木材の試験方法はJIS-Z2101に規定されています
記載のない項目については関連する手法を記しています
計測に必要な機器類は各地の工業試験所,林業試験場などが保有しています *1)
木材は自然素材のため物性の個体差が大きく,その変動係数(標準偏差を平均値で割った値)は20%程度と言われています
抜き取り検査などによりばらつきを把握し,それに基づいて誤差範囲を設定するなど適切な管理が必要となります
1)温もり
・熱伝導率
・熱抵抗
JIS-A1412 「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法」
温度の異なる2枚の平板に試験体を挟み,厚さ方向の熱抵抗・熱伝導率を測定する
(GHP法:Guarded Hot Plate)
・熱容量
JIS-K7123 「プラスチックの比熱容量測定方法」
試料と基準物質の温度を変化させ,両者の温度差より熱容量を測定する
(DSC法:Differential scanning calorimetry)
2)柔らかさ
・硬度
JIS-Z2101 「木材の試験方法」
棒状の圧子を試験体に押し込んで,その抵抗値を測定する
・剛性
JIS-Z2101 「木材の試験方法」
試験体の繊維方向に直交して圧縮荷重を加え,変形量を測定する
(引張,曲げも同様)
3)乾き湿り
・吸放湿量
・吸放湿速度
JIS-Z2101 「木材の試験方法」
40℃75%RHの環境下で,試験体の吸湿量と速度を測定する
4)手触り
・粗滑感
JIS-B0651 「製品の幾何特性仕様」
(GPS:Geometrical Product Specifications)
先端が円錐形の触針を用いて表面をなぞり,輪郭曲線を得る
JIS-B0601 「製品の幾何特性仕様(GPS)」
輪郭曲線の特徴より表面粗さを算出する(算術平均高さ:Ra,最大高さ:Rzなど)
・温冷感,硬軟感,乾湿感は上述の通り
5)響き
・剛性
上述の通り
・密度
JIS-Z2101 「木材の試験方法」
所望の含水率において,試験体の容積・質量より密度を算出する
・粘性
ASTM E756-83(米国規格,日本には該当する規格はない)
“Measuring Vibration-Damping Properties of Materials1”
短冊形試験片の一端を固定し,その振動特性から損失係数を求める
6)見映え
・色彩・濃淡
JIS-Z8722 「色の測定方法」
380~780nmの波長範囲で分光反射率を測定し,三刺激値X,Y,Zを求める
JIS-Z8781 「測色」
計算式により XYZ から Lab に座標系を変換する
・模様・周波数
特に規定はないが以下の方法が良く用いられる
撮影画像を二次元方向にフーリエ変換し,周波数や強度を求める
・凹凸・光沢
JIS-Z8741 「鏡面光沢度」
試料面に対して60度の角度で光を入射し,同じ角度で反射する光の量を測定する
7) 香り
・成分
特に規定はないが以下の方法が良く用いられる
JIS-K0114 「ガスクロマトグラフィー通則」
試料を気化し,固定相との相互作用(吸着・分配)を用いて成分を分離する
・放散量
JIS-A1901 「建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物 放散測定方法」
小型の容器に試験片を入れ,空気流量と出口濃度より対象物質の放散速度を測定する
・耐朽性
JIS-Z2101 「木材の試験方法」
試験材を腐朽菌(オオウズラタケとカワラタケ)に攻撃させ,質量減少率を測定する
・耐犠牲
JIS-K1571 「木材保存剤」
試験材をイエシロアリに食害させ,質量減少率を測定する
【参考資料】
*1) 経産省「全国鉱工業公設試験研究機関保有機器・研究者情報検索システム」