【設計因子】
木材に触れた時の硬軟感に影響する主な因子は以下の通りです
・木材の硬度
・木材の剛性
硬度は材料表面の変形し難さを,剛性は材料本体の変形し難さを表わしています
【木材の硬度】
木材の硬度はブリネル硬さ,ヤンカ硬さなどの指標で表わされます *1)
樹種,木取り,圧縮などの加工により硬度が決まります
・樹種
木材の硬度はその比重と相関があり,おもな樹種のブリネル硬さは下表の通りです *2)
・木取り
木材の硬度は断面により異なります
板目の硬さは木口の0.3倍,柾目の硬さは木口の0.35倍とされています *2)
【木材の剛性】
木材の剛性は弾性率(ヤング率)という指標で表わされます *1)
樹種,木取り,圧縮などの加工により剛性が決まります
・樹種
木材の剛性はその比重と相関があり,おもな樹種のヤング率は下表の通りです *2)
・木取り
木材の剛性は方向により異なります
半径方向の剛性は繊維方向の約1/10,接線方向は約1/20とされています *2)
樹種 比重 ブリネル硬さ(MPa) ヤング率(GPa)
木口 柾目 板目 繊維方向
サワラ 0.34 29.4 8.8 6.9 5.9
ネズコ 0.36 29.4 7.8 6.9 6.9
スギ 0.38 31.4 9.8 7.8 7.4
トドマツ 0.4 24.5 8.8 7.8 7.8
コウヤマキ 0.42 ー ー ー 7.8
エゾマツ 0.43 34.3 9.8 7.8 8.8
モミ 0.44 34.3 9.8 7.8 8.8
ヒノキ 0.44 36.3 10.8 10.8 8.8
ヒバ 0.45 39.2 12.7 11.8 8.8
ヒメコマツ 0.45 38.2 11.8 10.8 6.9
カラマツ 0.5 44.1 14.7 13.7 9.8
ツガ 0.5 39.2 11.8 10.8 7.8
イチイ 0.51 34.3 9.8 7.8 7.8
アカマツ 0.52 42.1 12.7 11.8 11.3
クロマツ 0.54 42.1 12.7 11.8 10.3
キリ 0.3 14.7 10.8 9.8 4.9
ドロノキ 0.42 26.5 5.9 6.9 7.4
サワグルミ 0.45 44.1 9.8 11.8 10.8
ヒロハノキハダ 0.49 39.2 12.7 15.7 7.8
ホオノキ 0.49 34.3 10.8 14.7 7.4
シナノキ 0.5 29.4 9.8 9.8 7.8
カツラ 0.5 34.3 9.8 11.8 8.3
セン 0.52 34.3 10.8 11.8 8.3
クスノキ 0.52 34.3 12.7 13.7 8.8
オニグルミ 0.53 37.2 11.8 12.7 9.3
ハンノキ 0.53 49.0 11.8 16.7 11.3
シオジ 0.53 34.3 12.7 14.7 9.3
ヤチダモ 0.55 34.3 12.7 14.7 9.3
クリ 0.6 44.1 13.7 14.7 8.8
シイノキ 0.61 49.0 19.6 23.5 9.8
ハルニレ 0.63 32.3 10.8 10.8 8.3
タブノキ 0.65 39.2 17.6 19.6 8.8
イタヤカエデ 0.65 44.1 15.7 19.6 11.8
ブナ 0.65 44.1 19.6 17.6 11.8
マカンバ 0.67 49.0 21.6 23.5 12.7
ミズナラ 0.68 34.3 12.7 14.7 9.8
ケヤキ 0.69 44.1 17.6 19.6 11.8
ニセアカシア ー 58.8 29.4 22.5 10.8
ミズメ 0.72 49.0 22.5 24.5 13.7
アサダ 0.73 44.1 14.7 18.6 13.2
シラカシ 0.83 63.7 29.4 34.3 13.7
アカガシ 0.87 53.9 24.5 26.5 13.7
イスノキ 0.9 68.6 27.4 29.4 13.7
【加工の影響】
木材の硬度,剛性は加工により変化します
加工には熱や圧縮など機械的なもの,ブチル化やアセチル化など化学的なものがあります
薄板の積層や塗装,樹脂の浸透などの方法も活用されています
針葉樹など軟質材の硬度,剛性をこれらの手法により高める事例が報告されています *3,4,5,6)
樹種 木取り 加工 硬度 剛性
スギ 板目 圧縮:20% 1.2倍 1.1倍
40% 1.8倍 1.3倍
60% 3.8倍 2.0倍
ラジアータパイン 追柾 圧縮:10% 1.3倍 1.1倍
アカマツ 板目 積層(1mm厚) 1.6倍 -
UV塗料(4H) 1.3倍 -
機械的な加工の効果は次第に低下するため,薬品による架橋,樹脂の注入,応力の緩和などの固定法が提案されています
剛性の低下はこれらの固定により数%以下に抑えられます
【設計指針】
木の柔らかさを活かすには,以下の様な工夫が有効です
・硬度,剛性の低い樹種を選定
・接触面を板目・柾目に木取り
木材の硬度,剛性を高めるには,圧縮や薬品・樹脂による加工が有効です
梁の構造的な強度を高めるには,断面の幅や高さを調節する設計対応も可能です
矩形の断面を備えた梁の曲げ剛性:Frは以下で表わされます
Fr=EBH^3/12
E:ヤング率,B:梁の幅,H:梁の高さ
梁の高さを1.25倍にすると,曲げ剛性は約2倍に増大します
【参考文献】
1) 日本工業規格 JIS Z2101
「木材の試験方法」
2) 木材工業ハンドブック
丸善出版 森林総研監修
3) 則元京 京都大学 木材研究・資料 30号 1994
「木材の横圧縮と加工」
4) 井上雅文 京都大学 博士論文(農学)
「木材の横圧縮大変形の永久固定」
5) 江越航ほか 広島県立東部工業技術センター研究報告 第16号 (2003)
「ラジアータパインの表面圧密(第3報)」
6) 谷内博規ほか 岩手県林業技術センター研究報告 9巻 (2001)
「軟質針葉樹材の表面硬化技術の開発」