免疫疾患治療薬(リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬など)
免疫疾患治療薬の代表的な適応症としては以下のものがある。
関節リウマチ(RA)
関節リウマチは免疫の異常により関節に炎症が起こり、関節の痛みや腫れなが起こる状態。
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデスとは本来、外敵から身を守る免疫システムが自分を攻撃し発熱、全身倦怠感、炎症、関節、皮膚、そして腎臓、肺、中枢神経などの内臓のさまざまな症状が起こっている状態。
腎疾患であるネフローゼ
ネフローゼは腎臓の糸球体の成分に対して抗体ができ、ふるいが壊れ尿に蛋白が漏れ出る状態。
原因は不明だが、免疫異常が示唆されている。
腸疾患である潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、本来外敵から身を守る免疫システムが自分の大腸を異常に攻撃している状態。
クローン病
消化管の粘膜に慢性の炎症や潰瘍を引き起こす炎症性腸疾患。
自分に対して免疫反応が起こり、過剰な炎症が続いてしまう事で生じる。
・肝疾患である慢性活動性肝炎
・乾癬
乾癬とは 皮膚が赤くなって盛り上がり、魚のうろこ、あるいは雲母状になった銀色っぽいふけの様な皮が、厚ぼったく付着したりぼろぼろ剥がれ落ちたりする病気。
乾癬は、免疫機能に関わるサイトカインと呼ばれるタンパク質が過剰に増えて、皮膚の表皮細胞が異常な増殖や分裂を起こすことで発症。
その他、血管炎症症候群・腎炎、多発性筋炎・皮膚筋炎、ベーチェット病や血液疾患である自己免疫性溶血性貧血(造血薬の項参照)、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、再生不良性貧血など、皮膚疾患としては乾癬、天疱瘡 神経疾患である重症筋無力症、多発性硬化症、その他ぶどう膜炎、交感性眼炎、肺線維症、そして臓器移植時の過剰な免疫反応がある。
治療は基本的に副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド:GC)に加えて免疫調節薬、免疫抑制薬、生物学的製剤が用いられる。
免疫調節薬は免疫バランスを改善するが直接的に抑制する効果はない。
基本的に免疫系の過度な賦活化による疾患を対象とする 。
免疫抑制薬は主にリンパ球の増殖、分化を抑制する。https://www.macrophi.co.jp/special/1990/参照
リンパ球の種類
リンパ球とは白血球の一種。
白血球には顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、リンパ球がある。
リンパ球は・B細胞(Bリンパ球)・T細胞(Tリンパ球)・ナチュラルキラー(NK)細胞に分類される。
免疫抑制薬の働きはプリン、ピリミジン、葉酸代謝に対する代謝拮抗薬、そしてアルキル化薬に分類される。
・プリン代謝拮抗薬:細胞増殖に必要なDNAの成分にプリン塩基と呼ばれる物質がある。プリン代謝に拮抗しDNA合成を阻害する。
・ピリミジン代謝拮抗薬:細胞増殖に必要なDNAの成分にピリミジン塩基と呼ばれる物質がある。DNAまたはRNA合成を阻害する。
・葉酸代謝拮抗薬:DNAの複製が必要で、それには葉酸が代謝されてできる物質が必要となる。葉酸の代謝を阻害することで、核酸(DNAとRNA)合成を抑え、DNAの合成を抑える。
結果、核酸(DNA、RNA)合成阻害によりリンパ球(B細胞(Bリンパ球)・T細胞(Tリンパ球)・ナチュラルキラー(NK)細胞)の増殖、分化が抑制される。
副作用として骨髄抑制作用を有する。
骨髄が影響を受けると血液細胞をつくる機能が低下する。
血液細胞の中で白血球が減少すると感染症が起こり易くなる。
赤血球が減少すると貧血が起こり易くなる。
血小板が減少すると出血などが起こり易くなる。
・生物学的製剤は特定の標的分子に対して高い特異性を持つ。免疫細胞のシグナルを阻害し免疫抑制効果を発揮する。
標的はサイトカイン及びリンパ球である。
抗サイトカインは、IL-1/13、IL-5、IL-6、IL-17、IL-23、IL-12/23、IL-36などを阻害。
