まず1階の多目的室で施設長から資料を元に施設の目的・概要・利用法を聞く参加者。壁にかかっている時計は、高齢の利用者が見やすいよう低い位置にある。
この多目的室は地域交流を目的とし近隣住民にも開放する方針とのことだが、やまゆり園事件の影響で部外者は入れないようにとの指導があり苦慮されている由。
5月10日(水)に「小規模多機能型居宅介護事業所と認知症対応型グループホーム見学会」として、所沢市で医療生協さいたま老人保健施設さんとめが今春開設した小規模多機能さんとめとグループホームさんとめを訪問しました。
建物外観。老人保健施設さんとめの北側に位置する。
2階に定員9人のグループホームが2ユニットある。階段は段鼻が明瞭。階段・エレベーター共に入居者は自由に使える。居室でもベランダへ出られるようになっており、できるだけ閉じ込めないという方針。
リビングテラス(中庭)を設けることで十分な採光が得られている。
食堂側から居間を望む。通路の中央に立ちはだかる柱は構造上必要ということで、利用者がぶつかっても負傷しないよう緩衝材(縄?)が巻いてあった。
カラン(水栓)はイスに座ったままでも使えるほど高い。また洗面器を置く台の高さも十分。非常呼び出しボタンは浴室内に複数ある。
浴槽についているこのボタンを押下すると排水口が開く。当会会員の経験によれば、入浴中の失神等緊急時には湯を抜くことで溺水を防ぐことができる(家族が119番にかけている間に溺れた例あり)。
浴槽の移動に合わせて縦手すりも左右に動かせる。赤いのは非常呼び出しボタン。
浴槽が左右に動くので、左右どちらかに麻痺があっても壁づたいに浴槽へ辿りつける。
この間取り図は実際の方角と一致しており、玄関は北北東に向いている。まず多目的室で説明を聞いてから、居間、宿泊室、浴室の順で回る。食堂は利用者がいらっしゃったので素通りし、リビングテラス(中庭)の脇を通ってホールへ出る。相談室脇の階段を上がって2階へ。グループホームT(西側;図の緑色の領域)へ入り、食堂、居室、浴室を見学。機械浴室からグループホームM(橙色の領域)を抜けてホールへ戻る。(利用申込書から)
居間にある洗面台。車イスのままでも近づけるよう下の空間が確保されている。ホールにも洗面台があり、外出の後は手を洗えるようになっている。もちろんバリアフリー。
2階は1階と異なる床材を使用していると聞き、スリッパを脱いでその柔らかさを実感する見学者たち。
トイレ(男女共用)は戸の色が居室のとは明白に異なり間違えにくい。奥は右側に障害のある人向けで戸は右開き、手前は左側に障害のある人向けで戸は左開き(中の構造も鏡像)。
浴室は手すりが見やすい配色に。
各ユニットに1つの浴室とは別に、イスにかけたまま入浴できる機械浴室がある。ここは壁の色がうすいピンク。
居室の非常呼び出しボタン。右側は応援を求めるスタッフ専用で、押すと居室入り口上のランプが赤く光る。備え付け家具はベッドのみで、他に必要なものがあれば自分で持ち込む。物干し竿を持ち込めばベランダで洗濯物を干すこともできる(浴室の隣に入居者の使える洗濯機がある)。
スタッフが使用する設備は扉の色が目立たない。
この4月に開設したばかりの真新しい施設なので、施設選択の判断基準の一つと言われる生活の〈匂い〉については分からなかった。
グループホームはあくまで共同生活の場であり、基本は自立。職員はそのお手伝いという立場。認知症になっても尊厳を保ったまま老いていける反面、症状がさらに進んだらどうなるか。最近は介護の仕方で施設入所者の病状が劇的に改善するという知見もあるので、安らかに最期を迎えられるかもしれないが。ちなみに料金表を見ると看取り介護加算の項目があった。
地域に開放され住民と触れ合う施設を目指し、入居者を監視したり行動制限したりしないという理想と、入居者の保護(事故防止)をどう両立させるかが課題に思えた。地域との交流は偏見を減らすと期待されるが、津久井やまゆり園事件は実態をよく知る元職員の犯行だったから、そう単純な話でもない。JR東海の事故の際は遺族に同情が集まったが、同じ徘徊の果ての事故でも横浜で小学生を死傷させ不起訴となった男性には鎖につないでおけなどという非難もあり、世間は移ろいやすいもの。
また最大9人での共同生活は構成員によって様々なことが起きる。この辺についての知見は集積されているのだろうか。
建物や設備の工夫については建築系の会員の感想を聞きたかったが、残念ながら急用が入るなどして福祉系会員主体の見学となってしまった。(以上、細川)
なお、設備については竣工のお知らせに写真付きの解説がある。
以下は代表理事の伊藤によるフェイスブック上での報告(写真割愛)。
所沢市中富に新しく5月1日に開設された高齢者施設「小規模多機能さんとめ・グループホームさんとめ」をNPOとこすまメンバーで見学しました。9名の会員が参加しました。 明るい雰囲気の施設で、利用者の方々や職員さんたちの生活動線にもよく配慮されており、快適な暮らしぶりが想像されます。 「地域に開かれたホームにしていきたい」との職員さんの言葉が強く印象に残りました。
小規模多機能さんとめ
http://santome.mcp-saitamawest.jp/use/shokibo.php
グループホームさんとめ
http://santome.mcp-saitamawest.jp/use/group_home.php
(Facebookでの報告)