研究ティータイム

Post date: Jan 12, 2013 3:42:35 AM

第16回「愛について」

日時:2023年7月30日(日)16:00~18:00

語り手:勝村弘也(神戸松蔭女子学院大学名誉教授)

司会:加藤哲平(九州大学助教)、手島勲矢(京都大学非常勤講師)

聞き手:新免貢(宮城学院女子大学名誉教授)、久保田昌弘(ルードヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン福音主義学科博士後期課程)

内容:愛を神人関係の比喩とした最初の預言者はホセアで、申命記はそれを発展させました。今回は、愛のテーマを聖書学の観点からだけではなく、森有正のパスカル研究や最近のリクールの論文などを参照して、多角的に考えて行きたいと思います。みなさんからの活発な議論を期待します。

第15回「新しい景色」

日時:2023年5月28日(日)16:00~18:00

語り手:石川立(同志社大学神学部名誉教授)

聞き手:加藤哲平(九州大学助教)、大頭眞一(京都信愛教会牧師)、勝村弘也(神戸松蔭女子学院大学名誉教授)

司会:手島勲矢「石川先生は、聖書は楽譜と同じで、それをどう弾きこなし演奏するか、楽譜が読めなければ演奏できないが、楽譜だけでは演奏はできない、と述べられ、まさに聖書解釈もその通りなわけですが、石川先生の話題提供を受けて、その後で、教会で語る旧約の歴史と、大学での聖書学との接点や解離点などの話も交えながら、楽しくお喋りできればと思います。ご興味のある方は、学会員でなくても歓迎します。」

内容:「新しい解釈学」では、テクストの地平と読者の地平が溶け合って、読者の眼前に新しい地平が広がると言います。私は聖書を読む者として聖書の「新しい景色」を見たいと思っています。

第14「ヘブライ人に訊け!」:ヒエロニュムスとヘブライ語聖書

日時:2023年430日(日)16:00~18:00

語り手:加藤哲平(九州大学) 聞き手:飯郷友康(立教大学)、伊藤玄吾(同志社大学)

内容:ウルガータ聖書の翻訳者として知られるラテン教父ヒエロニュムスは、古代においてヘブライ人(ユダヤ人およびユダヤ人キリスト者)から直接聖書の手ほどきを受けたほぼ唯一のキリスト者だった。ギリシア語訳聖書を正典視した他のキリスト者と異なり、彼は聖書のヘブライ語テクストとそのユダヤ的解釈を重視した。本発表では、まずヒエロニュムスの生涯を伝記風に辿りつつ、彼がその該博な聖書知識に関して何をどのようにヘブライ人たちに負っているのかを確認する。また聖書のヘブライ語テクストとギリシア語訳の間にあるテクスト上の異同を表す校訂記号を、ヒエロニュムスをはじめとする教父たちがどのように理解していたかを分析することを通じて、聖書に対する教父たちの立場の違い、とりわけヒエロニュムスの取った立場の特殊性をも明らかにする。

第13回「スピノザの幽霊話:ヘブライ語文法と論理学」

日時:2023年2月26日(日)16:00~18:00

語り手:手島勲矢(京都大学・非常勤) 聞き手:平尾昌宏(立命館大学)

内容:幽霊の存在をめぐる問答がスピノザの『書簡集』に残っている。幽霊や妖怪などについて、スピノザは実在のものと考えているのか?「神学者・哲学者は霊魂を実在するものと信じているが、あなたはどう考えるのか?」と文通相手のボクソル(畠中訳ではボクセル)はスピノザに尋ねている(書簡51)。この興味深いやり取りをヘブライ語文法教科書(ディクドゥーク)の視点から見るとどう見えるのか?特に、スピノザの先生たちメナセ・ベン・イスラエルやイツハク・ウジエル、イツハク・アボアブの文法教科書には、名詞の分類があり、そこでは霊魂?について意見が割れているように見える。また中世ユダヤの文法学者にとっても、アリストテレス論理学の注解者にとっても、事物と実体の関係は難しい問題でもあるのだが、その辺について、平尾さん(岩波スピノザ全集で書簡集の翻訳を担当)また参加される方々と、気軽におしゃべりをして、ご教示を乞いたいと思う。


