HUB-FSプログラムの数学科目の関連性

投稿日: Feb 05, 2018 4:23:57 AM

HUB-FSプログラムの数学科目の関連性についてざっくりとまとめておきます。

基本的には、どのような分野においても必要になってくる入門的な数学(微分積分・線形代数・初歩の確率・統計)と、計量系科目をきちんと理解するための土台となる数学(確率論・数理ファイナンス)に大きく分かれます。

2020年度の授業に完全に対応しているわけではないですが、大まかに、どの授業でどのような数学や統計の用語や概念が登場するかを表形式で整理した「数学・統計の概念・用語と科目の対応関係」を中川の判断で少し修正したものを参考までにアップしておきました(こちら)。

そのなかで数学との関連性の強い5つの科目について、ざっと内容を紹介しておきます。

金融数理入門(春学期・水曜1限)

主たるテーマは「微分とその応用」ということになります。基礎科目の「ファイナンス理論の基礎」で必須となります。入学して直後に修得する必要がある内容になります。

2017年度のシラバスを参考にすると、より具体的には、関数の極限、1変数関数の微分とその応用(最大・最小、テーラー展開など)、多変数関数に対する偏微分とその応用(ヘッセ行列など)、ラグランジュ未定乗数法、といったことを扱うようです。

線形モデル入門(春学期・土曜)

主たるテーマは「単回帰分析」という統計の内容ですが、そのために最低限必要となるベクトルや行列、確率についても学習することになります。これらの知識をもとに、基礎科目の「金融データ分析の基礎」でより深く学習することになります。これも入学して直後に修得する必要がある内容になります。

2017年度のシラバスを参考にすると、より具体的には、ベクトルと行列の基礎知識、確率と統計の基礎知識、単回帰分析の理論と計算方法、といったことを扱うようです。実際にはこれらをRというフリーソフトを使いながら学習するようです。

金融数理(春夏学期・金曜1限)

主たるテーマは「金融工学,数理ファイナンスに必要な基礎的な数学(特に初等確率論)」ということになります。ただし、いわゆる計量系の専門科目の全てに必要になってくる内容と言えます。

高校数学の復習も予定されていますが、どちらかというと「金融数理入門」や「線形モデル入門」ほど基本的な内容から学習を始めなくてもよいM1の人や、1年目に学習した確率や統計の内容をよりきちんと理解したいM2の人向けの内容と言えます。

金融数理の基礎(秋冬学期・火曜1限)

主たるテーマは「数理ファイナンスの離散時間モデルをきちんと理解するのに必要な基礎的な数学(特に集合論・測度論ベースの確率論・離散時間の金融市場モデル(特に2項モデル)」ということになります。

派生証券理論(秋冬学期・金曜1限)

主たるテーマは「金融デリバティブの価格の計算」という金融工学・数理ファイナンスの中心的テーマということになります。

基礎科目「コンピューテーショナル・ファイナンス」で触れられた内容の数学的部分をよりきちんと理解したり、基礎科目「金融数理の基礎」で取り上げる離散時間モデル(2項モデル)でのデリバティブ価格理論を、連続時間モデルの枠組みで理解したりするために必要な内容となっています。

※「金融数理」「金融数理の基礎」「派生証券理論」の3つは、金融工学や数理ファイナンスを専門的に学習したい人には全て履修してほしい内容です。内容的に関連性が強いですが、それぞれ独立に学習することが可能ですし、履修の順序は特に問いません。

理想を言えば、M1の秋冬学期に「金融数理の基礎」を履修したうえで、M2の春夏学期に「金融数理」、M2の秋冬学期に「派生証券理論」という順序が望ましいと思います。2021年度以降に同様の編成で開講されるとは現時点では言えません。

ですので、入学してすぐのM1春夏学期に「金融数理」、次のM1の秋冬学期に「金融数理の基礎」と「派生証券理論」を同時履修する、ということも少し大変ですが、数学に少し自信ありという人であれば履修可能なカリキュラムと言えます。