第6回 論争としての啓蒙

Post date: Jul 24, 2018 7:15:42 AM

日時:2013年6月22日(土)、23日(日)

会場:同志社大学 志高館1階 SK112室(今出川校地/烏丸キャンパス)

入場無料・事前参加申込不要

22日13時-17時:公開シンポジウム

提題者:手島勲矢(日本学術会議連携会員)

「論争としてのハシディズム—《ハスカラー》を考えるユダヤ思想史の視座」

伊藤玄吾(同志社大学)「理性・宗教・伝承—ボシュエの『世界史論』と『伝承と教父の擁護』を中心に」

後藤正英(佐賀大学) 「モーゼス・メンデルスゾーンとユダヤ啓蒙主義」

山本芳久氏(東京大学)「理性」と「伝統」:トマス・アクィナスのユダヤ人観を手がかりに」

司会: 小野文生(同志社大学)

23日14時-17時:公開講演会

講演者:Warren Zev Harvey

(Professor Emeritus, Department of Jewish Thought, The Hebrew University of Jerusalem)

(Harvey先生は中世・近代のユダヤ思想がご専門で、こちらで主要論文のタイトルが確認できます。)

講演題:「Rabbi Hasdai Crescas and Moses Mendelssohn on Beliefs and Commandments」

コメンテータ:福谷茂(京都大学)

:杉村靖彦(京都大学)

司会 :高木久夫(明治学院大学)

:後藤正英(佐賀大学)

研究発表(会費:500円〈非会員の方も聴講可〉)

22日

10:30-11:10 北村 徹(同志社大学大学院・単位取得退学)

預言者エゼキエルの祭司性 —その再評価と「反ユダヤ主義」という文脈

11:15-11:55 馬場智一(東京大学)

『全体性と無限』における無限判断

23日

9:30-10:10 阿部 望(獨協大学)

社会活動家としてのエリエゼル・ベン・イェフダー

—歴史資料としてのヘブライ語新聞検討の試み

10:15-10:55 渡名喜庸哲(東洋大学)

エマニュエル・レヴィナス「捕囚ノート」の射程

11:00-11:40 丸山空大(日本学術振興会)

ローゼンツヴァイクの回心譚を再考する

11:45-12:25 早瀬善彦(京都大学大学院)

ハンナ・アレントとレオ・シュトラウスのイスラエル建国問題に対する相違

—両者の政治哲学観の比較から

2013年6月22日(土)・23日(日)、新設して間もないレンガ造りの同志社大学・志高館において、京都ユダヤ思想学会第6回学術大会が開催されました。今回の学術大会の統一テーマは、「論争としての啓蒙」でした。第1日午前10時半より、北村徹会員「預言者エゼキエルの祭司性――その再評価と『反ユダヤ主義』という文脈」、馬場智一会員「『全体性と無限』における無限判断」の2件の個人研究発表がおこなわれ、また午後13時から17時までは、大会テーマに関する公開シンポジウム「論争としての啓蒙」がおこなわれました。公開シンポジウムでは、司会の小野文生会員より趣旨説明があった後、後藤正英会員「モーゼス・メンデルスゾーンとユダヤ啓蒙主義」、手島勲矢会員「論争としてのハシディズム――《ハスカラー》を考えるユダヤ思想史の視座」、伊藤玄吾会員「理性・宗教・伝承――ボシュエの『世界史論』と『伝承と教父の擁護』を中心に」、そして非会員のゲストとして山本芳久氏(東京大学)「『理性』と『伝統』――トマス・アクィナスのユダヤ人観を手がかりに」の4つの発表がなされました。この4つの発表はそれぞれ、ドイツ語圏におけるユダヤ啓蒙(ハスカラー)の実態を見ること(後藤)、東欧ユダヤの文脈を見ること(手島)、フランス啓蒙「前夜」におけるキリスト教の反啓蒙の論理を見ること(伊藤)、カトリックの伝統から見える啓蒙主義の問題を見ること(山本)というように、啓蒙の多様な側面に光をあて、その像を立体的に考察するための視座を提供してくれました。その後の討議でも、啓蒙の登場以後生じた、何が不変のものでありうるか/あるべきかに関する知と信仰の動揺をめぐって、活発な議論が展開されました。

第2日午前は、阿部望会員「社会活動家としてのエリエゼル・ベン・イェフダー――歴史資料としてのヘブライ語新聞検討の試み」、渡名喜庸哲会員「エマニュエル・レヴィナス『捕囚ノート』の射程」、丸山空大会員「ローゼンツヴァイクの回心譚を再考する」、早瀬善彦会員「ハンナ・アレントとレオ・シュトラウスのイスラエル建国問題に対する相違――両者の政治哲学観の比較から」という4件の個人研究発表がおこなわれました。午後14時から17時までは、高木久夫会員、後藤正英会員による司会のもと、ゼーヴ・ハーヴィ教授(ヘブライ大学)による公開講演会「Hasdai Crescas and Moses Mendelssohn on Beliefs and Commandments」がおこなわれました。これは、ラビ・ハスダイ・クレスカスとモーゼス・メンデルスゾーンにおける信仰と命令(ミツヴァ)の関係を主題化し、両者それぞれの信仰と命令に関する認識がどのようなものだったのか、そしてメンデルスゾーンはクレスカスのどの部分を受け継ぎ、どこから分岐するのかについて周到かつ明快な論証をおこなったもので、たいへん刺激的でした。講演後の質疑応答では、司会の高木、後藤両会員がコメントをおこない、また非会員のゲスト・コメンテーターとしてお招きした福谷茂氏(京都大学)、杉村靖彦氏(京都大学)らの真摯で鋭いコメントにより、たいへん活発な議論が展開されました。なお、シンポジウムと公開講演会における発表とコメントについては、次号学会誌において詳細な報告がなされる予定です。最後になりましたが、運営委員など大会スタッフ、発表してくださった会員、そして参加してくださった会員・非会員の皆さまのおかげで、盛況のうちに無事大会を終えることができました。記して感謝申し上げます。(小野文生)