第12回「対話と根を持つこと

日時:2023年129日(日)16:00~18:00

語り手:馬場智一(長野県立大学) 聞き手:後藤正英(佐賀大学)

内容:提題者は、これまで20世紀前半仏独の、主にユダヤ系思想家(レヴィナスなど)を中心に研究してきた。研究を通じ、哲学的関心を寄せてきた事柄の一つに、「根を持つこと」がある。他方、10年ほど学校や街中で哲学対話を実践してきてもいる。これまで研究と対話実践は相互に交わらなかったが、最近「対話」と「根を持つこと」は深いところでつながっていると思うようになった。聞き手の皆さんと対話しながら(また、これまでの研究や対話実践を振り返りながら)このことについて考えてみたい。


第11回「アンドレ・ネエル(ネヘル)『言葉の捕囚』とアウシュヴィッツ神学」

日時2022年11月27日(日)16:00~18:00

語り手:菅野賢治 聞き手:馬場智一、伊藤玄吾、手島勲矢

内容:1960年エリー・ヴィーゼル『夜』の英語訳刊行(イディッシュ語版1955年、フランス語版1956年)と1961年のアイヒマン裁判を契機として、「アウシュヴィッツ」の主題が、人類の普遍的な殉教譚から、ユダヤ教徒・ユダヤ人に降りかかった特殊にして比較不能の犠牲譚へと変容を遂げた。ネエルの主要著作『言葉の捕囚ー聖書の沈黙からアウシュビッツの沈黙へ』の刊行時点(1970年)では、いまだ「ホロコースト」の語用が一般化していなかったため、「アウシュヴィッツ神学」の呼称を採用するが、このユダヤ・ジェノサイドの実態が歴史の関心を集めるのみならず、神学の重々しい主題となっていく過程に、ネエルの思想をいかに位置づけることができるか、限られた知見の範囲で試みたい。

第10回「ユダヤ教、ユダヤ・キリスト教、キリスト教-キリスト教発祥前後のアラム(セム)語圏の宗教の連続性と非連続性」

日時2022年10月30日(日)16:00~18:00

語り手:武藤慎一氏(大東文化大) 聞き手:津田謙治氏(京都大)

内容:キリスト教はユダヤ教から生まれ、その最初期においては担い手の殆んどがユダヤ人でした。ギリシア人を始めとする異邦人に次第に取って代わられたため、元々のユダヤ性は忘れられていきましたが、実際にはそれは古代キリスト教において色濃く残っていました。この問題の鍵を握ると思われた、その移行期における「ユダヤ・キリスト教」の歴史的・思想的・文献学的研究は、主に資料僅少のため、いまだ成功していません。そこで、研究対象を前後の時代にひろげて、「キリスト教以前のキリスト教」とも言うべき紀元前2世紀前後ユダヤのアラム語原典から、後1世紀の新約テクストのアラメイズム、4世紀前後のアラム・キリスト教まで、翻訳テクスト(シリア語訳、アルメニア語訳)とも比較しながら、その連続性に着目して考察したいと思います。

9「もう一つの心理学—現実を想像する力」

日時:2022年925(日)16:00~18:00

語り手:森岡正芳氏(立命館) 聞き手:小野文生氏(同志社)

内容:「現実想像」(Realphantasie)はブーバーの『原離隔と関わり』 ( "Urdistanz und Beziehung," 1950)に出てくる言葉です。人間存在の原理を人間と人間との『間』という領域において実現するとすれば,その実現は「現前化」という事態においてである。「現前化」(Vergegenwärtigung)は,感覚的には経験し得ない現実を,魂の面前に立ち上げ,そこで保持する「現実想像」すなわち「他者の他者性をありのままに私の心の中に描き出す」力を基盤とします。京都ユダヤ思想第10号【巻頭言】に「現実を想像する力」をベースに、物語と対話という概念にもとづく「もう一つの心理学」の動向とユダヤ思想的背景について書きましたが、今回は、そこからさらにブーバーが晩年カウンセリング心理学のカール・ロジャーズと『対話』を行ったなかで印象に残る「現実を想像する」力へのブーバーの言及に、焦点を当ててみたいとおもいます。


