質疑応答

▼豊田さんへ

Q1)在宅勤務というのは未来的な仕事のスタイルかと思いますが、どうしても紙の資料を見たり、図書館に足を運んで情報収集しなければという状況はありますか?

A)あります。絶対に紙の情報しかないとわかっているものもあります。

会社が契約している情報機関から資料を取り寄せたり、非常勤講師として勤務している大学の図書館でコピーしてくることもあります。100%紙なし、という状況ではありません。

Q2)これから在宅のライブラリアンという仕事は伸びてくると思われますか?

A)友人の1人に、ベインという米系のコンサルティング会社で勤めていて、その会社を退職した際に以前の上司に請われて在宅リサーチをしている人がいます。調べてくれる・まとめてくれる人がいると便利だということを体験として理解している人にとっては、リサーチを行ってくれる人材に対するニーズがあります。ただ、日本ではそのニーズと資格・能力がある人の繋がるルートが弱く、マッチングがうまくできていないと感じています。マッチングができれば、在宅のライブラリアンという働き方も広がっていくと思います。

補足:このときに紹介しようとして、名前が出てこなかったのは「クラウドワークス(http://crowdworks.jp/)」でした。仕事のマッチングサイトですが、こうしたところでライブラリアンのマッチングもできるようになるといいな、と思っています。

Q3)大学図書館員は大学の経営者に対してもリサーチ力を役立てられるのではないかと考えていますが、そういう役割・場面において図書館員に声がかかったことは(本学では)ありません。自分たちの有意性をアピールするのに過去にやったことやアイデアを何かお持ちでしたらお聞かせください。

A)情報発信を積極的にたくさん行うことがアピールに繋がると思います。例えば全社メールをためらわずに送る、重役たちに読むべき記事を配って回るなど、図書館ができることをアピールするのはどうでしょうか。既に知っている情報だったとしても、売り込みに来ることを嫌がられはしないはずです。カウンターの後ろに座っていては何も起こらないので、積極的に相手の場所に出ていって売り込むのがよいと思います。

Q4)お話を伺って、情報を加工・評価して伝えるという今のお仕事はコンサルの仕事なのでは?とも思えました。ご自身がコンサルではなくライブラリアンだとお考えになるのはなぜでしょうか。

A)今の業務はクライアントの判断のベースになる事実を提供するもので、まとめはしますがあくまでも事実をベースにしています。コンサルはアドバイザーとしての立場、その人自身の価値判断を与える役割ですが、私は自分の価値を告げるのではなく、あくまで事実を示していく役割だと思っています。

▼川村さんへ

Q1)SRスタディについて、教員や大学院生ができていなくて図書館員ができていることもあった、という話がありましたが、具体的にはどんなことでしょうか。

A)自分が普通に探せた文献を先方は探せていなかったり、MeSHについて大学院生に教えたりしたことがありました。

複雑な検索式を立案することも各データベースの特徴を理解している図書館員が関わった方がよいと思います。数種類のデータベースを実際に検索するのも、もちろん教員や大学院生がやってできないことはないと思いますが、図書館員が行った方が正確性や効率性の面で助かるという研究者は多いのではないでしょうか。

Q2)先生からレビュー協力の依頼がかかるには、図書館員の能力を先生方に示さなくては信頼も得られないのではと感じていますが、今回はどうだったのでしょうか。

A)依頼してくださった先生は以前カナダに留学し、そこでシステマティック・レビューの手伝いを現地の図書館員にしてもらっていた経験があって、元々図書館員への信頼度が高かったように思います。そういうわけでこちらが何かを示したわけではなく、受身で、ある意味ではラッキーだった半面、先生の高い期待に応えるためにもがいてきた感じです。

どうすれば信頼してもらえるかという点については、豊田さんが仰っていたように、情報発信を積極的に行っていくことが一つの方法かなと思います。もう1件別の大学院生さんのシステマティック・レビューの手伝いを行う予定ですが、その後はサービスとして代行検索を行っているというアピールを研究者に向けてしていきたいと考えています。

Q3)SRをやってみて、全く手探りだった頃からある程度の手ごたえを得られるようになるまで、どのくらいの研鑽時間がかかりましたか?よく1万時間理論などと言われたりしますが。

A)1万時間理論はイチローレベルのプロに達するような話かなと思います。図書館員がプロとして持っているべきDBや文献管理に関する知識と、「こいつじゃ話にならん」と研究者に思われないくらいの研究手法や学問分野に関する最低限の知識は、数10時間の研修・学習でも効果は出るように感じました。あ、SRに関する勉強法みたいなものはやる気のある方がいればシェアしたいです。

でも発表の中でも申し上げたように、活動を始めてから学ぶことも多かったです。あともしかしたら「私はあなたのことを真剣に助けたいと思っているし、そのためには努力を惜しまない所存」という姿勢でいるのが一番大事なのかもとも思います。

Q4)お話を聞いて、川村さんは大分医系に「埋め込まれた」印象を受けました。今後も医系を極めたいですか?

A)はい!医系は楽しいです。医系で長い間働いてきた方の司書としてのキラキラ感はすごいなと感じています。実際問題、異動はあるのですが…。