【設計因子】
木材の調湿性に関連する主な因子は以下の通りです
・吸放湿量
・吸放湿速度
【木材の吸放湿性能】
木材の吸湿性に関する試験はJIS-Z2101に規定されています
吸放湿の量と速度に関連する指標として気乾比重と24時間吸湿量があります
気乾比重は含水率15%時の比重であり,値が大きいほど木材に含まれる水分量が大きくなります
24時間吸湿量は加湿後の24時間に木材が吸湿する水分量を表し,値が大きいほど吸湿速度が高いと考えられます
(40℃75%RH調湿 → 40℃90%加湿時)
主な樹種の気乾比重と24時間吸湿量は以下の通りです *1)
樹種 気乾比重 24時間吸湿量(mg/cm2)
木口 板目 柾目
イチイ 0.54 328 59 54
カヤ 0.51 332 66 58
イヌマキ 0.55 280 104 85
モミ 0.44 246 75 79
ウラジロモミ 0.36 - - -
アオモリトドマツ 0.41 - - -
トドマツ 0.41 217 75 72
シラベ 0.40 197 62 62
カラマツ 0.53 333 84 83
エゾマツ 0.43 188 63 63
アカエゾマツ 0.46 213 66 70
トウヒ 0.46 431 120 122
トガサワラ 0.47 257 74 78
ツガ 0.54 284 85 85
アカマツ 0.42 278 94 86
ヒメコマツ 0.42 317 72 66
クロマツ 0.58 221 82 71
スギ 0.36 280 76 68
コウヤマキ 0.32 239 78 72
ヒノキ 0.41 282 83 84
サワラ 0.36 258 77 78
ネズコ 0.34 318 76 74
アスナロ 0.43 433 117 115
ヒノキアスナロ 0.42 274 70 63
ドロノキ 0.34 183 74 70
ヤマナラシ 0.45 - - -
オニグルミ 0.54 248 70 58
サワグルミ 0.34 141 55 57
ミズメ 0.70 201 69 63
シラカンバ 0.60 439 139 118
マカンバ 0.65 261 101 99
アカシデ 0.76 297 119 92
アサダ 0.72 200 85 71
クリ 0.56 250 70 64
スダジイ 0.61 - - -
ブナ 0.68 228 79 66
イヌブナ 0.68 304 115 99
アカガシ 0.92 233 93 73
シラカシ 0.88 - - -
ウバメガシ 1.08 - - -
イチイガシ 0.78 218 84 65
クヌギ 0.86 - - -
ミズナラ 0.69 249 78 69
コナラ 0.81 311 118 96
ハルニレ 0.61 176 67 55
ケヤキ 0.62 258 92 77
ヤマグワ 0.60 279 115 67
カツラ 0.49 224 66 62
ホオノキ 0.47 210 91 72
クスノキ 0.50 120 43 40
タブノキ 0.68 341 71 69
イスノキ 0.92 214 94 78
ヤマザクラ 0.60 427 131 109
イヌエンジュ 0.63 339 80 67
キハダ 0.46 258 86 74
モチノキ 0.93 - - -
イタヤカエデ 0.67 318 134 98
トチノキ 0.53 373 145 102
シナノキ 0.49 306 86 74
オオバボダイジュ 0.41 - - -
ヒメシャラ 0.78 - - -
ハリギリ 0.50 197 79 72
ミズキ 0.67 449 150 118
シオジ 0.57 227 78 71
ヤチダモ 0.70 235 87 76
アオダモ 0.72 251 108 93
キリ 0.29 188 63 60
コジイ 0.47 215 55 50
オオバヤナギ 0.39 135 46 35
コバノヤマハンノキ 0.47 211 71 64
フサアカシア 0.72 - - -
ヤマハンノキ 0.48 308 109 92
【塗装の影響】
塗装を施すと木材の吸放湿速度が低下します
・ヒノキ(柾目)に塗装を施し,吸放湿の速度を比較した結果は以下の通りです *2)
(全含水率変化の1/2に達する時間を測定)
塗装条件 吸湿 放湿
無塗装 1 1
ニトロセルロース・ラッカー 1/6 1/15
アミノアルキッド樹脂 1/9 1/30
ポリウレタン樹脂 1/9 1/30
ポリエステル樹脂 1/30 1/120
・タモ材(柾目)に塗装を施し,24時間吸湿量を比較した結果は以下の通りです *3)
(20℃68%RH調湿→20℃87%加湿時)
塗装条件 24時間吸湿量
無塗装 1
ポリウレタン樹脂(膜厚110um) 1/15
水性アクリルエマルジョン 1/3
ポリウレタン樹脂(膜厚25um) 2/3
セラミック系(浸透型) 2/3
自然塗料(浸透型) 2/3
【加工の影響】
木口の24時間吸湿量は板目,柾目の約3倍となっています
木口面を露出するため,表面に多くの溝を設けたパネル材が市販されています *4)
表面粗さを大きくすると,木材の繊維が断たれるため,同様の効果が期待できます
【設計指針】
木材の調湿性能を高めるには,以下の様な工夫が有効です
・気乾比重の大きな樹種を選定
・24時間吸湿量の大きな樹種を選定
・無塗装もしくは浸透型の塗装に
・表面に溝加工や粗面加工を
【参考文献】
*1) 中井孝ほか 森林総合研究所 研究報告 319巻 (1982)
「日本産主要35樹種の強度的性質」
*2) 佐道健 材料 18巻 (1969) 193号
「塗装木材における塗膜の透湿性」
*3) 岸久雄ほか 三重県工業技術総合研究所研究報告 23巻 (1999)
「木材の調湿機能と塗装」
*4) 平川木材工業 HP
「杉スリット」