第7回城崎新人セミナーアブストラクト

全体講演(講演順 敬称略)


榎本 直也 (京都大学 数学教室) : 「ヘッケ環と量子群の表現論周遊」(白版もしくはパソコン)

対称群の表現論を例にとりながら、表現論の基本的な問題意識をかいつまんで説明することからはじめたいと思います。まず、対称群とLie環の表 現論の関わりや完全可約性とその破れという現象について例を中心に説明します。次に、対称群やLie環の量子化であるヘッケ環や量子群といった対象についてごく簡単に触れた上で、ヘッケ環のモジュラー表現を量子群の表現論を用いて記述するLascoux-Leclerc-Thibon-Ariki理論について紹介することを目標にしたいと考えています。


尾國 新一 (愛媛大学) : 「閉リーマン多様体と離散群のL2不変量」(プロジェクター(と白板))

前半では、閉リーマン多様体の(普遍被覆の)L2不変量、特に、L2-Betti数について説明する。この際、通常のBetti数との関係や、類似点および相違点について留意し、例も交えながら進める。後半では、離散群のL2不変量の定義および性質を説明する。また、いくつかの未解決問題を紹介する。


鈴木 香奈子 (東北大学) : 「ある活性因子ー抑制因子系におけるパターンの崩壊現象」(パソコン(予定)ときどき白板)

本講演では、ある活性因子ー抑制因子系におけるパターンの崩壊という現象を考える。考える方程式系は、例として形態形成のモデルとして重要な役割を果たすギーラー・マインハルト系を含むが、この方程式系では、活性因子の濃度分布が空間非一様なパターンを形成することが期待される。しかし、方程式系が基礎生産項と呼ばれる項を含まない場合、一度出来かけた空間パターンが、最終的には一様に0に収束してしまうという現象を数値実験で見ることができる。このような、パターン形成からは期待されない現象の考察を通して、モデル方程式の意味を考えたいと思う。


伊藤 哲史 (京都大学 数学教室) : 「平方数の和で表される素数について」(白板)

奇素数pがx^2+y^2 (x,yは整数) のように2つの平方数の和で書けるための必要十分条件は、pが4で割って1余ることであることが知られています。ところが、pが6x^2+xy+y^2 (x,yは整数) と書けるための必要十分条件を「pが ?? で割って ??? 余る」という形に書くことはできません。 x^2+y^2と6x^2+xy+y^2は何が違うのでしょうか?この講演では、このような問題が、(可換および非可換)ガロア表現の保型性に関する「非可換類体論」と呼ばれる理論により、統一的に理解されることを紹介します。また、非可換類体論に関する最近の進展や、素数をk個の平方数の和で表す方法の個数への応用についても触れたいと思います。


宮地 秀樹 (大阪大学) : 「私的タイヒミュラー理論入門」 (未定)

タイヒミュラー空間とはリーマン面の標識付き擬等角変形空間の事です。講演ではまず擬等角変形などタイヒミュラー理論における基本的な事柄を説明して、タイヒミュラー空間における最近の研究について紹介します。タイヒミュラー理論の応用範囲は広く、私的に興味のある事に限定した話になるかも知れませんが、何か興味を持っていただければ幸いです。


稲浜 譲 (名古屋大学) : 「ラフパス理論の紹介」(OHP)

伊藤清先生の創設した確率微分方程式というのは、確率論を知らないひとでも小耳にはさんだことはあるのではないかとおもいます。私の研究しているラフパス理論というのは、確率微分方程式論の「脱確率論化」を目指す物で、ある意味ではアンチテーゼといえます。この理論では積分の定義に妙味があります。K.T. Chenの一連の理論によれば、空間内を走るパスに対して、1-formの線積分が考えられますが、これはパスとそれからできる重複積分のfunctionalだと思えます。これをヒントにして、ブラウン運動に沿った確率積分(ランダムなパスに沿った線積分)をパスとその重複積分functionalだとして、定義しなおしたのが T.Lyonsの"Rough Path Theory"です。パスとその重複積分の組のことをラフパスと呼んでいます。この結果、確率微分方程式の解が完全にdeterministicなものになってしまった上に、入力するパスに対して解として求まるパスを対応させる伊藤写像は連続関数になってしまいました。従来の確率論の観点からはありえなかったことです。本講演では、この理論について簡単に紹介したいと思います。


