【振動特性の導出】
物質の振動特性は,密度(比重),剛性(ヤング率),粘性(内部摩擦)で表わされます
・密度(比重)
温もりの起源に記載の通り,木材の密度は木部比率により決まります
・剛性(ヤング率)
柔らかさの起源に記載の通り,木材の剛性は繊維壁の強さに影響されます
・粘性(内部摩擦)
木材の細胞壁は層構造をしており,ミクロフィブリルと呼ばれる骨格と,その間を埋めるマトリックスから構成されています
ミクロフィブリルはセルロースの結晶から,マトリックスはへミセルロースとリグニンから形成されています
木材が変形すると,ミクロフィブリルとマトリックスとの間に滑りが生じ,これが内部摩擦の原因となります *1)
【組成・構造との関係】
影響を与える因子を明らかにするため,国産広葉樹を対象として内部摩擦(tanδの接線方向)と組成・構造との関係を調べました *2,3,4)
国産広葉樹では,階段穿孔板の段数(負),木部繊維の比率との関連性が見られました
開口部の多い階段穿孔板を有する樹種では,摩擦が減少し粘性が低下すると考えられます
木部繊維の比率が高いと,細胞壁での摩擦が増加し粘性が上昇すると考えられます
上記文献では比重,比ヤング率(負)との相関が指摘されていますが,これらも木部繊維の比率と同様の理由によると考えられます
【参考文献】
1)「木材の繊維方向における比動的ヤング率と内部摩擦」
則元 京ほか 京都大学木材研究所 木材研究・資料 22号 (1986)
2)「材の化学組成およびパルプ化試験」
米沢保正ほか 林業試験場研究報告 253号 (1973)
3)「日本産主要木材の材構成割合について」
平井信二 東京大学農学部木材材料学第一教室業績 第159号 (1960)
4)「広葉樹微細構造」
森林総合研究所 日本産木材識別データベース