平成20年度

【平成20年度】

【ミッション・目標】

当研究部では、受精からヒトとして成長する過程で生じる疾患の成立機序の解明とその予防、診断・治療法の開発をめざした研究を行っている。 卵、精子、幹細胞を主な研究対象としており、さらに、生殖腺、胎盤、心臓、神経系、骨、軟骨、脂肪組織を研究対象に加え、幹細胞の機能を調節する分子機構 の解明と臨床応用をめざした一連の研究を展開している。これらの基盤的研究をさらに臨床研究に進展させることにより、生殖医療ならびに再生医療に貢献する ことが当研究部の使命であると考える。

1.「いのちの萌芽(受精)」のエビデンスに基づいた考え方の提示

受精の膜融合過程は、精子の卵細胞膜への接着、融合、多精拒否からなる一連の現象である。本研究ではその分子メカニズムの解明に挑戦するた め、膜融合過程に関わる因子群を明らかにし、その挙動を可視化することにより、受精における膜融合が、時間的・空間的にどのように形成されるのかを解析し てきた。この研究から、不妊治療への道が開かれるとともに、受精以外の膜融合にも新しい概念を提案することができると考えている。

2.ヒト胚性幹細胞の樹立

国立成育医療センターでは、ヒトES細胞に関する医学研究が、生命倫理及び医の倫理に基づき、また「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指 針」(平成19年5月23日全部改正文部科学省告示第87号)に基づき、適正に行なわれるよう、ヒトES細胞研究倫理審査委員会(以下「倫理審査委員 会」)を設置し、ヒトES細胞樹立研究、使用研究及び細胞の分配に関してそれぞれ規定を定めている。現在、計画している研究が国の指針に基づいた適正なも のであるか倫理審査委員会で慎重に審査を行っている。今後は国の指針を遵守し我々の研究がヒト生命の萌芽の滅失の上に成り立っていることを常に認識し厳粛 にヒトES細胞研究を行っていく。

3.再生医療・細胞治療

ヒト組織幹細胞を生体外で培養し、増殖させることに成功しており,幹細胞の分離・同定を行っている。細胞の生体外における培養技術とそれによ る細胞数の確保とそれに続く分離技術は、再現性の高い生物実験系に基づいた細胞の基盤解明によってのみ可能となるものである。

4.成育バイオリソースの構築

国立成育医療センターでは、病院内の整形外科、産婦人科、眼科、形成外科と研究所の連携により、骨髄、臍帯血、胎盤、子宮内膜を細胞供給源と して研究を遂行している。臨床研究を前提としたad hoc委員会を設立し、臨床試験研究への具体的なロードマップの作製、医療に提供できる新たなヒト細胞の分離・培養法の開発、ヒト血清ならびにヒト液性因 子のみからなる培養法の開発を行っている。

【前年の評価委員会の指摘に対する改善点】

詳細に評価していただき誠にありがとうございました。頂きました貴重なご意見、ご指摘をもとに、更なる成育医療への貢献を常に念頭に置き、研 究部一丸となってより建設的に研究を進め、社会へ貢献していきたいと存じます。