セッション講演(代数)


渡辺 百合佳 (奈良女子大学 M2) : 「数列の整除性について」(パソコン)

フィボナッチ数列にはある整除性があります。今回はフィボナッチ数列を少し拡張したある数列の場合にも同様の性質があることを話したいと思います。また、n番目の項を素数が割り切るときのnとその素数の関係についても紹介したいです。


大下 達也 (京都大学 M2) : 「円単数のEuler系と高次Fittingイデアル」(白板)

栗原将人氏(慶應義塾大学)は、岩澤加群のマイナスパートの高次Fittingイデアルを決定することで、総実代数体の岩澤主予想(マイナスパート)を精密化した。本講演では,Q(μ_p)の円分Z_p拡大に関するイデアル類群の岩澤加群のプラスパートの高次Fittingイデアルについて述べる.プラスパートに関しては,高次Fittingイデアルを決定することはできていないが、高次Fittingイデアルの大きさを評価できるような岩澤代数のイデアルを、円単数のEuler系を用いて構成することができた。これは、岩澤主予想(プラスパート)の精密化になっている。この結果を紹介する。


竹森 翔 (京都大学 M2) : 「degree 2,奇数levelのp進Siegel-Eisenstein級数」(白板)

Serreは自身のp進保型形式の理論の中で係数がEisenstein級数のFourier係数のp進極限になっているようなFourier級数を考えました。これをp進Eisenstein級数と言います。長岡先生は多変数のEisenstein級数である、Siegel-Eisenstein級数の場合に、類似のもの考え、ある場合にはlevel 1のEisenstein級数のp進極限がlevel pのSiegel保型形式になっていることを証明されました。degree 2、levelが奇数、指標が原始指標の場合に類似のことが示せたのでそれを紹介したいと思います。


権業 善範 (東京大学 M2) : 「対数的標準特異点を持つ弱Fano多様体について」(白板)

極小モデル理論(MMP)に現れる多様体でFano多様体という代数多様体がある。またMMPには川又対数的端末特異点と対数的標準特異点という重要な特異点のクラスがある。今回お話させていただくのは、このFano多様体に非常に関係のある弱Fano多様体が、川又対数的端末特異点を持つ場合と対数的標準特異点を持つ場合とでは幾何学的に大きく異なるということです。


綾野 孝則 (大阪大学 M2) : 「telescopic三浦曲線に対応するシグマ関数の構成」(白板)

コンパクトリーマン面Xにおいて整数係数1次ホモロジー群の標準基底と1次コホモロジー群の標準基底を定めると4つの周期行列が定まり、その周期行列についてある種の周期性を満たす正則関数をシグマ関数という。しかし任意のXについてシグマ関数が存在するとは限らない。先行研究では超楕円曲線を含む(n,s)曲線という平面曲線までシグマ関数の存在が示されていた。本研究では(n,s)曲線を含むより一般のtelescopic三浦曲線においてシグマ関数の存在を示すことが出来たのでそれを紹介する。


上山 健太 (静岡大学 M1) : 「3次元AS-regular代数の次数付き森田同値性について」(白板)

大雑把に言えば、非可換代数幾何学とは代数幾何学の考え方や結果を用いて非可換代数を研究する分野であり、Artin, Tate, Van den Berghが代数幾何学を用いて3次元AS-regular代数を分類したことが出発点となっている。今回の講演では、いくつかのタイプの3次元AS-regular代数の次数付き森田同値性に関する結果について話をしたい。


森澤 貴之 (早稲田大学 M2) : 「有理数体の円分的Z_3拡大におけるWeberの類数問題」(白板)

代数的整数論における重要な対象の1つとして、代数体の類数があげられる。類数が1となる有限次代数体が無限に存在するかどうかは、未だに分かっていない。そこで、素数pに対し、有理数体の円分的Z_3拡大に注目し、その全ての中間体の類数が1となるか、という問題を考える。これを『Weber の類数問題』と呼ぶ。だが、類数が1であることを証明することは難しいため、その類数がpと異なる素数elで割れるかどうか、という問題を考える。その問題に関し、pが3の場合に得られたいくつかの結果に関して講演する。


千葉 隆宏 (名古屋大学 M2) : 「F-pure threshold と Fedder-type criterion による計算」(OHP)

