マイクロ表面テクスチャによる色素増感太陽電池の高性能化

背 景

太陽電池の入射光面にみられるような反射防止構造など,材料表面にミクロンないしそれ以下のオーダの凹凸を設け表面機能や改善した例は多く(光散乱・反射防止、親水・疎水性制御、潤滑特性制御、面積増大など),多くの分野において表面微小構造による表面機能向上に対する期待は大きくなっている.ここでは,マイクロテクスチャ金型の製造と応用の研究として,低コストで製作が容易かつ比較的弱い光でも発電可能な色素増感太陽電池(DSC,図1)へのマイクロテクスチャ導入による効果について検討している.

 

図1 色素増感太陽電池(DSC)の模式図

目 的

・ 表面マイクロテクスチャ金型の製造

・ 導電性透明樹脂電極表面へのマイクロテクスチャの転写加工

・ 導電性透明樹脂電極表面へのマイクロテクスチャ導入による色素増感太陽電池(DSC)の高効率化

 

振動マイクロ引っかき(切削)によるマイクロ表面テクスチャの創成と導電性透明樹脂電極へのテクスチャ転写加工

3軸NC加工機上でFast Tool Servoを用いた微小振動を付加しつつアルミ表面のマイクロ掘起し&切削により,マイクロ周期構造を設け,それを陽極酸化することにより,高耐久性を備えたマイクロテクスチャ金型を製造する.それによって導電性透明樹脂電極表面にマイクロテクスチャを転写加工し,DSCに利用する.光散乱の向上や反射低減による光吸収効率向上を図り,DSCの発電効率向上を目指す.

 

 

図2 マイクロテクスチャ金型の製造方法(左)および転写加工の概略(右)

得られた成果

・ マイクロテクスチャ金型を製造した(図3).

・ マイクロテクスチャつき導電性透明樹脂電極を用いてDSCを製作した(図4).

・ 1割程度の発電効率の向上を確認した(文献1).

 

図3 マイクロテクスチャ金型

 

図4 透明樹脂電極への転写結果とそれを用いて製作したDSCの外観

日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C) H22~24年度 No. 22560102

「ナノ切削金型を用いた微小転写加工の高機能色素増感太陽電池開発への応用」 (代表 山本 武幸)

現在の状況

・ より微小で複雑な表面テクスチャ金型の製作

 

参考論文

(1) 山本武幸,清水 淳,周 立波,尾嶌裕隆,小貫哲平,長谷川直美:微小テクスチャ金型の開発とその応用-振動切削による金型製造と透明電極への適用-,精密工学会秋季大会講演論文集,(2012.9) pp.877-878.