降圧薬
近年、高圧目標は引き下げられ1高血圧患者の高圧目標は130/80未満となっている。
使用は非薬物療法(生活習慣等の見直し)から始まる。
薬物を使用する場合はまず単剤(以下に示すCa拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系子利尿薬のいずれかから使用を開始する。効果がない場合、2剤を併用する。2剤併用でも効果が認められない場合3剤を併用する。
効果的な降圧治療は脳卒中発症率:35%~40%、心筋梗塞:20~25%、心不全:50%以上低下させる。
分類と作用機序
降圧薬といっても色々な作用を持つものがある 。作用機序によっては心臓に作用するものなどがあるので適応として心疾患を持つものがあったり体内の循環血液量を体外に排出させることで血圧を低下させるために浮腫(肝疾患によるもの腎疾患によるもの)に適応を持つものなども含まれる。
以下に示すものは全て降圧薬として血圧を下げる適応を持つものである。
1、循環血液の絶対量を減らす事によって血圧を下げる薬剤
利尿薬(サイアザイド系、ループ、K保持性*K保持性はサイアザイドやループによるアルドステロン性の低K血症を防ぐために投与されることが多い)
サイアザイド系降圧薬
利尿作用を持ち体外への水分排出によって循環血液量を下げ血圧を下げる 作用する場所は腎臓における遠位尿細管であり、そこでNa+イオンの体液側への再吸収を抑制する Na+イオンは水分と共に再吸収されるのでNa+イオンを抑制する事は結果として体液側へ再吸収される水分量の減少に繋がる 体液側への水分の再吸収量が減少する事は体内循環血液量の低下につながり最終的に血圧を低下させることができる。
サイアザイド系類似薬(非サイアザイド系)利尿薬
ループ利尿薬
サイアザイド系利尿薬と同じく体内循環血液量の低下によって血圧の低下を起こすが、その作用部位が異なる ループ系利尿薬は腎臓におけるヘンレのループ係蹄上行脚においてCl-イオンの再吸収を抑制する事によって水分の体液側への再吸収を抑制する。
K保持性利尿薬
抗アルドステロン性の利尿薬とも言われる。 サイアザイド系やループ利尿薬の使用はNa+イオンの体液側への再吸収を抑制するが、結果としてその後に通過するアルドステロンにおいて再吸収されなかったNa+イオンの一部は吸収される。同時にアルドステロンの作用によってK+の排出が起きる。 そのため低K+血症が起きる可能性があり、それを抑えるためにアルドステロンに拮抗しK+イオンの排出を抑える。 またアルドステロンに拮抗する事での利尿作用も持つ。
2、心臓の拍動力、拍動数を下げる事によって体内循環する血液に対する負荷を低減し、その結果血圧を下げる薬剤。
β-遮断薬(β-blocker、以下の分類でのISAとは何か刺激が生じたときにその反対の作用を表す事である。ホメオスタシスの様な概念で捉えると理解しやすい)。
3、筋収縮を抑制し血圧上昇を抑える薬剤
α-1blocker
血管収縮作用を持つα-1受容体を遮断する。
Ca拮抗薬
Ca拮抗薬血管平滑筋内のCaイオンチャネルをブロックしその収縮を抑制し血管が収縮しなくなった結果、血圧を下げる。(汎用性が高い)
AT2拮抗薬:ARB (angiotensin receptor blocker)
血管収縮作用を持つAT受容体へ結合し血管を収縮させる。(汎用性が高い)
ACE(angiotensin converting enzyme)阻害薬
アンギオテンシンという物質が体内において作られる過程においてそのカスケードにおける酵素:ACE(angiotensin converting enzyme)を阻害すし結果として生成されたアンギオテンシンⅡの受容体への結合をブロックする。
