【断熱性能の試算】
冬季における床材の表面温度を試算してみます
熱の流れは熱流量:Qを電流に,温度:Tを電圧に置き換えた等価回路で表すことができます *1)
・T = QR オームの法則より R:熱抵抗
物質の熱抵抗は長さ ÷ 熱伝導率となります
厚さ 熱伝導率 熱抵抗
木材 15mm 0.1W/mK 0.015 ÷ 0.1=0.15m^2K/W
コンクリート 100mm 1.0W/mK 0.1 ÷ 1.0=0.1m^2K/W
床と空気など異なる物質間での熱エネルギーの流れやすさは熱伝達率で表され,熱抵抗はその逆数になります *2)
温度 熱伝達率 熱抵抗
屋外 0℃ 7W/m^2K 1 ÷ 7 ≒ 0.14m^2K/W
室内 20℃ 7W/m^2K 〃
(床の値)
室内から屋外へ移動する熱流量は,両者の温度差を経路の熱抵抗の和で除した値となります
従って,床材の表面温度:Tf は以下で算出できます
Tf=Tin-(Tin-Tout) × Rin ÷ (Rin+Rw+Rout)
Tin:室内温度
Tout:屋外温度
Rin:室内の熱抵抗
Rw:壁の熱抵抗
Rout:屋外の熱抵抗
各種の材質で計算した床材の表面温度を以下に示します(外気温:0℃,室温:20℃時)
材質 熱伝導率 厚さ 熱抵抗 表面温度
W/mK mm m^2K/W ℃
コンクリート 1.0 100 0.1 12.6
木材(一般値) 0.1 15 0.15 13.5
30 0.3 15.2
100 1.0 17.8
ナラ 0.14 15 0.11 12.8
キリ 0.07 15 0.21 14.3
熱伝導率の低い木材を用いることにより,冬でも温かい床を実現することができます
【参考文献】
1) 長坂雄次 電気学会誌 117巻 (1997) 10号
「熱の流れを等価回路で考える」
2) 三浦昌生 森北出版
「基礎力が身につく建築環境工学」