スティーヴン・ケプネス来日イベント

Post date: May 11, 2018 1:37:04 PM

コルゲート大学のスティーヴン・ケプネス(Steven Kepnes)教授を、共同研究者堀川敏寛が招待しました。ケプネス教授は、シカゴ大学宗教学部でリクールに指導を受け、そこで作成した1987年の学位論文をもとに主著『The Text as Thou』(1992)を執筆されました。ここではガダマー/リクール/バフチンとの比較を通して、ブーバーの対話的解釈学と物語神学の特徴が分析されています。最近では「ユダヤ教礼拝の哲学的合理化—メンデルスゾーンからローゼンツヴァイクまで」「ポストモダンのユダヤ哲学」「ユダヤ神学の将来」について問題意識を持たれています。

ポストモダンの聖書解釈学

2018年4月21日(土)15:00-18:00(参加無料・予約不要) 京都大学文学研究科新館2F 第2演習室

開会の辞:ケプネスの研究とThe Text as Thou(堀川敏寛『聖書翻訳者ブーバー』新教出版社、2018より)

研究発表①:Methodology of Buber's Biblical Hermeneutics (Toshihiro Horikawa, Kyoto University of Foreign Studies)

ブーバーの聖書解釈方法論には、彼独自のライトヴォルト様式という文学的批評法、R的・傾向史的分析という歴史的批評法、行為遂行的・変化形成的な対話法があり、これらは聖書解釈における共時性/通時性/外部性が総合される三次元構造にもなっている。そこではテクストの最終形態を大切にしながら、歴史的解釈の変遷を経ながらも尚維持されてきた統一性に敬意を払うものである。そして彼がそこから捉えようと試みた根源的なものが、我−汝の関係性もしくは対話的原理であった。したがってブーバーの我−汝は聖書解釈学を通して明らかになると同時に、ブーバー自身が聖書解釈を通して自らの我−汝思想を表明していることになる。このように彼の思想は「我−汝と聖書解釈」との循環関係のなかにあることが示される。

研究発表②:Postmodern Biblical Hermeneutics (Steven Kepnes, Colgate University)

本講演では、聖書研究/聖書解釈の5つの方法がケプネスによって論ぜられる。

1.理性や論理学に基づいた古典的な西洋哲学から、意味や真理を源とする言語・メタファー・テクストに焦点を当てるポストモダン哲学への動き

2.哲学的解釈学に特有の動き

歴史的方法論だけに信頼を置くのではなく、代わりに古典テクストの意味を現代の読者へと橋渡しする戦略を提供するようなテクスト解釈理論を発展させるもの

3.20世紀初頭にドイツのユダヤ系哲学者マルティン・ブーバーとフランツ・ローゼンツヴァイクによって展開された聖書解釈学の形態

4.歴史的方法を哲学的解釈学と統合するためにフランス哲学者ポール・リクールによって提供された付加的な解釈学的戦略。この方法は「second naïveté」もしくは「ポスト・クリティカルな信仰」を創出する。

5.リクールのメタファー理論聖書における宗教言語の使用を理解するための役立つツール

コメント:Hiroshi Kita (Tohokugakuin University)

北教授によるこれまでの聖書学の学びと、フィリピンでの伝導経験を踏まえた学問としての聖書学に対する意見を、伝記的に振り返る。

スティーブン・ケプネスの略歴

スティーヴン・ケプネス特別授業「ヘルマン・コーヘンとレヴィナスの他者」(Herman Cohen and Levinas on the Other)

2018年4月26日(木)13:30−15:10(参加自由・通訳あり)明治大学駿河台キャンパス リバティタワー12階1123室