日時
2025年5月31日(土)15:00-17:00
場所
名古屋大学教育学部2F E・F演習室
発表者
中島 健一郎氏(広島大学)
https://kennakashi.jimdofree.com/
発表タイトル
大学新入生の孤独・孤立を理解し、組織的介入のあり方を探る:大学入学前後に着目した縦断調査と大学での全体調査より
要旨
開催報告
2025年度第1回の名古屋社会心理学研究会では、広島大学の中島健一郎氏により、複数のバラエティに富んだ調査手法によって得られた豊かなデータを基に、大学生(特にコロナ期~ポストコロナ期の大学新入生)の孤独感に影響を及ぼす諸要因について、網羅的に分析・検討した結果についてご発表いただいた。
はじめに、多大学が参画した大規模調査のデータにより、コロナパンデミックによる大学閉鎖時のオンラインでの対人交流が孤独感を低減しないことや、都市圏の学生と非都市圏の学生で、孤独感と他の指標との結びつきが異なることが示された。
次に、中程度縦断調査のデータにより、社会的・経時的比較(過去の自分と現在の自分の比較)がソーシャルサポート人数と孤独感との関連を強めることや、抑うつと孤独感の個人内共変動が新生活への移行の有無と調査時期によって異なること、反すうの抽象的処理モードが新生活移行期の大学生の孤独感を強めることが示された。
最後に、特定大学での全体調査によるデータから、入学時の孤独・孤立が半年後の精神的健康を予測しうることや、他学年との交流会への参加が半年後の孤独感にポジティブな影響を及ぼす(個人としても学部全体としても、交流会の参加が孤独感の低減につながる)こと、教員の最小相互作用が学生の孤独感の低減につながることが示された。
フロアからは、大学の規模やロケーション(大学が位置する都市の関係流動性や、そもそも大学がどの程度孤立した環境にあるか)といった、孤独感に影響を及ぼすと考えられる他の大学レベルの要因についての提案や、本研究で用いられている心理ネットワーク分析という手法の解釈に関する質問、本研究で扱われた孤独感の定義に関する質問などがなされ、研究会全体にわたって活発な議論が展開された。