正標数の可換環には、フロベニウス写像を用いていくつかの重要な不変量が定義される。私は特にその中でも、フロベニウス写像の分裂性に関する F-pure 性とその限界である F-pure threshold と呼ばれる不変量について研究している。これらはまだ具体的に計算することが難しいことが多く、例えば行列式環等のよく知られた環に対しても満足とはいえない状況にある。本講演では、 F-pure threshold の基本的な性質からはじめ、F-pure threshold のいくつかの計算例について解説する。


松田 一徳 (名古屋大学 D1) : 「On F-thresholds」(OHP)

F-thresholdは正標数の可換環のイデアルの組に対して定義される不変量で、ムスタタ-高木-渡辺によって導入されて以来、多くの研究者によって研究されてきましたが、まだ生まれて間もない不変量であるため、わからないことがまだまだたくさんあります。今回は、F-thresholdについてのサーベイと僕の修論の結果を軸にお話しいたします。


セッション講演(幾何・解析)


伊藤 和貴 (東北大学 M2) : 「サブリーマン多様体の位相的分裂定理」(白板)

最近、リーマン多様体上で知られる解析学的、あるいは幾何学的結果をより一般の幾何学的枠組みで調べて、よく知られていないものに適用する、という研究がさかんに行われている。今回の講演では、リッチ曲率0以上、という条件を測度と距離の言葉で述べた、測度収縮性質(measure contraction property)をサブリーマン多様体に仮定して、チーガー・グロモールの分裂定理について調べた結果を発表させていただきます。


直川 耕祐 (大阪大学 M2) : 「3次元ユークリッド空間における平坦なメビウスの帯と特異点」(白板)

3次元ユークリッド空間R^3における平坦(つまりガウス曲率が常に零)なメビウスの帯はその漸近方向を延長すると特異点が現れる。このことは、Hartman-Nirenbergの定理より完備かつ平坦なR^3にはめ込まれた曲面は柱面であることから、示唆されることである。3/2-カスプとRの区間の直積に現れる特異点はカスプ辺と呼ばれ、最も典型的な特異点である。次に典型的な特異点としては、燕の尾と呼ばれるものがある。本講演では、R^3の平坦なメビウスの帯の延長に現れるカスプ辺以外の特異点の個数を下から評価することについて話したい。


足立 真訓 (名古屋大学 M2) : 「Milnor-Wood 不等式への微分幾何学的アプローチ」(白板)

Milnor-Wood 不等式とは、双曲閉曲面上の円周束が平坦構造を持つ時にそのオイラー数が制限されることを主張する不等式です。40年ほど前の古典的な定理ですが、現在に至るまで円周の同相群、葉層構造、リーマン面、調和束などの観点から研究が深められ続けています。この講演では、元々の Milnor-Wood不等式の証明についてサーベイを行います。特に S.Frankel、Thurston による葉層構造の調和測度を用いる方法に注目して紹介します。


岡崎 建太 (京都大学 M2) : 「1の偶数乗根におけるレンズ空間のTuraev-Viro不変量とReshetikhin-Turaev不変量について」(パソコン)

一般に、閉3次元多様体のTuraev-Viro不変量の値はReshetikhin-Turaev不変量から導出されることが知られている。しかし、1の偶数乗根においては、SO(3) Turaev-Viro不変量は定義されるが、SO(3) Reshetikhin-Turaev不変量は定義されない。 この講演では、1の偶数乗根における SO(3) Turaev-Viro不変量の値はrefined Reshetikhin-Turaev不変量から導出されることを解説し、レンズ空間に対してその値を計算する。


蔦谷 充伸 (京都大学 M2) : 「A_n-空間とA_n-写像」(パソコン(質疑応答で白版希望))

位相空間...に連続な積...が与えられていて、単位元...がある(i.e. ...)とき、対...を...-空間(またはHopf空間)という。...-空間...がホモトピー結合的であるとは、...と...がホモトープとなることである。たとえば位相群は結合的な...-空間である。位相群の場合は結合性からいくつの元の積...をとっても結果は積を取る順番によらないが、...-空間の場合はホモトピー結合的であるというだけではある意味で十分結合性があるとはいえない。この講演ではより高度な結合性を持つ...-空間を導入し、その基本的な性質と例について解説する。


