投稿日: Apr 08, 2020 3:55:27 AM
太極拳や推手に関係する用語を、下記に集めました。
「武術」
武術(wushu)は中国の伝統体育運動、戦闘術を示す言葉です。武術は「踼(蹴る)」「打(打つ)」「摔(投げ技)」「拿(掴む)」「撃(打つ)」「劈(切る)」「刺(刺す)」等の動作などを含んだ、一定の運動に照らして徒手や、器械(武器、兵器)の動作を組み立てて行う形態のことを言います。武術運動は、心身の鍛練、体質増強、自己防衛などが目的といえます。武術は長い発展の歴史を持ちますが、時代とともに違う呼び方もされてきました。春秋時代は「武芸」。戦国時代には「技撃」。漢代は「技巧」。明代は「技芸・技勇」。明国時代は「国術・国技」とも呼ばれていました。
「国術」
中国武術の別称。1927年3月に中央国術館が成立して国術と言う名前が正式に使われるようになったようです。
「技撃」
現在では実戦武術の事を指す言葉のようです。また「武術」の別称でもあります。技撃の言葉が最初に出てくるのは春秋戦国時代です。
「功夫」
武術のことを指す言葉。中国以外の国では、武術を称して「功夫」と呼びます。または、.学問などの技術に深く達していること。武術の技術レベルの到達の程度を表す場合もあります。また、.武術に費やされる時間、時間と精力などにも使われる言葉。
「南拳北腿」
南方に伝わる武術は、拳を多く使い、北方の武術は腿法を多く使うというような意味。
「拳法」
武術の総称、攻防格闘技術の「拳勢」「招法」の通称、一般的な徒手武芸を指し、主に、武術の中の素手の技術を示す言葉。
「拳術」
中国武術中の徒手技術(素手の技術)の総称。各門派(.長拳、太極拳、南拳、形意拳、八卦掌、通背(臂)拳、劈掛掌、八極拳、翻子拳、戳脚、蟷螂拳、象形拳等)などの各拳類、拳種、流派に属する套路、招式、散手、推手、対練、などを言う。
「対練、対打」
武術の練習形式のひとつ。俗称で「対打」と呼ばれます。二人(或いは二人以上)で、あらかじめ決めてある武術の攻防動作にあわせて、攻撃、または、防御で構成した套路(型)を仮想の実践としておこなう。対練には徒手対徒手、器械対器械、徒手対器械などがあります。また、推手もこれに含まれます。
「武術分類」
武術の内容に合わせての分類方法。主要の分類には「地区による分類」と「技術による分類」があります。一般的に採用されているものは、後者で明代には長拳、短打という分類がありました。近代では長兵、短兵、徒手。現代では拳術、器械、対練などがあります別の分類では套路、散打。功法という分類も有る。
「内家拳」
武術の分類法の一つで、中国国内に広く広まっている。内家とは外家に対して称される。内家の別名は「南宗」「武当派」とも呼ばれる。源自黄宗義作【王征南墓志銘】の中で「墓誌銘・いわゆる内家は、宋代の初め頃、張三峰が起こした」とあります。現代では、主に、太極拳、八卦掌、形意拳の三派を指す言葉として使われる事が多い。
「南派」
一般的に長江流域の南側の各地に伝わっている拳種、門派(流派)を南派と呼びます。
「北派」
一般的に長江流域の北側の各地に伝わっている拳種、門派(流派)を北派と呼ぶ。
「門派」
拳種と拳派の合わせた名称で、日本の武術で言う、流派の事。一般には拳理(門派独特の理論)、套路、器械、勁力の特徴など合わせ持ちます。いくつかの近い拳術を練習する者は同じ名称の門派を名乗る事があります。「少林派」「武当派」「南派」「北派」等。しかし、同じ名前の武術であるからと言って、同じ技術、戦闘理論とは限らない。
「外功」
武術や、気功の用語。主に、人体の外部の機能(骨格、筋肉、筋腱、皮膚など)を鍛練する事。
「機械」
古く兵器を広く指す言葉。兵器術全般をさす場合もあります。
「本門」
伝統の用語。自己の門派の武術の事。
「同門」
伝統の用語。同じ門派、あるいは、同じ老師(先生)に武術を学んだ者。
「訣」
