Siウエハ加工変質層が仕上げ加工に及ぼす影響

背 景

CMP(Chemical Mechanical Polishing)やCMG(Chemo-Mechanical Grinding)に代表されるように,シリコン半導体デバイスの平坦化プロセスにおいて,研磨によってナノオーダ以下の精度の表面が得られるようになった.しかしながら,その加工メカニズムはよくわかっていない.とくに,ダイヤモンド・ラッピングや研削により形成された加工変質層がその後の仕上げ加工に及ぼす影響を明らかにすることは,仕上げ加工精度やコストを見積もるのに重要である.

目 的

・ 半導体基板のナノオーダ摩擦・摩耗および極微小除去加工メカニズムの解明(とくに加工変質層の影響)

Si加工変質層のナノスクラッチ実験の概要

  原子間力顕微鏡(AFM,図1)のカンチレバプローブとして鋭利な単結晶ダイヤモンドを用い,接触モードで観察時よりもたわみ量を極端に大きくしてスキャンし,シリコン基板表面の比較的大きな面積を面引っかきする(加工変質層の生成).その後,単線引っかきすることにより,加工変質層の単粒引っかきを試み,無加工面を引っかいた場合と比較する.

図1 環境制御型原子間力顕微鏡の外観

        図2 加工変質層上への単線後加工(8本)後におけるAFM像 図3 後加工後のスクラッチ溝深さと前加工荷重の関係

 

日本学術振興会 H21年度優秀若手研究者海外派遣事業 No.21-5138 (豪州・クイーンズランド大学)

「極薄シリコンウエハの固定砥粒方式無欠陥仕上げにおける前加工面の影響の解明」 (清水 淳)

 

現在の状況

・ダイヤモンド研削ウエハにおける評価 

・セリア砥粒によるSi加工変質層上のナノスクラッチ

 

参考論文

(1) X.M. Song, J. Shimizu, L. Zhou: Nanoscratching tests on nanomachined silicon (100) surface using scanning probe microscope,  Proc. 2nd Int. Conf. on Nanomanufacturing (nanoMan2010), (2010.9) No.247(CD-ROM)

(2) 清水 淳,周 立波,小貫哲平,尾嶌裕隆,山本武幸,鈴木直紀: Siウエハ仕上げ加工に及ぼす加工変質層の影響の解析-ナノスクラッチ実験と分子動力学シミュレーションによる検討-, 砥粒加工学会誌, 55, 11 (2011.11) pp.662-667

得られた成果

・ 前加工により生成した加工変質層の深さは,前加工荷重の増大につれて深くなることを確認(文献1)

・ 後加工荷重の上昇に伴い,加工変質層のみの除去からバルクの除去が混在するように推移すること,さらには,加工変質層を除去する割合が高くなるにつれて,相対的にスクラッチ溝は深くなる傾向を示すことなどを明らかにし(図2,3),加工モデルを提案(文献2)