(1) 調剤室の特殊性
調剤室における業務は、内服薬・外用薬・注射剤等の調剤業務と製剤業務、それらの払い出し業務、及び問合せ・疑義照会(業務)に大別することができる。薬局では毎日、多くの種類の薬品が調剤される。従って、その数だけ以下に述べるようなインシデント発生の危険性がある。そして薬は、その保管においては、普通薬・劇薬・毒薬・麻薬・向精神薬の区別がされていても、実際に調剤あるいは服薬する際にはそれらの区別は無く、同じようなインシデント事例であっても薬品が違えば、時として非可逆的の重大なアクシデントとなる事を肝に命じておく必要がある。
調剤室側に起因する事例としては「薬の取り違え」、「調剤量の過剰・過少」、「異物混入」などが考えられる。一方、受付事務側(レセコン入力など)に起因する事例としては「薬品名の入力間違え」、「処方量の過剰・過少」、「用法指示間違え」。さらに、投薬窓口側に起因する事例として、「患者取り違え」、「禁忌疾患(者)への注意ミス」、「配合変化・相互作用」などが考えられる。これらは、いわゆる「うっかりミス」と言われている「確認ミス」が多いが、新規薬剤や受付事務側に起因する事例では、「薬剤に対する知識不足」なども考えられる。
「うっかりミス」は、受付事務側で発生した事例であっても調剤室(鑑査)で発見できる事も多々あるため、調剤室の業務は確認の上にも確認が必要になる。従って、調剤室の全ての業務は、一つの作業に2名が関わり、複数の目で確認をする事を原則とする。
また、不幸にして調剤室よりミス調剤が流出した場合、服用までに最終チェックができるのは患者自身である。日頃から、各患者に対して服用される薬についての正しい指導を心がける事がとても大切であると考える。
(2) インシデント防止対策
・ 納品・搬入
納品時
搬入時
・ 業者が薬品を指して、薬品名・規格・数量を提示するのを、職員は確認しながら、伝票と照合する
・ 棚に在庫の無い場合
・ 名札の表示と間違いないか確認して置く
・ 棚に在庫がある場合
・ 在庫品と同じである事を確認してから、使用期限の長いものを奥へ、短いものを手前へ置く
・保管・配置
毒薬
劇薬
向精神薬
麻薬
普通薬
・ 薬事法の規定に従う
・ 施錠の必要な薬品棚の鍵の保管場所は、薬剤師間で周知徹底し、記録はしない
・ 原則として50音順で配置するが、似た薬品名の場合は、順番が狂っても離して配置をする
・払い出し:患者ごとに、払い出し用のトレーに払い出す
内外用薬
注射薬
確認
・ 患者毎に一つの袋に入れるか、輪ゴムでひとくくりにする
・ 手技毎に一つの場所に置き、さらに患者毎に一つのトレーに入れる
・ アンプルは破損防止のため、台紙等を付ける
・ 処方ごと、薬品ごとに調剤した者が、確認して印を押す
・ 数量や計算等も出来るだけ記入し、記録として残す
・調剤:処方せんは、1枚ずつ(1患者ずつ)とり、まとめ調剤はしない
疑問点は必ず解決してから、次の調剤に移る
その薬の使用目的を、先ず考えてから調剤する
→用法・用量・相互作用のチェック
迅速な調剤ではなく、安全な調剤が一番の患者サービスと認識する
(手順の詳細は、調剤内規を参照)
・鑑査
調剤薬
鑑査
自己鑑査
袋づめ
・ 再チェックという認識ではなく、初めて確認をするという認識を持つ事が必要
・ 処方せんの薬品名を読んでから薬袋中の薬をチェックする
・ 疑問点は必ず解決
・ 極力避ける
・ 止む無く、自己鑑査を行う場合は、なるべく時間を空けて先入観を断ち切る作業をしてから鑑査を行う
・ 薬袋の患者氏名の記載も必ずチェック
・ 薬袋の大きさ、数量を処方せんの処方と確認
・ 処方せんの薬品名を読んでから薬袋に入れる
・ 最後にもう一度処方箋と照合する
・その他
麻薬
問い合わせ
使用済み注射針
・ 手順の詳細は薬局内麻薬取扱い業務マニュアル参照
・ 麻薬の調剤を行った時は必ず管理薬剤師に報告をする
・ 管理薬剤師は随時使用状況等を確認する
* 調剤室内での常識のままで他(病院や事務)に問い合わせをしない、他(病院や事務)からの返答を推測で受けない、ことに留意する
・ 用量の問い合せをする時、力価で確認する
・ 薬品名の問い合わせをする時、規格(薬効)も合わせて言う
・ 原則として、使用済み注射針の返却がある場合、手順どおりに感染廃棄物の容器(箱)に入れる
・ 階段等に過剰に保管されることのないように気をつける