帯状疱疹後神経痛とは
帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia, PHN)は、帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus, VZV)の感染後に残る慢性的な神経痛です。
帯状疱疹の皮疹が治癒した後も持続的な痛みが3か月以上続く場合に診断されます。
特に高齢者や免疫力が低下している患者に多く見られ、患者の生活の質(Quality of Life: QoL)に大きな影響を及ぼします。
症状
持続的な痛み
電気が走るような痛み、焼けるような痛み、または鈍痛
感覚異常
皮膚が過敏になり、軽い触れただけでも強い痛みを感じる(アロディニア)
神経障害性の痛み
灼熱感、しびれ、針で刺すような感覚などが含まれる
一般的な治療法
帯状疱疹後神経痛は神経障害性疼痛であり、治療は痛みの管理を中心に行われます。
薬物療法
・神経障害性疼痛薬
プレガバリンやガバペンチンなどの抗けいれん薬は、神経痛の第一選択薬
・三環系抗うつ薬(TCA)
アミトリプチリンやノルトリプチリンが、痛みと睡眠障害の軽減に有効
・局所治療薬
カプサイシンクリームやリドカインパッチが皮膚の過敏性を抑える
・オピオイド
重症例に限り、オピオイドが使用されることがありますが、慎重な投与が必要
神経ブロック療法
神経ブロックは神経の興奮を抑え、短期的な痛みの軽減をもたらす
物理療法
軽度の運動やリラクゼーション療法が、痛みの軽減とQoLの改善に役立つことがある
心理療法
痛みによる精神的ストレスを軽減するため、認知行動療法(CBT)などが推奨される
血管内治療(カテーテル治療)
帯状疱疹後神経痛において炎症性新生血管が痛みに関与している場合、カテーテル治療が有効なことがあります。
この治療は痛みを引き起こす異常な炎症血管を減らし、炎症や神経興奮を抑えることを目的とします。
※外来で問診・診察を行います ※術前の画像検査はありません
※皮膚の赤みが残っている方は痛みが比較的減りやすい可能性があります
※効果がある場合、痛みの範囲や程度は減りますが、全て無くなるわけではありません
治療経過
帯状疱疹後神経痛は治療によって症状が軽減する場合が多いものの、完全に治癒することは難しい場合があります。
早期治療が症状の軽減と慢性化の予防が重要です。
特に帯状疱疹発症後72時間以内に抗ウイルス薬を開始することで、発症リスクを軽減できるとされています。
参考文献
Dworkin RH, et al. Pharmacologic management of neuropathic pain: Evidence-based recommendations. Pain. 2007;132(3):237-251. doi:10.1016/j.pain.2007.08.033.
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日本神経学会. 神経障害性疼痛診療ガイドライン. 日本神経学会, 2021.