昨今社会的にも更なる期待が高まっている幹細胞を用いた再生医療に関して、私たち研究部はヒト間葉系細胞やヒトES細胞に関して近い将来の再 生医療を目指し基礎研究を進めて参りました。成育医療センター病院と共同により、倫理手続きを適切に行い、周産期組織・小児期組織に由来する世界的にも貴 重な細胞バンクとして成育バイオリソースプロジェクトを進めてきました。成育バイオリソースに由来する細胞が貴重な再生医療ソースとなることを報告してき ました。これまでの成果を前向きに評価して頂き誠にありがとうございます。間葉系細胞に関しましては、現在分子レベルで細胞を解析し確かな科学的データに 基づく細胞治療、細胞移植への応用を展開しております。細胞移植時の免疫拒絶反応に関しては、免疫抑制剤投与以外の可能性としてある種のサイトカインが誘 導する免疫抗原発現を制御した新たな移植免疫拒絶の方法に関する基礎研究を進めております。受精に関しましては、膜蛋白質CD9の解析を中心として受精異 常の発症機構の解明、不妊治療法の解析に取り組んでおります。今後は、ヒトでの臨床応用に向けた検討を積極的に行って参ります。ヒトES細胞樹立研究は、 評価委員のみなさんのご指導のもと研究所全体が科学的研究遂行、生命倫理に関する対応が評価され平成19年3月5日に文部科学大臣の確認を頂きました。鋭 意、施設整備にセンター全体で取り組み、素晴らしい設備のヒトES細胞樹立施設が完成いたしました。将来の再生医療を見据えた、異種由来成分を排除したヒ トES細胞樹立培養システムの構築は世界的にも待ち望まれております。ここ、成育医療センターからヒトES細胞に関する重要な情報を世界へ発信して行きた いと思います。ご指摘頂いたヒトES細胞に関しての共同研究に関しましては、ハーバード大学幹細胞研究所と共同研究を遂行しており、世界最先端の知見をも れなくくみ取り、成育医療センターでのヒトES細胞樹立に役立てていきたいと考えております。ヒトES細胞は、ヒト細胞において受精卵を除き一番高い分化 多能性をもつ細胞で、再生医療に応用が期待されております。米国では、トランスレーショナルリサーチがNIHの支持のもと進められており、FDAの認可の もと臨床研究が行われようとしています。昨今話題のiPS細胞はウイルスベクターを導入しているため安全性に関して非常に憂慮されているため、この領域の 再生医療ではヒトES細胞が先導することは間違いありません。私たちは、安全で安心できるヒトES細胞を提供するために今後も基礎研究を進めてまいりたい と思います。ES細胞を用いた治療では、小児難治性疾患を当初より念頭に置いています。特に、先天性代謝異常症に関しては、マウスによる基礎研究の成果は 非常に有用性を示す結果を得ています。有効な治療法がない患児やその家族のためにも、研究成果が還元できるように頑張っていきたいと考えております。

【研究プロジェクト】

1.受精の膜融合を制御する分子メカニズムの解明と不妊治療への応用

受精は2つの生殖細胞、すなわち精子と卵子が“細胞融合”することよって新しいゲノムの組み合わせを持った次世代が誕生する最初の過程であ る。そのため、受精メカニズムの破綻は単なる細胞の機能不全を超えて、生物種の存続にかかわる問題になってしまう。一方、受精の基礎研究には長い歴史があ るにもかかわらず、連続した複雑な過程を経ることからいまだに全容解明には至っていない。特に、精子と卵子の接着から膜融合に至る過程については、今まで 考えられていた概念が完全に否定されてしまったため、卵子の細胞膜に存在すると仮定される精子レセプターも不明のままである。受精のメカニズムを解明する ことは、ひとの「いのち」について考えるきっかけとなる。また、受精は、2つの細胞間で起こるシンプルな細胞融合であるため、他の細胞融合(筋線維の形 成、骨形成、感染症など)の分子メカニズムを解明するためのモデル系にもなりうる。

[研究体制]

部長 梅澤明弘

室長 宮戸健二

共同研究員、中村彰宏、竹澤侑希、井澤治彦、吉田恵一

[共同研究体制]

大阪大学 微生物病研究所(膜融合の分子メカニズムに関する研究)

千葉大学 医学部(受精における生殖細胞の形態学的研究)

2.卵の老化と胚発生メカニズムの解明→生殖の営みへの理解

生物には寿命がある。哺乳動物は、その寿命内でも次世代へつなぐ生殖期間は限られている。現在わが国は、出生率(合計特殊出生率)が1.3を 下回り、「超少子化国家」と位置づけられている。一方で、不妊症治療特に生殖補助医療(ART)享受による出生児数は総出生児数の1.5%を超え着実に増 加している。一方女性の就業意欲と労働力率は上昇し、この社会・経済の変化は晩婚化などのライフスタイルの変化を来している昨今、加齢による生殖機能の不 可逆的低下に早急に対応する必要が出てきた。その原因の一端に加齢による卵子の質の低下と強く関連していることが示唆されている。女性は限られた生殖期間 があり、つまり“生殖寿命”は卵細胞が加齢することでもある。これらの事象を分子レベルで解明することは、これまで対象が卵子という微量のサンプルのため 基礎研究システムを構築することが大きな問題であったが、我々は実験動物マウスを用いES細胞と連関させて解析する新規的なアプローチをこの分野に持ち込 み有用な知見を得てきている。近年、米国NIHでは、卵子の質と出生児の健康に関する大規模臨床研究と基礎研究プロジェクトが進行している。本領域は、国 際的にも重要課題とされている。

[研究体制]

部長 梅澤明弘

室長 阿久津英憲

共同研究員 山田満稔、町田正和、浜田亜紀、佐藤星子

[共同研究体制]

慶應義塾大学 医学部産婦人科学教室(卵子の老化に関わる因子の同定)