αβ遮断薬
血管平滑筋には自律神経系のα受容体が分布しており、α1受容体は血管収縮、α2受容体は血管拡張に働く。 そのためα1受容体をブロックする薬剤は血管拡張性をもつ。
薬剤成分名、商品名
ヒドロクロロチアジド:ヒドロクロロチアジド「トーワ」
トリクロルメチアジド:フルイトラン
ベンチルヒドロクロロチアジド:ベハイド
サイアザイド系類似薬(非サイアザイド系)利尿薬 メチクラン:アレステン
インダパミド:ナトリックス、テナキシル
トリパミド :ノルモナール メフルシド :バイカロン
利尿剤(その他)
トリアムテレン:トリテレン
β遮断薬(β1選択制ISA(-)) 心臓に分布する交感神経系のβ受容体は心収縮力を高める作用を持つ。
結果、循環血に対する負荷は増大し血圧は上昇する。
この心収縮を弱めるためにβ受容体を弱める働きを持つのがβ遮断薬である。
ISA作用を持つものは心臓の状態に合わせて作用を発現するものであり恒常性的な作用を持つ薬物である。
アテノロール:テノーミン
ビソプロロールフマル酸塩 :メインテート 、ビソノテープ
ベタキソール酸塩酸塩:ケルロング
メトプロロール酒石酸塩 :ロプレソール、セロケン
β遮断薬(β1選択制ISA(+))
アセブトロール塩酸塩 :アセタノール
セリプロロール塩酸塩:セレクトール
β遮断薬(β1非選択制ISA(-))
ニプラジロール :ハイパジール
プロプラノロール塩酸塩 :インデラル
ナドロール :ナディック
β遮断薬(β1非選択制ISA(+))
カルテオロール塩酸塩:ミケラン、ミケランLA
ピンドロール :カルビスケン
αβ遮断薬
血管平滑筋には自律神経系のα受容体が分布しており、α1受容体は血管収縮、α2受容体は血管拡張に働く。
そのためα1受容体をブロックする薬剤は血管拡張性をもつ。
アモスラロール塩酸塩:ローガン
アロチノロール塩酸塩 :アロチノロール塩酸塩DSP
カルベジロール :アーチスト
ラベタロール塩酸塩 :トランデート
ベバントロール塩酸塩 :カルバン
α遮断薬
ウラピジル :エブランチル
テラゾシン塩酸塩水和物:ハイトラシン、バソメット
ドキサゾシンメシル酸塩 :カルデナリン 、ドキサゾシン「VTRS」
ブナゾシン塩酸塩 :デタントール、デタントールR
フェントラミンメシル酸塩 :レギチーン
中枢性交感神経抑制薬
α受容体遮断薬での作用点は末梢の血管平滑筋であるのに対し、以下の薬剤は中枢(脳)で作用する事によって降圧効果を発現する。
中枢においてもα2受容体は降圧の側に働くのでその刺激薬は降圧効果を持つ。
通常汎用される事はあまりないが、他の降圧薬でコントロール不良の場合用いられる。
クロニジン塩酸塩 :カタプレス
グアナベンズ酢酸塩 :ワイデンス
メチルドパ水和物 :アルドメット
Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)
血管が収縮する際に細胞内にNa+イオンが流入し、活動電位が発生、筋小胞体内からのCa2+イオンによって血管が収縮する。
その血管収縮におけるCa2+イオンの働きをブロックするのが、Ca拮抗薬と呼ばれるものである。
血管収縮を阻害すれば結果として血圧が下がることになる。
アムロジピンベシル酸塩 :ノルバスク、アムロジンピン
エポニジピン塩酸塩エタノール付加物:ランデル
シルニジピン:アテレック
ニカルジピン塩酸塩:ペルジピン
ニトレンジピン :バイロテンシン
ニフェジピン :セパミット、ニフェジピン
ニフェジピン除法剤:アダラートL、セパミット-R、アダラートCR
ニルバジピン:ニバジール
バルニジピン塩酸塩 :ヒポカ
