【特徴】
部屋の壁や天井に木材が使用されていると,落ち着いた印象を受けます
集合住宅の和室では,木目が印刷された合板やビニール壁紙などが多用されています
印刷された木目でも,このように印象が変わるのはどうしてでしょう
人間の視覚は,色彩,濃淡,模様,凹凸など様々な情報を受け取っています
国産木材の色彩は,マンセル表色系で以下の範囲にあると報告されています
・色相:6.4YR~1.6Y (黄赤~黄)
・明度:4.2~7.6 (中~高,黒:1)
・彩度:2.9~6.6 (低~中,無彩:0)
近い色彩のものには,夕陽や炎,人肌や食物,生成りの綿や麻,素焼きの陶器など暖かな印象を与えるものが多くあります
これらの値は,歴史的に優れた建築物の内装材に使用されている色合いとよく一致しています
木目は木の成長に伴う細胞の積層模様で,互いに交差することがありません
交差しない多数本の線画は,すっきりした美しい印象を与えると言われています
節,斑,杢など特徴ある模様も,一定程度であれば生命力や躍動感など好ましい印象を与えます
木目の幅や色の濃淡には,“1/fゆらぎ”と言われる一定の変動があります
天候の変動など自然界のリズムによる成長の揺らぎを反映したもので,美しく落ち着いた印象を与えています
木材表面には細胞の構造に伴う微妙な凹凸があり,光を反射,散乱しています
細胞自身が僅かに光を透過する特性と合わさって,木材に適度な光沢感を与えています
これらの色や模様の特性が,木材に安らかで落ち着いた印象を与えています
心理的な印象に留まらず,心拍数や血圧など生理面に与える影響も研究されています
【設計要件】
色彩・濃淡は,樹種や塗装などにより決まります
模様・周波数は,樹種・樹齢・木取りなどにより変化します
凹凸・光沢は,樹種・表面加工・塗装などにより変化します
樹種ごとの色彩値とコントラストは“設計の指針”に,外観の数値化については“機能性の試算”に記載しています
【参考資料】
特徴
・増田稔 繊維機械学会誌 50巻 (1997) 9号
「木目の見え方―なぜやすらぐか」
・日本木材加工技術協会 (1989) 「日本の木材」
・基太村洋子 林業試験場報告 347巻 (1987)
「内外産有用木材の測色値」
・武者利光 繊維と工業 47巻 (1991) 11号
「1/fゆらぎと美しさ」
・増田稔 林産誌だより 1999年3月号
「人はなぜ木を好むか」
・柴崎慧ほか 2010年度精密工学会春季大会
「木目模様のデジタルデザインシステムの開発」
・山田正 材料 38巻 (1989) 430号
「木質環境の特性」
・Tsunetsugu et al J Physiologocal Anthropology 21 (6) (2002)
「The Visual Effects of Wooden Interiors」
・満久崇麿ほか 材料 28巻 (1979) 315号
「木質材料の居住特性」
・鈴木正治 材料 24巻 (1975) 264号
「居住性と木材の特性」
設計要件
・増田稔ほか 京都大学農学部演習林報告 (1989) 61号
「木材の表面加工性性状と光沢感の関係」
・増田稔 材料 46巻 (1997) 7号
「視感覚と木材」
・岡島達雄ほか 日本建築学会構造系論文報告集 369 巻 (1986)
「木目の図形的分析と木目パターン」
・仲村匡司 木材保存 23巻 (1997) 3号
「木材と感性」