「全裸で出直せ!」(村西とおる監督)
雲一つない快晴のこの日、前日の雨の影響で多摩川緑地は12時までグランド不良で中止となったが、大田区は10時前に、正午からの今日の試合は予定通りグランド使用可と決定、ほっと胸をなでおろし六郷土手の登り坂を上がると目の前に広がる青空と多摩川河川敷の20面はある野球場の緑が美しい。正午ちょうどからの今日のゲームは助っ人松永くんを含めて10人、うち最年長還暦到達組は翌日還暦仲間入りの櫻町を入れて4人だ。ホームに向けて強風が吹く厳しいコンディションを心配する4人を尻目に、これを補完してあまりある三冠王爆進中の石井大和、ホームラン王を狙う伊藤はいつも通りの雰囲気。ストロングボディ田辺、手術後のリハビリで驚異的な復活中の石井、石井と同い年の鉄腕ライアン小川に助っ人松永を加えた10人で今シーズンの勝ち越しをかけて強豪ハーデスとプレーボール。
ビッグアプセットは1回表、ワンアウトから石井がライト線に流し打ちのヒットで出るが、2盗を試みるも相手強肩キャッチャーに阻まれタッチアウト。3回まで3人で打ち取られチャンスをつかめない。
一方石井は1回裏の立ち上がり、いきなり先頭1番に右中間スリーベース、2番にセンター前タイムリーと連続ヒットで1失点。しかし3番のファーストゴロを櫻町がガッチリキャッチ、4番のショート後方に高く上がったフライ、風に流され難しい打球だったがこれをショート西村が地面すれすれでランニングキャッチのナイスプレー!5番もサードゴロに打ち取り松永が笑顔で軽快に処理、後続を断つ。
しかし2回裏、石井は先頭6番を四球、7番はサードゴロに打ち取ったがサード松永がショートバウンド送球、櫻町のミットから惜しくもボールがこぼれ、さらに8番はファースト、セカンド、ライトの間のポテンヒットでノーアウト満塁のピンチ。ライト橋爪が石井の1球1球に「ナイスボール!」とよく通る大きな声援を送って盛り上げる。ここで9番の当たりはそのライト橋爪にライナー性の厳しい打球、これを橋爪が前進ダッシュして見事地面すれすれのナイスキャッチ!先週7年振り復活、その後飯田橋のベースマンでグラブのヒモを直し気合い十分の橋爪がここ一番の全力プレーを見せると、石井は10番を三振!しかし1、2、3番に3連打などで4点。4番はファースト後ろの風に流される難しい打球だったが、これをセカンド田辺が全速力ダッシュでランニングキャッチのナイスプレー!田辺もアラ還とは思えない広い守備範囲、守備陣も必死に盛り上げる。
3回裏の守りは四球とヒットで出たノーアウト1、2塁のピンチで、風に流されてショート後方に落ちようかというフライをセンター石井大和が猛ダッシュでランニングキャッチ!さらにこの日キャッチャーに入った伊藤がキャッチャー前のゴロを2塁に137キロレーザービームで2塁フォースアウト!続く9番はピッチャーゴロに打ち取り、この回無失点のナイスピッチング。
4回裏、石井は先頭10番をピッチャーゴロでワンアウト。しかし続く1番にヒットを許し、2番にはサード横の強い打球にサード松永がダイビングし足をつってしまう。この回3本のヒットで1点を失うも、5番の強烈なショートゴロをショート西村が難なくキャッチしセカンド田辺に送球しフォースアウトでチェンジ。「偶然グラブに入ったんじゃない?」とイジられると西村は「いやいやいつも通り!」と笑顔で返す。