簡単な言葉で言うならば、コツ・妙法・秘伝などが近い言葉かもしれません。武術には、「拳訣」「字訣」「口訣」「要訣」「歌訣」があります。字訣は、漢字一字で技術の内容を表したもの。口訣は通俗的で、比喩が多いもの。要訣は練り上げられた簡単な言葉で深い意味が含まれています。歌訣は韻を踏んだ表現があります。
「要訣」
大切な意味を含んだ重要な言葉。簡単な言葉で深い意味が含まれている事が多くあります。
「拳歌」
歌に拳芸の言葉を反映させたもの。発、重厚で、覚えやすい、「拳訣」と合わせて伝わっている。
「拳訣」
拳理を暗記しやすいように書き記した物。各拳種にそれぞれ拳訣があります。
「拳譜」
拳勢の名称と用法を記録したもの。
「口訣要術」
武術の神髄、要点を表した、簡潔な言葉。
「拳理」
武術、拳術の理論。
「技法」
技撃方法、各種の武術技術を指す言葉。
「打法」
一般的に攻撃と防御方法の名称を「打法」と称する。あるいは、武術の打撃技法の打ち方や、威力の出し方などをさす場合もある。
「靠」
身体に張り付けて打つ打法。解かりやす言葉で表すと、体当たり。肩、背、胯、臀で後ろまたは側面に向けてぶつかる技。八極拳、心意六合拳などで多用します。
「拿法」
擒拿とも呼ばれます。逆関節の原理と経絡学説で拿はその一つ。
「陰陽」
古代陰陽の観念は【周易】を源とします。陰陽という言葉を用いて、自然界の対立する両者のお互いの消長する物質、勢力を表します。
「両儀」
周易には、天地または陰陽を指します。是を武術の理論に応用し、太極拳や八卦掌でよく使われる言葉です。
「三才」
周易によれば、三才とは「天、地、人」の事と記述されています。これを転じて武術家は人体の「頭、手、足」とし、「上盤、中盤、下盤」の事をさします。
「四象」
周易の言葉。両義より生まれると言われています。四象とは、震木、離火、兑金、坎水を、それぞれ主とする。武術家はそれを引用し、武術の理論に応用させています。主に、八卦掌にて多用される言葉。
「五行」
五行とは水、火、木、金、土の五種類の物質を指す。武術家はそれを引用し、武術の理論に応用させています。主に、形意拳、八卦掌、太極拳、八極拳などで使われる言葉。
「八卦」
【周易】八卦には「陽爻」と「陰爻」の符号があり、この二つの符号を組み合わせて八種類の基本図形を作ります。「乾」「坤」「震」「巽」「坎」「離」「艮」「兌」です。古代の武術家が拳理の解釈によく用いました。主に八卦掌や太極拳で使われています。王宗岳の太極拳経・太極拳解の十三勢の内の八法の「棚、将、擠、按、採、例、肘、靠」は、この八卦に対応しています。
「太極図」
現在よく使われるものは、二匹の魚型の半円形を組み合わせた円形で、中は陰陽を表している図。これ以外にも、いくつか種類があります。
「剛柔」
伝統武術では「剛柔」を対立と統一の矛盾したものとして用います。「剛中寓柔、柔中寓剛」「剛柔相済」を重んじます。
「剛柔相済」
剛勁と柔勁を交互に用いることを称して「剛柔相済」と呼びます。
「虚実」
技に用いる力や意念の多少、開合など相互対立と統一の双方の意を持ちます。
「動静」
運動と静止の事。色々な意味で使われます。
「四正」
東、西、南、北の四つの方向。あるいは自身の前、後、左、右の四方向。太極拳の用語では棚、将、擠、按を四正手と呼びます。
「四隅」
東南、東北、西北、西南の四つの方向。あるいは自身の左前、左后、右前、右后の四方向。太極拳の用語では採、挒、肘、靠を四隅手と呼びます。
「八門五歩」
主に楊式太極拳や、その系統の言葉。太極拳の八門の勁と五種の歩法。八門の勁とは、棚、将、擠、按、採、挒、肘、靠。五種類の歩法とは前進、後退、右顧、左眄、中定を指す。
「八門」
人体の打撃に用いられる部位。頭、肩、肘、手、尾、胯、膝、脚。あるいは「八拳」「八体」とも呼びます。形意拳、八極拳などでよく使われる言葉。
「三盤」
武術において人体を上、中、下の三盤に分ける言葉。上盤は胸より上部、中盤は腰と股の間、下盤は両足を指す。
