くだもの縁結び 第1巻 第3号 ~久野脇の聞き書き~
「何もかも手作りだよぉ」より
語り手 寺西 勤 寺西 陽子
~可愛いわが子へのナツミカンジュース~
陽子 そこにあるでしょ、ナツミカンが。あれ隣のうちのだけどね、あれ貰って搾ってジュースにして。
勤 それで、砂糖入れておくとシロップになっちゃうもんでな。搾るって、そのまんま切って入れときゃいいじゃんな?
陽子 違う!私が搾っただよ、ずっと。
勤 搾った?
陽子 うん。絞り機あっただよ。持ってきてもいいけどさ。
勤 あるだっけか?そ~おか。
陽子 (持って来つつ)あの当時はね、子供が小さい頃はね、ほんとに、何でも手で搾ったのよ。何百個じゃないけど何十個は搾ったね。こうやって手で。だからあの当時っていうのはね。私は子供たちが小学校上がるまでは、缶ジュースとかそうゆうジュース類はくれたことなかった。
勤 飲まんけなぁ・・・やらんけ。缶のそういうのは。
陽子 全部手で作ったものばっかり。ナツミカンは酸っぱいの。何にもおいしくない。だけど一応あの当時はね、やっぱりね、そうしてジュースを作って(子供に)くれたからね。飲むときは水を入れて飲んだんでしょうねぇきっと。
「あげるよぉ、欲はないもんでさ」より
語り手 田端 順子
~こんな大きなクワの木って無いら?~
このうちぁ〜昔は色々やってたみたいで、蚕もえーかん飼ってたみたい。この家の上にも屋根裏んあるよ。私は全然知らん。来たときはやってないっけよ。でも、寝てるとこう葉を食べる音がすごいって言ってたっけ。やるときは、ここの畳も全部取っちゃってさ。箱だかなんかへ入れさ、ここでずっとやったって。知らんだよ。あたしが来た時にはやってんけん。
こんな大きいクワの木って無いら?嫁に来た時も大きいっけだけぇが、あのねぇ、もっと木がこう真っ直ぐになってたっけ。形も(逆三角形の)ブドウみたいな形してるの。あれは成るとすごいさ。下へ落ちて道んさ、紫色になって。お父さん、結婚してからは食べないっけん、昔は口、紫色んなって食べたみたいなこと言ってた。私も食べたけん、あんま、おいしかぁなかったっけ。酸い。ジャムとかも作らない。みんな、金谷とかさ、島田の栗が採りに来てさ、何年か前まではさ。ジャムにするみたい。
私は全然作らんけんね。こうやってシート敷いといてさ。ほれであの、長い棒。ああゆうのでこうたたくとぼとぼと落ちるじゃん。そうやって採ってた。親戚じゃぁ無いよう。誰だっけだかしん。全部あげちゃった。欲は無いだよ。