男性ホルモン剤
病態
性腺機能低下症の治療、血中のテストステロンやゴナドトロピンの分泌不全による男性化徴候の欠如、性機能不全に代表される疾患である。原因が間脳下垂体であれば、LH、FSHが低い値となり精巣に原因があればLH、FSHが高値となる。使用薬におけるfirst choiseはそれらの原因に大きく左右される。
薬剤
テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドステロン(DHEA)、アンドステロン、アンドロステンジオンなど。これらは主として精巣の間質細胞から分泌されるがその中でも、テストステロンの人体への影響は最も強い 。男性ホルモンの主作用は胎児期の男性生殖器の発達、思春期の二次性徴の発現、男性性器の発達、性欲、性衝動の更新、体毛の増加、筋肉量の増加である。
薬物治療
これら男性ホルモンはその主作用以外を利用して、性腺機能不全症や更年期障害、男性不妊に用いられている 。その他、再生不良性貧血(造血薬の項参照)骨髄線維症に用いる 。また女性ホルモン中の卵胞ホルモンであるエストロゲン拮抗作用を期待し、女性性器癌の疼痛緩和や乳癌(手術適応不良例)月経困難、機能性出血性乳腺症、閉経後のホルモン療法の治療に女性ホルモンと併用して用いられることもある 。
高ゴナドトロピン症にはテストステロンデポ剤を注射する 。経口薬は肝障害を起こすことがあるので投与経路としては、注射によって直接血中に送り込む方法が一番良いとされている 。
アンドロゲンは経口投与後消化器をたどり肝臓に達した時点で不活化されてその効力を失うので治療効果は期待できないので避ける。
低ゴナドトロピン性性機能障害は二次性徴の発現・成熟、成人身長の正常化に影響を与えるがこれらはテストステロン療法の対象疾患となる 。また妊孕性の獲得においてはLH-RH間欠皮下注療法の対象となり、hCG-hMG/FSH療法が適応となる。
男性更年期の治療にも使用されるが 男性更年期は加齢による男性ホルモンの低下がもたらす性欲低下、EDなどに加え睡眠障害、気力低下、発汗、ほてり、動機といった様々な症状を呈する。 更年期障害治療における男性ホルモン剤としてはエナルモンデポーの筋肉内注射を用いる 。
蛋白同化ステロイド
皮膚、筋肉、骨、結合組織、造血組織に働いて蛋白同化作用を示すEPO酸性促進、造血幹細胞の刺激によるRBC増大産生作用も持つ。
上述した男性ホルモンの蛋白同化作用を強め、蛋白異化作用を低減させたものである。
薬剤
男性ホルモン
テストステロンエナント酸エステル:エナルモン・デポー、テスチノン・デポー
蛋白同化ステロイド
メテノロン酢酸エステル:プリモボラン
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)
プロチレリン:TRH「ニプロ」
プロチレリン酒石酸塩水和物:ヒルトニン
TRH誘導体
タルチシリン水和物:セレジスト
視床下部向下垂体ホルモン
ゴナドレリン酢酸塩:LH-RH「ニプロ」、ヒポクライン
コルチコレリン:ヒトCRH「ニプロ」
プラルモレリン塩酸塩:GHRP科研100
オクトレオチド塩酸塩:サンドスタチン、オクトレオチド酢酸塩「サンド」、サンドスタチンLAR
ランレオチド酢酸塩:ソマチュリン
パシレオチドモ酸塩:シグニフォーLAR
下垂体後葉ホルモン
バソプレシン:ビトレシン
デスモプレシン酢酸塩水和物:デスモプレシン、ミニリンメルト
オキシトシン:アニトン-O
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
テトラコサクチド酢酸塩:コートロシン
甲状腺ホルモン(TSH)
ヒトチロトロピンアルファ:タイロゲン
成長ホルモン(GH)
ソマトロピン:ジェノトロピン、ノルディトロピン、ヒューマトロープ、グロウジェクト
ソマプシタン:ソグルーヤ
ソムアトロピン:エヌジェンラ
成長ホルモン受容体拮抗薬
ペグビソマント:ソマバート
性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)
ヒト繊毛性性腺刺激ホルモン(HCG):HCGモチダ、ゴナドトロピン
ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン(HMG):HMG
精製下垂体性性腺刺激ホルモン
αFSH「あすか」
ホリトロピンアルファ:ゴナールエフ
ホリトロピンデルタ:レコベル
コリオゴナドトロピンアルファ:オビドレル
グルカゴン
グルカゴン:グルカゴンGノボ。グルカゴン「H、S」、バクスミー
副腎皮質ホルモン合成阻害薬
メチラポン:メトピロン
トリロスタン:デソパン
ミトタン:オペプリム
オシロドロスタットリン酸塩:イスツリサ