太極拳を、大きく2種類に分類するなら、「制定拳」と「伝統拳」に分ける事が出来るとおもいます。一般的に「制定拳」の「太極拳」は、中国大陸で近代に「中国体育」のために構成されたと言われています。そのため、万人が練習出来るように、難しい技や、危険な技を取り除き、簡略化した状態で構成されているようです。また、「表演武術」としても、表演競技などで、形や順番が審査し易いように構成されているようです。現在、練習されている「太極拳」の大多数は、この「制定拳」や、それに類するものだと言えます。
「伝統拳」とは、例外もありますが、競技化などをせず、伝統的に、昔の教習法のまま伝わってきた「太極拳」の事です。「伝統拳」と呼ばれる「太極拳」には、多くの種類があります。日本でも、「お茶」「生け花」「剣術」などに、「流派」があるように、伝統的な「太極拳」にも、「流派」があります。中国では、「門派」と称します。「太極拳」の場合「○○式」などと表現します。
「伝統拳」の「太極拳」で代表的な「門派」は、「陳式太極拳」「楊式太極拳」「武式太極拳」「呉式太極拳」「孫式太極拳」でしょうか。これらの「門派」を「五大門派」と称する場合があります。しかし、現代では、更に多くの「門派」が存在しているといえます。もちろん、上記の「五大門派」や「制定拳」の技術体系は、それぞれ、同じではありません。「似て非なるもの」と言えます。そのため、全ての「太極拳」をひとくくりにする事は出来ないという事だと思います。当流で練習している「太極拳」は、上記の「伝統拳」です。伝統的な「楊式太極拳」を練習しています。
また、「伝統太極拳」は、一般的には、激しい動作を行うイメージがありますが、これは一概には言えません。当教室で練習している伝統的な「楊式太極拳」は、他の「太極拳」に比べても、激しい動作が少なく、極めて柔軟で、リラックスした動きをします。多くの「太極拳」の門派(流派)の中でも、動作の柔軟性と無駄な力を抜く事(リラックス)に関しては、極めて高い練習法を行います。
「制定拳」の「太極拳」は、表演において、形を整える必要上、動作をきめる為に、やや力が入る傾向にあるようです。当教室の「太極拳」は、見た目の優美さを必要としません。当教室の「太極拳」は、身体の内部を運用し、「太極拳」の本来の技術と運用法を追及するのが目的です。
また、「太極拳」で重要な、無駄な力をぬくという事は、1人で「套路」(型)を繰り返しているだけでは、理解しずらい部分があります。その為、「推手」と呼ばれる、二人ペアになってする練習法によって、自分の動作と身体の運用法に、無駄な力が入ってないか、確認する作業が必要となります。
当教室で、「推手」の練習を重視するのはこの為です。「太極拳」の練習体系には、多くの方法がありますが、この違いは、目的にあります。「制定拳」は、比較的、表演に傾いているようです。また、日本国内での、多くの「太極拳」では、養生効果や健康促進を目的としています。当教室で練習している、伝統的な「楊式太極拳」は、養生効果や健康促進の意味もありますが、これは副産物に過ぎません。
当教室では、「太極拳」の本来の原理を、理解する事が目的だと言えます。ただ「套路」(型)を繰り返すだけではなく、その形の意味を学び、その練習法の意味を学び、「推手」やさまざまな技術との、共通項を模索し、「太極拳」の原理に近づく事が目的だと言えます。結果的に、前述の養生効果や健康促進効果、ダイエットやフィットネス、護身術などの効果も得る事ができます。