くだもの縁結び 第1巻 第2号 ~久野脇の聞き書き~
「なんであんな木のこと覚えてるだかねぇ」より
語り手 諸田 喜代子
~一月十五日は餅の日~
実家にはたくさんカキの木があっただけんね、その全部にね、鉈で傷をつけるってことをやったっけ。一月十五日。私の子どものときは成人の日っていうのは無かったからねぇ「餅の日」ってあの頃は言ったけど。うるちだったと思うねぇ。あの頃もち米は作ってなかったもんでね。うるちはねぇ、畑でも作れたもんで。米を粉にして、練ってね。団子にしてそれをお粥の中に入れて「お餅粥」って言ってね。ちょっと塩入れたぐらいの具の入っていないお餅だけのお粥でね。お米の中にお餅を入れて煮てねぇ。おいしかったよぉ。一月十五日の朝、お母さんが作ってくれるからそのお餅を少しだけ残しておいてねぇ。お父さんについていってカキの木に、そんなに深くないよ。皮が薄く切れるくらい、傷を鉈でつけながら「成るか成らぬか、成らねば切ってしまうぞ!」って言ったっけ。脅かいただよねぇ。そうして傷ついたところにお餅を塗ってあげるの。毎年やったじゃないだかしらんねぇ。お嫁に来てこっちの家ではやらんかったけど。
「わたし果物すきだやぁ」より
語り手 石間 米子
~前庭の大きなカキは縁起担ぎ?~
このカキはたくさんなった時にはね、すごかった。最近は落ちる方が多いだよね。今年は、花の時からだけど、小さなころからぽたぽたぽたぽたね。朝起きて片づけるにさ、拾ってみたらバケツ二杯ぐらい。そんな感じでね。だんだんだんだん落ちてきてね、ほとんど落ちちゃったよ。いくつも採ったっていう程、食べないね。消毒でもしてね、管理をよくしてくれてありゃ、まだ違うと思うだけえが。カラスも来るしね。
この木はね、易者ちゅうかそういうのに見てもらうと、良いだって言われたことある。ここの場所にこのカキの木は。なんていうの、風水みたいなのに。次郎柿が。そういうの見込んで植えただかも知らんで、昔の人だだで。そうだと思うよ。何かの時に家の何がどこにあるとか、みな書いていって見てもらっただよね。そうしたら、お勝手の屋根と本屋の屋根の間がちょっと空いてただいね。その空きになってるのが良くないって。そいだもんでここに庇貼ってる。そんなことも言われちゃったっけ。今の若い人たちそんな事ね割とね、こだわらないだいね。