3.ES細胞及びiPSの樹立に関わる技術の確立と機能解析

ヒトES細胞は、体を構成するすべての細胞へと分化できる多能性を保持し、増殖し続けることができる極めてユニークな細胞であり、細胞移植の 有用なソースとして再生医療への応用が期待されている。しかしながら、ヒトES細胞の樹立及び培養維持には異種由来の物質を含むため、安全な次世代医療と してのヒトES細胞には異種由来物質を排除した完全ヒト型培養システムの構築が不可欠である。霊長類ES細胞を使用し、基礎研究を進めハーバード大学の協 力のもと着実に進めている。ヒトES細胞樹立研究では、「胚の滅失」が不可欠な行為であるため、常に生命の萌芽について深く認識し慎重に研究を遂行してい く。

胚以外の細胞よりヒトES細胞と類似の性質をもつ人工多分化能性(iPS)細胞が樹立されることが報告され、世界的にも生命科学領域のブレイ クスルーとして大きな注目を集めている。ヒト多能性幹細胞の再生医療や創薬への応用を目指し、ヒトiPS細胞の基盤研究を推進する。

[研究体制]

部長 梅澤明弘

室長 阿久津英憲

室長 宮戸健二

共同研究員 三浦巧、牧野初音、豊田雅士、深渡瀬嘉洋、山田満稔、町田正和、浜田亜紀

[共同研究体制]

Harvard University, Harvard Stem Cell Institute(ES細胞の樹立に関わる技術)

4.ヒト幹細胞の分化と再生医療

現在、ヒト幹細胞を用いた心不全に対する細胞治療が臨床で始動しているが、間葉系細胞の心筋分化のメカニズムは不明であり、骨髄細胞を用いる ことがベストな方法であるか疑問の余地がある。我々の研究室では、骨髄細胞に比べ心筋に高率に分化するヒト幹細胞を有し、共培養系を用いることで、生理的 に機能する心筋をin vitroで誘導させる技術を有する。本研究は、細胞治療に用いる細胞源となる組織の選択、細胞の調整という臨床に即した課題と、心筋分化のメカニズムに 迫るものであり、基礎・臨床を包括するまさにトランスレーショナルリサーチといえる。今後も大きな資源が投入されるであろう再生医療分野において、我が国 の知的財産を確立する上でも重要な役割を果たす可能性を有する。

[研究体制]

部長 梅澤明弘

共同研究員 牧野初音、上大介、石井隆雅

[共同研究体制]

国立循環器病センター(心筋分化に関わる液性因子の同定)

東京大学 薬学部(幹細胞より分化した心筋細胞の規格設定)

慶應義塾大学 医学部病理学教室(幹細胞より分化した心筋細胞の規格設定)

慶應義塾大学 医学部呼吸循環器内科学教室(ヒト幹細胞の心筋組織への分化と細胞移植法)

京都大学 再生医科学研究所(胚性幹細胞と体性幹細胞の融合研究)

東京大学大学院 工学研究科(生分解性ポリマーの提供)

5.先天代謝異常に対する幹細胞治療法の開発に関する研究

ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis: MPS)は、ムコ多糖を分解するライソゾーム酵素の先天的欠損により、全身にグリコサミノグリカンが蓄積し、ガルゴイ様顔貌、骨変形、肝脾腫、呼吸障害、 心臓弁膜症、角膜混濁、難聴、精神運動発達遅滞などの多彩な症状を呈する遺伝性疾患である。欠損している酵素によりI型からVII型の病型に分類される。 症状は進行性で、早いもので10歳頃までに死亡する予後不良な疾患である。治療法として骨髄移植、酵素補充療法があるが、骨髄移植では重篤な副作用 (GVHDや生着不全に伴う重症感染症)が問題となる。酵素補充療法は効果が一過性であるため頻回投与せざるを得ず、莫大な費用がかかり、定期的な通院を 一生涯続ける必要がある上、角膜や脳や軟骨などのように血流を介する方法では到達できない場所がある。そのため、安全で有効な新規治療法の開発が急務であ る。我々の研究室ではVII型の酵素であるβグルクロニダーゼが欠損しているマウス(MPS-VII型マウス)を有しており、幹細胞移植を用いた治療法の 開発研究を行っている。

[研究体制]

部長 梅澤明弘

共同研究員 田中藤樹、右田王介

[共同研究体制]

中外製薬(株)(先天代謝異常に対する幹細胞治療法に対する前臨床研究)