第8回「説話(アガター)学の現在と聖書」

日時:2022年8月28日(日)16:00~18:00

語り手:飯郷友康   聞き手: 神田愛子、手島勲矢

内容:私の研究態度として、かつて立教大学日本学研究所に、以下のような文章を提出いたしました(2016年度)。《ヘブライ・ユダヤ文学史上、いわゆる「説話(アガダー)」「講釈(ミドラシュ)」の占める位置は極めて重要である。膨大な説話講釈をできるかぎり幅広く採集し、まずはその多岐にわたる表現様式を把握することに努める。また、伝承の過程において生ずる意味の変遷(すなわち、伝承者による説話解釈)を追跡し、原話に内在する不明点の数々を認識する。》 以上この態度を今も変えずにおります。皆様の研究分野に私の話題が多少なりとも貢献できれば幸いです。


第7回「ヴィルヘルム・フンボルトの対話的言語」

日時:2022年7月31日(日)16:00~18:00

語り手:村岡晋一会員(中央大学)  聞き手:手島勲矢

内容:フンボルトに「双数について」という小論がある。言語はなぜ単数と複数のほかに「双数」という文法形式を必要とするのか。言語は二元性に貫かれているから、というのが彼の答え。つまり、言語は本来「語ること」と「聞くこと」、「呼びかけ」と「応答」の二元性からなっているのである。だが、言語の意味形成に「聞くこと」がかかわるということは、「すべての言語理解は非理解」だということになる。フンボルトの言語思想の驚くべき点は、それが啓蒙主義と国民国家形成期に現れたということである。啓蒙主義は理性一元論である。国民国家はただ一つの「国民」を前提するが、それを保証するのは「ただ一つの言語=国語」である。国民国家形成期には言語浄化運動が起こる。この二元的言語論に当然注目した人々がいる。ヨーロッパに同化したユダヤ人である。「ひとつの国民」がヨーロッパの国家内に生きる必須条件なら、ユダヤ人はみずからの言語も文化も放棄せざるをえなくなるからだ。じっさい、20世紀に入って、フランツ・ローゼンツヴァイクやオイゲン・ローゼンシュットックを中心として、「対話的言語論」が展開されることになる。だが、19世紀のユダヤ人はこのフンボルトの言語論にどのように反応したかにも興味がある。そのあたりを教えていただければとも思っている。


第6回「スピノチストとしてのシェリングードイツにおけるスピノザ受容の一形態」

日時:2022年6月26日(日)16:00~18:00

語り手:松山壽一(大阪学院大学名誉教授:元京都ユダヤ思想学会会員) 聞き手:平尾昌宏会員 

内容:ヤコービ『スピノザ書簡』(1785, 89)出現以降のドイツでのスピノザ受容の際立った一形態はシェリングによるものである。彼はスピノザ哲学(独断論)の真髄を「自己を滅却せよ」という「自己滅却」の思想に見出し、これを、ギリシア悲劇の英雄像に重ねつつ、「絶対的主体・意志自由の断念」による「人間的自由の承認・栄誉」と見なす。今回の講話では、『哲学書簡』(1795/96)で提起された逆説的なシェリングの「自由の哲学」が、カント批判哲学に対する批判に留まらず、ルター派正統神学に対する批判としての意義をも有することを、宗教改革以降の神学の「危機」問題、批判哲学出現以降の人間理性の「危機」問題に触れつつ解説する。