5回裏、この回から足のつった松永をファーストへ、櫻町がセカンド、田辺がサードに守備変更。石井は先頭6番をサードゴロ、これを代わったばかりのサード田辺が軽快にさばいてファースト松永にノーバウンドの好送球でアウト!7番にはセンター前に運ばれるも、8番のセカンドゴロはセカンド櫻町が還暦前日にしてユーティリティープレーヤーに変身、ガッチリキャッチし向き直ってファーストにストライク送球でツーアウト!最後は2塁走者が飛び出して挟殺プレー、無失点でチェンジ。
6回裏、石井は先頭9番、10番を連続のショートゴロ、これをショート西村が基本通りに軽快にさばいてツーアウト。この日肩痛が治らずDHでベンチからナインにカツを入れていた村上も「西村のショートは最高だ!」とオヤブンのお墨付きだ。1番はセカンドゴロ、これをセカンド櫻町が難なくキャッチ、三者凡退無失点でチェンジ。
一方ビッグアプセットは2回表、3回表と三者凡退、4回表はワンアウトから1番石井大和が強風をものともせずレフト前ヒットを放つが後続が倒れ無失点。5回表はワンアウトから5番松永が右中間に見事なヒットを放つが後続が続かず、6回表もツーアウトから10番村上が死球、1番石井大和が体を残して上手くレフト前ヒット!しかしこの回も無失点。
最終回7回表もビッグアプセットは3番西村がエラーで出塁したが後続が続かず、結局0―6で敗戦となった。
時間が余ったので行った7回裏はライアン小川がリリーフ登板、先頭2番はレフトフライに打ち取るも、この回レフトに入った櫻町が目測を誤り頭上を越されツーベースに。石井大和から「大河原さんのこと言えませんよ!」とゲキ。しかし3番四球でノーアウト1、2塁のピンチでギアを上げた小川は4番をファーストフライに打ち取りワンアウト。さらに5番をショートゴロ。これをショート西村が素早くセカンド田辺にトス、田辺からファースト松永に矢のような送球で6―4-3のダブルプレー!
8回裏は先頭6番にレフト前に運ばれるも、7番をセンターフライ、8番はセカンドゴロ。これをセカンド田辺がこんどはショート西村にトス、西村からの強肩送球がファースト松永のグラブに収まり4-6-3のダブルプレー!小川は7回8回を無失点に斬って取った。
この日、石井の球はストレートが伸び、全盛期を思わせるほぼ全快のナイスピッチングで自責点は2。守備陣もショート西村、セカンド田辺の二遊間コンビの2つのダブルプレー、田辺は久々のサードでも軽快に動き、西村も難しいフライや強烈なゴロをさばく胆力を見せた。また還暦仲間入りの櫻町はファーストだけでなく久々のセカンドでも堅実な守備力を発揮、ライト橋爪は復活直後ながら厳しいライナーを激走キャッチ、キャッチャー伊藤は夜勤明けの徹夜なのにレーザービームでセカンド封殺、石井は完全復活のナイスピッチング、リリーフ小川も2回を無失点の完璧リリーフ、DH村上もナインを鼓舞し自身は死球を呼び込む貢献、それでも強豪ハーデスに負けることはある。
「全裸監督」で世界を席巻した75歳の村西とおる監督は過去に「私は人生のピークは80歳と考えています」と話し、今は「92歳に人生の最高のハイライトが訪れる」と益々意気軒高だ。ありえないくらい波乱万丈な人生を生き抜き今も魂の叫びで社会問題に切り込むそのポジティブ思考からすれば、今日の敗戦も村西監督から「生きていれば、そのうち運が巡ってくることもある」と明るく言われそうだ。還暦の最年長組も人生のピークはまだまだこれから、もっと上手くなるに違いない。これで今シーズン35戦17勝17敗1分。シーズン序盤の2勝11敗からここまで盛り返してきた。あと残り2試合、有終の美を飾ろう、全裸で野球はできないが、ポジティブ思考で切り替えていこう、と六郷土手のいつもの名店中華「宴客」に力強く向かうビッグアプセットナインであった。
<監督コメント>