【触感の導出】
木材の触感に影響する因子は,粗滑感,温冷感,硬軟感,乾湿感と言われています
関連する物性値として,粗滑感は表面粗さ,温冷感は熱伝導率,硬軟感は(比)ヤング率,乾湿感は吸放湿量が挙げられます
後三者の起源については,温もり,柔らかさ,乾き・湿りの項を参照して下さい
木材の表面粗さは,針葉樹では年輪による大きなうねりが,広葉樹では道管による小さな凹凸が支配的と言われています *1)
この他に,鉋仕上げで生じる毛羽立ちは放射組織の残渣とされ,表面粗さの増加要因となります *2)
【組成・構造との関係】
影響を与える因子を明らかにするため,国産広葉樹を対象として表面粗さと組成・構造との関係を調べました *3,4,5)
国産広葉樹では,道管の複合,階段穿孔板の段数,道管相互壁孔の大きさ,独立柔組織,熱水及びアルコールの可溶分と関連性が見られました
道管の複合や穿孔板の階段数の多い樹種では,開口が大きく壁も厚くなり,表面粗さが大きくなると考えられます
道管の相互壁孔や独立した柔組織の多い樹種では,それらによる凹凸が生じ,表面粗さが大きくなると考えられます
可溶分と表面粗さとの関連性については,明確な記述が見つかりませんでした
抽出成分の潤滑作用により摩擦係数が低下するとの指摘があり,切削面に影響している可能性が考えられます *6,7)
【参考文献】
1)「木材表面あらさの官能評価と物理的評価の関係」
佐道 健ほか 京都大学農学部演習林報告 49 (1977)
2)「ヒノキ材の平削り面における毛羽立ちの生成機構の考察と定量評価」
古川隼人ほか 木材学会誌 Vol.65 No.2 (2019)
3)「材の化学組成およびパルプ化試験」
米沢保正ほか 林業試験場研究報告 253号 (1973)
4)「日本産主要木材の材構成割合について」
平井信二 東京大学農学部木材材料学第一教室業績 第159号 (1960)
5)「広葉樹微細構造」
森林総合研究所 日本産木材識別データベース
6)「木材の摩擦特性に関する研究-2-木材の摩擦成分について」
村瀬安英ほか 木材学会誌 20 (6) (1974)
7)「高接触圧における木材と鋼材の摩擦係数」
桑村仁 日本建築学会構造系論文集 76巻 666号 (2011)