「拗歩」
順歩に対する反対語。手足が反対に前方に出た状態。右手と左足が前に、あるいは左手と右足が前に有る歩型を拗歩と呼びます。
「順歩」
拗歩に対する反対語。同じ方の手足が前方に出た状態。右手と右足が前に、あるいは左手と左足が前に有る歩型を拗歩と呼びます。
「套路」
武術の主要な形式。古くは「套子」あるいは「套」と呼ばれていました。空手などで言う、型の事。
「招法」
招法は、古くは「着法」または「行着」「行著」とも呼ばれていました。広義ではすべての打法はみな招法で、数多くの方法があります。
「大架」
姿勢の伸びやかさや、運動の幅度が大きい武術を指す言葉。あるいは、応用変化や、用法などを練習する套路などにも使う場合がある。
「小架」
姿勢の制御が小さく、運動の幅度が小さい武術の事を指す言葉。あるいは、武術の基本練習を行う套路などで、使う場合もある。八極小架など。
「絶招」
極めて高い技術を持つ招法。あるいは技。絶対破ることの出来ない招法をさす場合もあります。解りやすい言葉で表せば、必殺技などがイメージしやすいかもしれません。
「収勢」
武術套路の最後の姿勢。流派により収勢は異なります。収式とも言う。
「起勢」
武術套路の開始の姿勢。流派により起始はそれぞれ違います。起式ともいいます。
「出勢」
武術套路の起勢時の姿勢。本来は、極めて深い意味をもつ。
「功力」
或る専門の能力、または専門の技能の到達程度を指す言葉。または、技の威力の程度を指す場合もあります。
「徐紀」
徐紀は、中国上海生まれの武術家です。その後台湾に移住し、神槍とも呼ばれた、八極拳の名人として知られる、李書文の弟子であった、劉雲樵の高弟の一人となりました。また陳式太極拳の名人と呼ばれる杜毓沢から古伝の太極拳も受け継ぎました。それ以外に、形意拳・八卦掌・蟷螂拳・劈掛掌・迷縱拳・査拳なども学びました。後に、「台湾武壇国術推広中心」の総教練も勤めました。1978年からはアメリカに移り住み、止戈武塾を開設しました。現在は台湾台北市にて、武術の指導をしています。
「松田隆智」
松田 隆智は、愛知県岡崎市出身の中国武術研究家です。台湾武壇(武壇国術推広中心)の蘇昱彰の正式弟子(拝師)になり、後に、中国本土で通備門の馬賢達に拝師しました。自伝でもある、『謎の拳法を求めて』などの著作が有名です。中国武術漫画『拳児』の原作もつとめ、大ヒットしました。また、合気や発勁などの古来秘伝であった技を、わかりやすく伝えました。かれが学んだ武術は、以下の通りだと言われています。剛柔流空手、極真会館の大山道場、示現流剣術、新陰流剣術、大東流合気柔術、八光流柔術、浅山一伝流坂井派、陳家太極拳、蟷螂拳、八極拳など。また、メディアにも多く露出し、「ひらけ!ポンキッキ」で「カンフーレディー」という曲の映像に出演をしました。当時、陳家太極拳、忽雷架、螳螂拳の套路・
力劈拳、崩歩拳などを映像公開しました。武田鉄矢が主演した映画「刑事物語」シリーズにおいても、演技指導を行いました。漫画では、『男組』や、前述した、『拳児』を原作しました。
「太極拳」taijiquan
武術拳種の一つ。太極拳の起源は多くの説が有り一つではありません。一つの説は唐代に、武当山の道志張三豊が作ったとされます。しかし、現在では、太極拳は明代末から清代初めの河南温県陳家講の陳王廷(陳式太極拳老架式の創始者)が作ったと言う説が有力だと考えられています。太極拳は、発展の過程で、陳式、楊式、呉式、武式、孫式の五代流派が徐々に形作られていきました。各派それぞれ特色と風格が違いますが、基礎となる技術構成規範は大同小異ともいえます。中華人民共和国建国以来、国家体育委員会が、体質増強に有効な手段として、広範な大衆、特に中老年の比較的体質の弱い人たちにもできるとして、押し進めました。
「長拳」
