第37回「学びの「ワクワク」感じてる? 学び方・調べ方の達人 梅ちゃん先生に聞いてみよう!」

発表資料

[質疑応答]

☆<事前アンケートから> 梅澤さんへの質問 & 梅澤さんからの回答

1.「今の時代、学生も何かと忙しい(講義、バイト、サークル…)ようですが、

  その中で図書館はどのような形態でリテラシー教育を行うのが望ましいでしょうか。

  放課後の講習会に参加してくれる学生もいれば、中々都合の合わない学生もいるようなので、

  そういった学生にどうアプローチすればよいか気になっています。

→まず「図書館の使い方」とか「資料の活用法」など、既存の組織・コレクションを前提があるならば、

ちょっとそこから離れてみて、無料のWeb情報でも信頼に値するものはどんどん取り入れ、さらに

「学生にとって、身につまされるようなテーマ設定」を皆さんでワイワイと考えてみるとヒントになるかも知れません。

たとえば「コピペはどこから許されないか」とか「就活で大コケしないための企業研究法」、

「理系研究者としての人生を棒に振らないための研究者倫理」みたいな…。

2. 働きながら大学院を修了されたとのことですが、どのようにお仕事と研究を両立されていたのでしょうか?

→幸い授業は土曜日が中心でしたが、就業時間や遅番・土曜当番のシフトなどは入学前と全く同じでした。

事前に交代などをお願いしたことはありますが、軽減をお願いしたことはありません。

そこは、働きながら学ぶ上での最低条件だと思います。

たとえば当番の土曜日に定期試験がある時は、追試を申請しました。

平日の夜に勉強や宿題をしようとしても既にエネルギーが切れていますので、

早朝のスタバ等がお薦めです。朝ならば、まだ心身ともに元気いっぱいです。

出勤前のコーヒータイムなので、それほど騒がしくないですし、Wi-Fiもあるので非常に捗ります。

3. 図書館利用リテラシーはとても重要である事をどのように理解してもらったら良いか。

→上述のように、学生さんに「我がこと」として身を乗り出させるには

図書館視点からの利用ガイダンス設計ではなく

とにかく「身につまされるテーマ設定」が大切だと思っています。

4. 図書館利用リテラシーの進捗はどこで測れるのか。

5. 図書館利用リテラシーを広める為にはどんな方針が大切でしょうか。

6. 図書館利用リテラシーの進捗状況を確認する為にはどのような方法が有効でしょうか。

→日本の大学図書館の評価基準は、戦後ほどんど変わっておらず

蔵書数・貸出数・来館者数・開館時間・座席数などを中心に測っています。

(最近ようやく専門性をもった職員も加わってきましたが…)

アメリカでは14年も前から「学生の成長度」を評価指標に入れています。

http://www.ala.org/acrl/sites/ala.org.acrl/files/content/standards/highered_japanese.pdf