IL(インターロイキン)とは、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞が産生する生理活性物質で、免疫反応に関連する細胞間相互作用を媒介するタンパク質の総称。
免疫系の過活動によって引き起こされる疾患は多様である。
副作用
免疫調節薬以外で起こり易い。
・一般細菌感染
・結核 ・ニューモチフス肺炎
(持病や治療のために免疫機能が低下している人で発症する。 ニューモシスチス肺炎の病原菌であるニューモシスチス・イロベチイは、人ではありふれた菌、健康な人に感染しても発症しない)
・帯状疱疹
・サイトメガロウイルス感染
(サイトメガロウイルスが肺に感染して炎症を引き起こす呼吸器疾患。特に免疫力が低下している人に発症しやい)
妊婦への投与
免疫疾患治療薬の多くが妊婦へ投与禁忌となっている。
多くの免疫疾患治療薬は、長期使用が必要で自己判断での用量調節や中止は望ましくない。
メトトレキサート製剤は、休薬期間、過量服用回避が重要である。
カルシニューリン阻害薬(免疫抑制薬)は他剤との相互作用が多い。他院を受診している場合、その旨を伝える事が重要。
生物学的製剤、免疫抑制薬服用中は生ワクチン接種は行わないようにする。
治療薬の成分名と商品名
免疫調節薬
金チオリンゴ酸ナトリウム:シオゾール
ペニシラミン:メタルカプターゼ
ブシラミン:リマチル
アクタリット:オークル、モーバー
サラゾスルファピリジン:アザルフィジンEN
サラゾピリン:サラゾピリン
メサラジン5-ASA:ペンタサ、メサラジン
メサラジン5-ASA:アサコール
メサラジン腸溶錠:リアルダ
イグラモチド:ケアラム、イグラモチド「あゆみ」
ヒドロキシクロロキン硫酸塩:プラケニル
エトレチナート:チガソン
アプレニラスト:オテズラ
免疫抑制薬
(プリン代謝拮抗薬)
アザチオプリン:イムラン、アザニン
ミゾリビン:ブレディニン
ミコフェノール酸モフェチル:セルセプト
(葉酸代謝拮抗薬)
メトトレキサート:リウマトレクス、メトトレキサートメトジェクト
(ピリミジン合成阻害)
レフルノミド:アラバ
(アルキル化薬)
シクロホスファミド水和物:エンドキサン
(リンパ球増殖抑制薬)
グスペリズム塩酸塩:スパニジン
(細胞増殖シグナル阻害薬)
エベロリムス:サーティカン
(カルシニューリン阻害薬)
シクロスポリン:サンディミュン、ネオーラル、シクロスポリン「サンド」、シクロスポリン
タクロリムス水和物:プログラフ、タクロリムス、グラセプター
(JAK阻害薬)
トファシチニブクエン酸塩:ゼルヤンツ
バリシチニブ:オルミエント
ペフィチニブ臭化水素酸塩:スマイラフ
ウパタシチニブ水和物:リンヴォック
フィルゴチニブマレイン酸塩:ジセレカ
デュークラバシチニブ:ソーティクツ
(補体C5a受容体阻害薬)
アバコパン:タブネオス
(α4インテグリン阻害薬)
カロテグラストメチル:カログラ
(Syk阻害薬)
ホスタマチニブナトリウム水和物:タバリス
生物学的製剤(TNFα阻害薬) *内服薬で治療効果がみられない場合の中等度~重症に用いられる
インフリキシマブ:レミケード
エタネルセプト:エンブレル
アダリムマブ:ヒュミラ
ゴリムマブ:シンボニー
セルトリマブペゴル:シムジア
オゾラリズマブ:ナノゾラ
(IL-6阻害薬)
サリムマブ:ケブサラ
(IL-1阻害薬)
カナキヌマブ:イラリス
(T細胞共制刺激調節薬)
アバタセプト:オレンシア
(IL-2阻害薬)
バリキシマブ:シムレクト
生物学的製剤
(B細胞標的薬)
ベリムマブ:ベンリスタ
(α4β2インテグリン阻害薬)
ベドリズマブ:エンタイビオ
(ILー12/23阻害薬)
ウステキヌマブ:ステラーラ
(IL-7阻害薬)
セクキヌマブ:コセンティクス
イキセキズマブ:トルツ
ビメキズマブ:ビンゼレックス
ブロダルマブ:ルミセフ
(ILー23阻害薬)
グセルクマブ:トレムフィア
リサンキズマブ:スキリージ
チルドラキズマブ:イルミア
ミリキズマブ:オンボー
(ILー36阻害薬)
スペソリマブ:スペリゴ
(Ⅰ型インターフェロン阻害薬)
アニフロルネブマブ:サフネロー
炎症性腸疾患(IBD)治療薬(ステロイド )
ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム:ステロネマ
プレドニゾロンリン酸エステルナトリウム:プレドネマ
ブデゾニド:ゼンタコート、レクタブル、コレチメント
再生医療等製品(脂肪組織由来幹細胞)
ダバドストロセル:アロフィセル