夫ほか 材料 46巻 (1997) 11号
「温湿環境と木材」
・鈴木正治 材料 24巻 (1975) 264号
「居住性と木材の特性」
・村越康ほか 人間工学 5巻 (1969) 2号
「熱伝導率が異なる物質の表面触」
・杉山真樹ほか Journal of Life Support Engine 19巻 (2007)
「福祉用具の木製部材における接触温冷感に関する研究」
・杉山真樹ほか Journal of Life Support Engine 20巻 (2008)
「福祉用具の木製部材における接触温冷感に関する研究Ⅱ」
・梨原宏ほか デザイン学研究 43巻 (1996) 3号
「木製車いすにおける木質環境と感覚特性」
設計要件・留意点
・満久崇麿 京都大学木材研究所報告 9巻 (1952)
「木材の比重と熱伝導率の関係について」
・永井智 兵庫県農技総セ研報 (森林林業) 55巻 (2008)
「木材の調湿・断熱性能評価」
・小畑良洋 材料 67巻 (2018) 5号
「木材の熱物性と接触温冷感」
・清水伸二ほか 精密工学会誌論文集 71巻 (2005) 8号
「真実接触面積を考慮した結合部接触熱抵抗の定量的測定法」
・穴沢靖ほか 色材協会誌 72巻 (1999) 6号
「軟質木材用コーティング材料の開発」
・平成21年度北海道地域イノベーション創出協働体形成事業
「木の温かみを定量化し、それを実現する表面加工技術マニュアル」
・仲村匡司 木材保存 23巻 (1997) 3号
「木材と感性」
・岡野健 材料 46巻 (1997) 9号
「触感覚と木材」