伊藤 哲也 (東京大学 D1) : 「群の両側不変順序の幾何的構成とその応用」(パソコン)

多様体の基本群に対し、Chenの反復積分と呼ばれる手法を用いて、両側不変な全順序構造を構成する。Chenの反復積分は、多様体上の線積分や、de Rham theoryなどの拡張であり、基本群の非可換な情報を抽出できる。この構成法を通じて、両側不変順序構造とSullivanの有理ホモトピー論や組み紐群の有限型不変量といったトポロジーの他の分野との関連を述べる。


関坂 歩幹 (九州大学 M2) : 「1次元シュレディンガー作用素の固有値問題に対する力学系的アプローチ」(パソコン)

周期的なポテンシャルを持つ1次元シュレディンガー作用素の スペクトルはバンド・ギャップ構造を持つ。この作用素にコンパクトな摂動を加えるとギャップの中に固有値が現れることがあるが、このような固有値の存在を調べることは非常に困難である。本講演ではこの問題をconnecting orbitの存在問題という力学系の問題に帰着させることで、精度保証付き数値計算とよばれる計算機で数学的に厳密な計算により示すことが可能であることを紹介する。


白石 大典 (京都大学 M2) : 「ランダムウォークのパスの幾何学的構造について」(パソコン(白板))

シンプルランダムウォーク(以下SRWとする)のパスの幾何学的構造は、数学と物理の両方から注目され、活発に研究されてきました。それを理解するひとつの方法として、パスの構造を反映する種々のexponent を決定するということがあります。本講演では、次の3 つのexponent、intersection exponent、loop-erasing exponent、resistance exponentについて説明し、それらの相互関係及びSRWのパスのどのような性質がそれぞれに反映されているかを、できるだけわかりやすく説明しようと思います。また、時間に余裕があれば、SRWのパスの上のRWについても報告したいと考えています。


中島 誠 (京都大学 D1) : 「分枝ランダムウォークの人口密度の挙動について。」(パソコン(白板))

分枝過程は生物の個体数の発展のランダムさを確率論的に記述するために導入され研究されたモデルである。その中に分枝ランダムウォークという生物個体が空間を動くモデルを記述するものがあり、これに関する研究として1960年代から現在に至るまでさまざまなものがある。今回の講演では分枝過程の定義、性質などの先行結果を紹介しつつ最後のほうで自身の結果について紹介する。


ポスター発表


入江 慶 (京都大学 M1) : 「ハミルトン力学系のフレア・ホモロジー」

モース理論によれば、有限次元多様体上に(モース)関数が与えられると、その臨界点に関する情報からもとの多様体のホモロジー群を復元することができる。一方、種々の変分問題の解は無限次元多様体の上で定義された汎関数の臨界点として捉えることができるが、A.Floerはモース理論での構成がこの状況でも実行できる場合があることを見抜き、いくつかの変分問題に対してフレア・ホモロジー群を定義した。今回は、ハミルトン力学系の周期軌道の場合についてフレア・ホモロジーを構成し、それを用いて周期軌道の個数が下から評価できること(Floerによるアーノルド予想へのアプローチ)を紹介したい。


Ganbat Atarsaikhan (京都大学 M1) : 「Coupled cell systems」

A coupled cell system is a network of dynamical systems, or “cells” coupled together. Mathematically, a network is a directed graph whose nodes represent state variables and whose directed edges represent interactions among those variables. The nodes and edges are equipped with some kind of ‘dynamic’, which could be a choice of moves (games), a transition probability (Markov chains), discrete states in time and space (cellular automata), or continuous states (coupled ODEs, the subject of the present discussion). Networks are ubiquitous in biology: examples include gene expression, neural circuitry, ecological food webs, and disease transmission. Networks are also common in many other branches of science. Martin Golubitsky and Ian Stewart have presented many papers about the coupled cell system which developing the theory. Here we describe some of their results, which is a basic theory of coupled cell network. A symmetry of a coupled cell system is a permutation of the cells that preserves all internal dynamics and all couplings. Symmetry can lead to patterns of synchronized cells, rotating waves, multirhythms, and synchronized chaos. The admissible vector fields for a given network—the dynamical systems with the corresponding internal dynamics and couplings—are precisely those that are equivariant under the symmetry groupoid. A pattern of synchrony is “robust” if it arises for all admissible vector fields. The first main result shows that robust patterns of synchrony (invariance of “polydiagonal” subspaces under all admissible vector fields) are equivalent to the combinatorial condition that an equivalence relation on cells is “balanced”. The second main result shows that admissible vector fields restricted to polydiagonal subspaces are themselves admissible vector fields for a new coupled cell network, the “quotient network”. The existence of quotient networks has surprising implications for synchronous dynamics in coupled cell systems.