ガイダンス等を、「やりっぱなし」でなく「新入生が何を知っていて、何を知らないか」など

アンケートやインタビューで観測しながら、その効果と共にデータを残して分析し

「図書館がどう支援するか」を常に考える材料としていくことが大切だと思います。

詳しくは、『図書館雑誌』103(11)に

「大学図書館職員の教育研究支援能力--米国大学図書館協会の基準に学ぶ、職員と成果の評価による改善策」

として書きましたので、ご参照ください。

7. やりたいことの見つけ方

→たとえば「何となく、習い事でもしてみるかな…?」という「学ぶこと自体」が目的だと長続きしない気がします。

やりたいことを見つけて、その実現のために(たとえば)どうしても英会話が必要ならば、それに注げる情熱も強くなるはずです。

学生ならば学年や、働いているかどうかで方法は変わってくると思いますが、今の日常生活から見いだせないならば、

何といっても読書で視野を広げることが近道だと思います。その際、これまで好きだった分野ではなく

あえて全く手を出さなかった分野に広げてみると、思わぬ発見があるでしょう。

小さな図書館でも良いので、本棚の背表紙を端から端まで全部見て回ると、数時間から半日かかるかも知れませんが、とてもとても楽しいですよ。

両手が自由になるリュックと、動きやすい靴がオススメです。軽いハイキングのつもりで行きましょう。

8. 働きながら学ぶことの意義や価値(やって良かった点)と,

   これから学びたい人に向けて薦めたい学びのジャンルがあれば知りたいです。

   学校図書館の「役割」「利用」「ひと」のあり方を問い直し、再構築を図りたいと考えています。

   一点突破全面展開につなげられるような理論武装のアドバイスを頂けたらと思っています。

   具体的でなくてすみません。

→特定の学びのジャンルを「お勧め」することは、

ちょうど読書感想文の指定図書を押し付けることに似ていて

むしろ「読書離れ」のように「学び離れ」を引き起こす気がします。

私は小学校の時、大人がゴリ押しする読書感想文コンクールの影響により、

しばらく読書が大っ嫌いになりました…。

期待されるであろう内容を予測し、巧妙に書き上げて賞までもらったのですが、

これは、まるで最低限の努力で単位を取ろうとする大学生のテクニックです(その点では役立ちましたが)。

万人にお勧めの「学びのジャンル」というものはありませんが、

上述のようにジャンルを指定せず幅広く「偶然の出会い(セレンディピティ)」に身をゆだねて

面白そうな本を探すことだけは、唯一、万人に勧められるアドバイスかも知れません。

☆<当日(7/20)> 参加者が付箋に書いてくださった質問 (会場で回答いただいた分は除く)

1. (ご講演の中で出てきた、会場への質問について)

「次の文のうち、どこが間違っているか」という質問に、大学生はどう答えるのですか?

→最初は、「全て当たり前じゃないか。間違っていないのでは?」という感じですが、

少しずつヒントを与えながら「厳密に考えると、例外があるかもよ?」と導いて行きます。

この際「少しずつ」の匙加減が、とても大切です。

2. ガイダンスのためのパフォーマンス力、プレゼン力は、どう高めるのでしょうか?

→私自身は「とにかく場数を踏むしかない」と思っていましたが、ノーベル賞を取った山中伸弥先生の

「プレゼン力」という本を先日何気なく読んだら、アメリカではそういった技術向上が体系的に

トレーニングできるプログラムがあり、非常に助かったと仰っていました。

たとえばプレゼンを録画して、本人が退室した状態で聴き手が遠慮なく感想を述べあい、

その様子まで録画して改善のヒントにつなげるなど、驚きの内容でした。

ご興味あれば、ぜひご一読ください。

3. なぜ、高校生で旅に出ようと思ったのでしょうか?

→世界史の資料集に載っていた「有翼人面牡牛像」に惹かれ、

まずはロンドンの大英博物館を目指しました。

ところが、この博物館は「世界中から集めたもの」を展示しているのであって、

「現場そのもの」とは遠く離れていると気づき(たとえばスフィンクスのアゴ髭など)、

興味は世界各国の現場に広がって行きました。

☆<当日(7/20)> 参加者の皆様との質疑応答

Q1.梅澤さんは、なぜ司書になろうと思ったのですか?原典にあたるのがお好きだからでしょうか?

A1.高校時代は世界中を旅することが好きでした。

そして、大学は青山学院大学の夜学(2部)に進み、

日中の9時~17時は図書館で働き、夜は学生、という生活を送りました。

図書館で働く中で、だんだん利用者からのレファレンスに答えられるようになり、

見事に答えられた時は本当に嬉しくて、それが司書になろうと思ったきっかけでした。

そして、3年生の夏に、大正大学で司書を取りました。

Q2.(梅澤さんのお話はとても面白いですが)どうやって話のネタを探すのですか?

そして、魅力的な話し方のコツは何ですか?

A2.中央大学理工学部図書館で、500人相手にガイダンスをするのですが、

大抵、前の2割は熱心に聞いてくれて、真ん中あたりは普通、後ろに行くにつれて

やる気のない学生が増えてきます。

よって、後ろの方の、騒いだりやる気がなさそうな学生たちをターゲットに、

どうにかして振り向かせよう、スマホを置いて話を聞いてもらおう、と、頑張りました。

話を面白くするコツは、この時に身に付けたのだと思います。

また、子供向けのキャンプ引率のお兄さん役をやっていたこともあり、

この経験も、話し方を鍛える良い機会だったと思います。

Q3.(梅澤さんは世界中を旅しておられますが)世界一美しい図書館はどこだと思われますか?

A3.ストックホルムの市立図書館は、世界でも美しい図書館の一つだと思います。

この図書館は、スウェーデンを代表する建築家、エリック・グンナー・アスプルンドによって設計されました。

見回すとぐるりと360度、円形の書架が並んでおり、本当に美しい光景です。

第37回勉強会のまとめです。

第37回勉強会『学びの「ワクワク」感じてる? 学び方・調べ方の達人 梅ちゃん先生に聞いてみよう!』のまとめ - Togetter

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