くだもの縁結び 第1巻 第1号 ~久野脇の聞き書き~
「お茶も果物もみんなしゃべってるよぉ」より
語り手 松下勝利 金森 清子
~梅干しの交換~
清子 その時分はおかずがないだもんで梅干しを「あぁ、一斗漬けた、一斗五升漬けた」って言うっけだよ。焼酎甕ってこんなら大きい甕があったっけよ。
勝利 漬けるのはおばあさんだな。女の人で一番齢が上の人が、代々繋いできたから。ほいだもんでその家によって全部味が違ったし、漬け込み方も違った。それだもんで「おい、勝っちゃん、あんたん家梅干しはうめぇ。これはえぇ」って言って交換した。
清子 ウメ採ってきて甕へ入れて塩漬けにするでしょ。その皺寄ったウメをね、裏へ行ってこ~そり出いてきて、それを持っちゃあ遊びに行っただよ。
勝利 お茶菓子売ってる店がないだもん。
清子 しょっぱいとも、酸いとも何とも思わないっけよ~。おいしいっけよ~。手が汚れてて「清子ちゃん汚い汚い、手を洗いな」ってどんなに言われたっても気にならないっけ。
勝利 そんな事、今みたいに考えないだよ。ほかに食べるものがないって事だよ。