第5回「レヴィナスはどの点でユダヤ的なのか」

日時:2022年5月29日(日)15:00~16:30

語り手:渡名喜庸哲 聞き手:菅野賢治、後藤正英他、

内容:レヴィナスは、現象学をはじめとする西洋哲学にユダヤ的な発想を持ち込んだ哲学者として知られている。実際の活動としても、東方イスラエリット師範学校の校長を長年務め、またフランス語圏ユダヤ人知識人会議では中心的な役を担っていた。戦後フランスのユダヤ思想の普及の点で大きな功績を残したことは間違いないだろう。だが、その思想はどの点で「ユダヤ的」と言えるのだろうか。「アウシュヴィッツ/ショアー」という表現はたびたびレヴィナスに結び付けられるが、ときとしてそれは単なるレッテルのように機能する場合もある。あるいは一人の哲学者のテクストに聖書やタルムードへの言及があるからといって、それがすなわち「ユダヤ的」となるわけではないだろうし、また仮にそうなった場合でも、どの意味で「ユダヤ的」なのかは問われるべきだろう。あるいはさらに、哲学者の思索とそのユダヤ教育の実践は分離して考えるべきか、それとも繋げて考えるべきか。提題者はこれらの問いにまだ答えは出せていないため、問題を考えるうえでのいくつかの基本的な材料を示し、参加者のご意見をお待ちしたい。


第4回「西田哲学と禅体験と現象学」

日時:2022年4月24日(日)16:00~18:00

語り手:氣多雅子  聞き手:手島勲矢、小野文生

内容 :西田哲学の発端は『善の研究』の「純粋経験」であり、この概念の成立にはやはり禅体験が関わっていると思われます。禅の体験をメルロ=ポンティの身体図式の考え方などを用いて考察し、身体性が参与した心的世界が開かれるとかんがえられるのではないか?そこから出発して、現代の現象学の展開の中に西田哲学を置いてみるとどうなるか?などのお話です。その後のユダヤ思想の人称の考え方などから聞き手の反応も交えながら、生の対話の体験を提供します。


第3回「レヴィナスとパスカル:「私」をめぐって」

日時:2022年2月20(日)16:00~18:00

語り手:藤岡俊博 聞き手:伊藤玄吾、手島勲矢

内容:レヴィナスは著作のさまざまな場面でパスカルに言及しています。今回の研究ティータイムでは、パスカルがどのようにレヴィナスの思想の根幹に関わっているのかを、特に「私」というものを中心に考えてみたいと思います。


第2回「ヘブライ語研究の魅力:エルサレムでの学びを振り返る」

日時:2022年1月23日 (日)16:00~18:00

語り手:阿部望 聞き手:手島勲矢、飯郷友康

内容:阿部望会員がヘブライ大学、ヘブライ言語学科で指導を受けた先生方の研究内容、指導の思い出、また最近のご自身のヘブライ語研究をしながら思うこと、言いたいこと、聖書ヘブライ語の捕囚前後の変化、クムランのヘブライ語、賢者のヘブライ語などなど、日本ではあまり知られていないヘブライ語の歴史について、聞き手を交えて語り合います。一般向けに、これまでの学問の動向などを紹介します。


番外編「2021年を振り返る研究近況報告の座談会」

日時:2021年12月26日(日)16:00~18:00

司会&聞き手:手島勲矢、加藤哲平 ゲスト:濱和宏会員、岩本遠億会員他

内容:研究近況、また新入会員の入会動機、ユダヤ思想への興味、カジュアルな研究苦労話やイベント情報シェア


第1回「ルネサンスとヘブライ語:イタリアからフランスへ」

日時:2021年11月14日(日)16:00~18:00

企画者・司会:手島勲矢(京都ユダヤ思想学会会長) 対談者:根占献一氏(学習院女子大学)、伊藤玄吾(同志社大学)

内容:フマニストのヘブライ語文法研究がイタリアで始まり、それがクリスチャンの間でもブームとなり、16世紀前半の教会大学神学校の中にヘブライ語講座ができクリスチャンのヘブライ語人口が増えていきます。そのきっかけの一つはイタリアはベニスのボンベルグ出版。そこが中心となり、多くのヘブライ語聖書の教科書や文法書や辞書他が出され、また、その後、フランスはパリの王立教授団を中心にヘブライ語聖書研究やユダヤの思想哲学への興味も高まり、ヨーロッパの古典文化教養の核が作られていきます。当時の評判の学者や著作また文化政治の背景など、専門的なお話を聞く企画です。