武術太極拳という言葉の意味と伝統太極拳の武術性
武術太極拳という言葉の意味と伝統太極拳の武術性
投稿日: Mar 14, 2018 9:21:36 AM
武術太極拳という言葉があります。この言葉について、どうやら、現在一般的に考えられている意味と、私が持つ言葉のイメージでは、差異があるようです。
私が学んだ太極拳は、伝統的な太極拳です。
御茶や生花、剣術などには、昔から流派があります。
現代では、この流派などの伝統的な内容を継承して、伝統的に受け継ぎ学ぶ方法をとる人と、それとは関係なく、手軽に学ぶ事もできます。
また、剣術なども剣道としてスポーツ化しています。
これと同じように、太極拳にも昔ながらの伝統的な練習を、続けているものがあります。
私が学んだ太極拳は、このような伝統的な太極拳です。
このような太極拳を学んだ人間が持つ、武術太極拳という言葉の意味としては、日常練習している太極拳でしかありません。
現在一般的に言われている武術太極拳は、太極拳、長拳三種目総合、南拳の三種の内容を、総称して呼ぶ言葉のようです。
太極拳は、各派を統合して競技用に整理した制定拳を指し、長拳は少林拳、査拳、華拳の三派を言い、南拳は、洪家拳を元に作られているようです。
これは、伝統的な太極拳を練習してきた人間にとって、理解に苦しむ部分があります。
まず、太極拳流派の統合は、極めて難しいものだと思います。
昔の名人と呼ばれた人間や、それに近い能力を持つ者ならともかく、現代人に統合する能力を持つ者はいません。
それほど、昔の武術家と現代人には、能力の差があるのです。
そして、各派の太極拳を統合するという事は、違う流派の技術を融合させるという事です。
誤解している人が多いですが、陳式や呉式などの各派の太極拳は、太極拳という名前で呼ばれますが、まるで別ものだと言えます。
確かに、太極拳と呼ばれるだけあり、共通する部分はあります。
しかし、簡単に融合できる程の共通性はありません。
つまり、各太極拳流派は、別ものの独立した武術だと言えます。
これを融合させた太極拳など、伝統的な教習を受けてきた人間からは、考えられない事だと言えます。
また、長拳の少林拳、査拳、華拳の三派についても、同じような事が言えます。
それは、長拳、少林拳、査拳、華拳と、南拳の洪家拳は、太極拳とは全く関係のない、独立した武術流派だからです。
太極拳とそれぞれの武術流派は、ボクシングと柔道くらい違うものだと言えます。
伝統的に学んだ者が持つ、太極拳という言葉の意味としては、一つの太極拳という独立した流派をイメージします。
それに対して、一般的には、太極拳という言葉は、中国で練習している武術全般、あるいは、中国で練習している運動全般をイメージする言葉として認識されているのではないでしょうか。
そのため、中国で練習している運動の中で、戦闘のイメージが強い、蹴り技などの直線的な動作を多く持つものを、差別化するために武術太極拳と呼んでいるのではないでしょうか。
確かに、太極拳について深く知らない人間からすれば、違いが解らない部分があるかもしれません。
そのような人達に、手っ取り早く伝えるための言葉が、運動という意味としての太極拳という言葉に、武術という戦闘を意味する言葉を、くっつけるという方法だったのではないでしょうか。
問題なのは、実際に太極拳を学んでいる人間であっても、意味の理解と区別がついていないところですが。
本来、伝統的な太極拳流派において、太極拳の技術には、多くの内容が含まれています。
太極拳に含まれている内容や要求を、現代風の言葉で表すならば、次の通りとなります。
健康法、武術、医学、薬学、哲学、易学、軍学、宗教学、方位学などです。
元々、太極拳には武術性が含まれているため、太極拳と武術を区別する事はないと言えます。
また、武術というと、突いたり、蹴ったりといった、激しい動作をイメージしますが、太極拳の武術性は、そのような激しい動作だけを指す言葉ではありません。
当流で練習している太極拳は、武術の要素の強い太極拳ですが、激しい動作は殆ど行いません。
これは、太極拳の練習する内容を限定するなどの、多くの意味があります。
下記動画では、当流の太極拳の練習内容を、ご紹介しています。
動画では、推手と呼ばれる練習法の内容が多いですが、動画内以上の激しい動作は行いません。
というより、動画を見ていただければ解りますが、激しさは皆無だと言えます。
しかし、これも武術としての太極拳の練習なのです。