References [1] I. Stewart, M.Golubitsky and M.Pivato, Symmetry Groupoids and Patterns of Synchrony in Coupled Cell Networks, SIAM. J. App. Dyn. Sys., Vol. 2, No. 4 (2003), 609--646. [2] M. Golubitsky, I. Stewart and A. Torok. Patterns of synchrony in coupled cell networks with multiple arrows. SIAM J. Appl. Dynam. Sys. 4 (1) (2005) 78-100 [3] M. Golubitsky and I. Stewart. Nonlinear dynamics of networks: the groupoid formalism. Bull. Amer. Math. Soc. 43 (2006) 305-364.


丸橋 広和 (京都大学 M1) : 「Oppenheim予想について」

...を...変数(...)不定値実2次形式で有理数係数2次形式の実数倍ではないとします。このとき...は...において稠密であるというのがOppenheim予想です。Margulisは...上のべき単流を調べることによってOppenheim予想を解決しました。その証明の方法について説明したいと思います。


今城 洋亮 (京都大学 M2) : 「錐に収束するスペシャルラグランジュ部分多様体」

スペシャルラグランジュ部分多様体とは極小多様体の一種である。以下のような二つのスペシャルラグランジュ部分多様体を考える。 一つはコンパクトだが特異点を一つもっていてそこではある錐に接している。もう一つは非特異だがノンコンパクトで無限遠では同じ錐に接している。 そのとき、これら二つを錐に沿って貼り合わせて別のスペシャルラグランジュ部分多様体を作ることができる。(Joyce氏の結果) その貼り合わせ方の一意性を示したい。まだ未完成だが、一意性の証明の指針を与える。


安東 雅訓 (岡山大学 M2) : 「ヤング図形のフック長の積」

対称群の元の中心化群の大きさzをa×bと表したとき、このa,bをそれぞれ共役類の代表元で積をとったもの同士が等しくなることが知られている。このことを母関数を用いて組合せ論的に示すことで自然にフック長の話になり、よく似たきれいな式が得られる。


坂下 美紀 (奈良女子大学 M2) : 「...代数の分母公式について」

無限乗積...を展開して得られる無限級数は、...という無限和で表される。これはEulerが1741年に発表した五角数定理と呼ばれる公式であるが、この公式の証明は組合せ論的証明、ヤコビの三重積公式を用いた証明などいくつかあり、...代数の分母公式を用いても証明できる。今回、無限乗積...がどのような無限和で表されるかについて、...代数の分母公式を用いて調べた。


長澤 弘明 (大阪大学 M2) : 「有限体上の平面曲線に関するModified Sziklai's conjecture について」

有限体の位数qと次数dを固定したとき、有限体F_q上のd次射影平面曲線上にあるF_q-有理点の個数に対する上限を決定する問題の起源は, 70年以上も前にさかのぼり、曲線に様々な条件を課した上で現在もなお活発な研究が続けられている。ポスター発表では、平面曲線に対して、F_q-line componentを持たないという条件のみを課した場合の上限に関するSziklaiの予想を紹介し、その修正版であるModified Sziklai's conjecture と、それに対しHomma-Kimが今まで証明した部分を紹介し、今後の課題について述べる。


梅本 悠莉子 (大阪市立大学 M1) : 「バナッハ・タルスキーのパラドックスとその拡張」

3次元ユークリッド空間内の、内点をもつ任意の2つの部分集合を考えます。それらは一般には合同ではありません。しかし、それぞれを同数のピースに上手に分割すると、各ピースごとには合同にできることが知られています。たとえば1つのオレンジをうまく切って、再び張り合せると2つのオレンジができるというわけです。この定理はバナッハ・タルスキーのパラドックスと呼ばれています。今回のポスターではこの結果を、3次元以上のユークリッド空間や双曲空間の定理に拡張するアイデアを説明します。