伝統武術の門派の一つ。伝わるところでは宋の太祖趙匡胤が伝えたとされます。それ故に別名「太祖拳」とも呼ばれます。伸びやかで、動作が活発、スピードと力があり、リズムがハッキリしている武術です。定式姿勢が多いのが特徴です。中華人棍共和国成立後、査拳、花拳、炮拳、紅拳などから、基本動作を選び出し、それを規格化して編集し、新に現代長拳を作り出しました。現代長拳の動作は伸びやかで、関節の動作の活動範囲が大きく、青少年が練習するのにふさわしいと言われています。
「孫式太極拳」
太極拳五大流派(陳式・楊式・呉式・孫式・武式)の一つ。孫禄堂が創始しました。孫禄堂は、形意拳、八卦掌、太極拳を合わせて孫式太極拳を造ったと言われています。
「楊式太極拳」
太極拳五大流派(陳式・楊式・呉式・孫式・武式)の一つ。河北永年県の楊露禅が創始しました。後に、孫の楊澄甫が編纂し現在の楊式大架子太極拳ができました。楊澄甫が、南京、上海、杭州、広州、武漢などの地で指導を行い、大都市で楊式太極拳が広まりました。
「陳式太極拳」
太極拳五大流派(陳式・楊式・呉式・孫式・武式)の一つ。陳式太極拳は三つに分類されます。老架(陳氏老架太極拳)、新架(陳氏新架太極拳)趙堡架(忽雷架)などです。
「陳式老架太極拳」
太極拳の一種。明代に河南温県にて陳王廷が創始しました。現在に伝わる物は一路(十三勢)、二路(炮捶)です。架式が広く、低く沈め、運行は螺旋纏绕、剛柔相済、勁力綿綿、剛快発勁、震脚などの動作があります。
「陳式新架太極拳」
太極拳の一種。陳有本が創始したといわれています。
「武式太極拳」
太極拳五大流派(陳式・楊式・呉式・孫式・武式)の一つ。清末時代、武禹襄が陳式老架太極拳と陳式新架太極拳をもとにして作られたと言われています。
「鄭曼青」
鄭曼青は、楊式太極拳の名人、楊澄甫の弟子です。台湾では、五絶老人とも呼ばれ、詩、画、書、医、武に優れていました。簡易37式太極拳を創始しました。後に、ニューヨークに移住し、太極拳を教授していたことから主に欧米人の間で普及されました。彼の太極拳を、鄭子太極拳とも呼びます。
「刀」
現在に伝わる代表的な刀は、柳葉刀と呼ばれ、刀刃が柳の葉の様に細く反りった形状です。長さは、全長は80~100cm。 手で持つ部分の柄ぶは、下に向けてやや湾曲しています。また、日本倭刀を元にして変化した刃の長く、刀柄が短く、両手で持つ刀などもあります。現代に伝わる刀の種類、套路は数多くあります。一般的によく見られる刀は、大刀、柳葉刀、苗刀、朴刀、八卦刀、太極刀、胡蝶刀、南刀、環刀などがあります。中国の「刀法」を紹介した専門書には、明代・程冲斗【耕余剰技・単刀法選】、明代・戚継光【辛酉刀法】等があります。
「苗刀」
日本で出来た刀のことを言います。別名で倭刀とも呼ばれます。刀身は長く幅が狭い形状となっています。
「槍」
武術兵器(器械)の一つ。長兵器類に属します。矛が発展して、槍が出来たと言われていあます。杆の長短により、短槍、大槍、花槍などの種類があり、六合大槍が日本では有名です。
「大槍」
槍の一種。長さは一尺二寸(約 4m )より長い。大槍の動作は比較的簡単ですが、攻撃力が強く実用に長けています。八極拳などで主に練習します。
「剣」
武術兵器(器械)の一種。平らで真っ直ぐ、細くて長い。両側に刃が付いている短兵器です。一般には、20~40cm程度の長さのものが多いようです。
「拳」
手型の一つ。「拳頭」「捶」「捶頭」とも呼ばれます。
「拳児」
拳児は、小学館の週刊少年サンデーにて連載されたマンガです。原作・原案などは、武術研究家である、松田隆智。作画は、藤原芳秀です。中国武術をテーマとした作品で、格闘シーンも登場しますが、主人公の拳児の成長を軸に、中国武術の技術論や思想・哲学などを描いた物語です。ストーリーは、フィクションですが、現実の武術史、実在した過去の武術家に関するエピソードが多数紹介されています。また、実在の武術家がモデルとなったキャラクターも数多く登場しています。なお、主人公が主として学ぶ武術は、神槍とも呼ばれた、名人として知られる、李書文の伝えた、八極拳(李氏八極拳)です。