フェロジピン :ムノバール、スプレンジール
ベニジピン塩酸塩 :コニール
マニジピン塩酸塩:カルスロット
アゼルニジピン:カルブロック
アムロジピン・スタチン配合剤 アムロジピンベシル醆塩・アトルバスタチンカルシウム水和物:カデュエット
Ca拮抗薬(ベンゾチアゼピン系)
ジルチアゼム塩酸塩 :ヘルベッサー
血管拡張薬
ヒドララジン塩酸塩 :アプレゾリン
ACE阻害薬
アンギオテンシンの変換酵素を阻害する。
アンギオテンシンはアンギオテンシノーゲンがアンギオテンシンⅠとなりその物質にアンギオテンシン変換酵素が働く事でアンギオテンシンⅡが生成される。
アンギオテンシンⅡはATⅠ受容体に結合し血管を収縮させる。
そのためACE阻害薬はアンギオテンシンⅡ生成過程におけるアンギオテンシン変換酵素を阻害し血管の収縮を防ぎ結果として血圧を下げる。
カプトプリル :カプトリル
エナラプリルマレイン酸塩:レニベース
アラセプリル :セタプリル
デラプリル塩酸塩:アデカット
リシノプリル水和物:ロンゲス、ゼストリル
ベナゼプリル塩酸塩 :チバセン
イミダプリル塩酸塩 :タナトリル
テモカプリル塩酸塩:エースコール
トランドラプリル :オドリック
ペリンドプリルエルブミン:コバシル
ATⅡ受容体拮抗薬 ACE阻害薬で述べた様にアンギオテンシンのカスケードで最終的に血管拡張に結び付くアンギオテンシンⅡ、ATⅡという物質が生成され、受容体としてのAT1受容体、AT2受容体に結合する。
AT1受容体は血管平滑筋収縮やK保持性利尿薬で述べたアルドステロン分泌作用を持ち血圧を上昇させる働きを持つ。
一方、AT2受容体は反対の作用を持ち血管平滑筋弛緩作用などを持つ。
ATⅡ拮抗薬(ARB)はATⅡのAT1受容体への結合をブロックする事によって血圧を下げる。
ロサルタンカリウム:ニューロタン
カンデサルタンシレキセチル:ブロプレス
バルサルタン :ディオバン
テルミサルタン:ミカルディス
オルメサルタンメドキソミル:オルメテック
イルベルサルタン :イルベタ
アジルサルタン:アバプロ 配合剤の商品名、後発薬商品名
ARB・利尿薬配合剤 ロサルタンカリウム・ヒドロロクロロチアジド:プレミネント 、ロサルヒド バルサルタン・ヒドロクロロチアジド配合 :コディオ、バルヒディオ
カンデサルタンレキセチル・ヒドロクロロチジド配合 :エカード、カデチア
テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド配合 :ミコンビ、テルチア
イルベサルタン・トリクロルメチアジド配合 :イルトラ
ARB・Ca拮抗薬配合剤 バルサルタン・アムロジンベシル醆塩配合 :エックスフォージ、アムバロ
オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン配合:レザルタス
カンデサルタン シレキセチル・アムロジピンベシル醆塩配合:ユニシア、カムシア
テルミサルタン・アムロジピンベシル醆塩配合 :ミカムロ、テラムロ
イルベサルタン・アムロジピンベシル酸塩配合 :アイミクス、イルアミクス
バルサルタン・シニルジピン配合 :アテディオ
アジルサルタン・アムロジピンベシル酸塩配合 :ザクラス、ジルムロ
ARB・Ca拮抗薬・利尿剤 配合剤
テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩・ヒドロクロロチアジド配合 :ミカトリオ
MR拮抗薬
スピロノラクトン:アルダクトンA
エプレレノン:セララ
エサキセレノン:ミネプロ
レニン阻害薬
アリスキレンフマル醆塩 :ラジレス
硝酸薬 ニトプロシルシドナトリウム:ニトプロ