肛門痛とは
肛門痛は、肛門およびその周囲に感じる痛みを指し、多くの場合、日常生活に支障をきたします。
肛門痛の原因は多岐にわたり、主な原因として肛門周囲の疾患(痔核、裂肛、膿瘍など)や神経障害、筋肉の異常緊張が挙げられます。
肛門痛は主に以下の2つに分類されます。
急性肛門痛
裂肛や痔核、肛門膿瘍など、炎症や組織の損傷が原因となるもの
慢性肛門痛
肛門周囲症候群や肛門神経痛など、持続的で特定の原因が不明な痛み
主な症状
・排便時の鋭い痛み(特に裂肛の場合)
・肛門周囲の腫れや不快感(痔核、膿瘍など)
・長時間座位を取った際の痛み(肛門神経痛の場合)
・痛みに伴う出血や膿の排出(感染症が原因の場合)
一般的な治療法
薬物療法
・抗炎症薬
痔核や裂肛の炎症を抑えるために、ステロイド軟膏や坐剤が使用される
・鎮痛薬
NSAIDsや局所麻酔薬を用いて痛みを緩和
・抗菌薬
膿瘍や感染症がある場合、抗菌薬の投与が必要
生活習慣の改善
・便秘の予防
食物繊維の摂取や適切な水分補給、下剤の使用で排便をスムーズにし、肛門への負担を軽減
・温浴
肛門周囲の血行を改善し、痛みや炎症を緩和
物理療法
肛門括約筋の緊張を緩和するためのリラクゼーション法やストレッチが推奨される場合がありる
手術療法
痔核の切除や膿瘍の排膿、裂肛の縫合など、保存療法で改善しない場合には手術が選択される
血管内治療(カテーテル治療)
慢性的な肛門痛において、炎症性新生血管が痛みの原因となっている場合にはカテーテル治療が有効な可能性があります。
保存的治療でも痛みが減らない方、過去の検査で異常はないと言われたのに痛い方、毎回排便時に疼痛で困っている方はご検討ください。
※外来で問診・診察を行います
※出血がある場合は肛門鏡検査を行うことがありますので、事前に申し出てください
治療経過
急性肛門痛は適切な治療で数日から数週間で改善することが一般的です。
一方、慢性肛門痛では原因の特定が難しい場合があり、長期的な治療と経過観察が必要です。
患者の生活の質を向上させるためには、痛みの緩和に加え根本的な原因へのアプローチが重要です。
参考文献
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