6.成育バイオリソース-ヒト臍帯血・子宮内膜・月経血・胎盤・軟骨・骨髄・眼球由来幹細胞-の単離技術の開発、多分化能の同定

ヒト由来組織(成育バイオリソース:月経血、臍帯血、末梢血、胎盤、子宮内膜、指、眼球、軟骨等)のヒト間葉系細胞についての維持管理・品質 管理・保存に関する技術革新を行う。我々の樹立した細胞株を日本国内の公的細胞バンク(独立行政法人 医薬基盤研究所・独立行政法人 理化学研究所)に登 録し、他の研究施設より要請があった場合に高い安全性を有し、標準化された培養システムによって増殖する間葉系細胞を提供できる体制を構築する。また、バ ンク化された細胞自身が多分化能を保持しており、細胞の遺伝子発現データベース・分化形質・ゲノム情報を伴った提供システム構築ならびに技術革新は、再生 医療、がん、循環器疾病への基盤資源となり、科学立国を目指す社会への貢献度は極めて高い。

[研究体制]

部長 梅澤明弘

室長 阿久津英憲

共同研究員 牧野初音、豊田雅士、三浦巧、加瀬ゆか、山田満稔、美留町潤一、町田正和、浜田亜紀、永渕七菜子、

[共同研究体制]

国立成育医療センター 研究所移植・外科研究部(臍帯血に関する研究)

国立成育医療センター 周産期診療部(臍帯血・胎盤・子宮内膜に関する研究)

国立成育医療センター 整形外科 (多指症に由来する細胞の樹立に関する研究)

国立がんセンター研究所 (幹細胞の寿命延長に関する研究)

東京医科大学病理学教室 (細胞培養法における液性因子の有効性に関する研究)

独立行政法人産業技術総合研究所 (cGMPに準拠した細胞培養法に関する研究)

慶應義塾大学 医学部整形外科学教室(ヒト幹細胞と成長-ヒト骨軟骨・成長板の解析-)

慶應義塾大学 医学部耳鼻科学教室(先天性難聴に対する細胞移植)

国立精神・神経センター(骨格筋に関する情報提供)

7.安全で高品質な細胞提供技術の開発

再生医療、細胞移植に関し、現在「ヒト幹細胞等を用いる臨床研究に関する指針(平成18年9月)」に関する議論が厚生労働省科学技術部会ヒト 幹細胞を用いた臨床研究のあり方に関する専門委員会およびヒト幹細胞治療臨床研究指針の策定に関するワーキンググループで進められている。細胞移植が具体 的な治療法として確立されつつあるが、実験的な治療が日常的な治療法の選択肢となるためには、治療に用いる細胞に関して再現性を保証するための基準がぜひ とも必要である。現在、ヒト細胞の明確なバリデーション方法は、国内外で模索されており、一定のコンセンサスは得られていない。細胞自体を生体内マイクロ デバイスとして利用する新たな治療戦略を現実するために必要なステップとして、1)細胞の分離培養技術の確立、2)細胞のカタログ化、3)細胞品質管理の 標準化がある。世界に向けて有用なヒト幹細胞を発信してゆくことは重要である。国立成育医療センター研究所の施設に有する機関内細胞プロセッシング・セン ターにおいて、日本国内の研究施設より要請があった場合に高い安全性を有し、標準化された培養システムによって増殖する間葉系細胞を提供する。間葉系細胞 を用いた細胞治療に関する倫理性および安全性のdue processを提示することになり、この提示された過程に従い、提供医療施設を増やしていくことになる。現在の間葉系細胞培養に使用されている条件は、 ウシ血清、ウシ胎児血清、ならびに動物細胞、大腸菌等で作製されたヒト増殖因子が利用されており、外来種由来感染源の混入は否定できない。このため治療法 としての安全性、有効性の基準の確立は急務である。

[研究体制]

部長 梅澤明弘

室長 阿久津英憲

共同研究員 加瀬ゆか、三浦巧、吉橋久男、山田満稔、美留町潤一、町田正和、浜田亜紀、永渕七菜子

[共同研究体制]

国立成育医療センター 研究所免疫・アレルギー研究部(DNAマイクロアレイ解析とバイオインフォマティクス研究)

国立成育医療センター 研究所発生・分化研究部(幹細胞に対するモノクローナル抗体樹立・解析)

国立成育医療センター 不妊治療科(幹細胞に対する規格設定)

国立長寿医療センター研究所(食育を念頭においた骨細胞の規格設定)

(株)サミットグライコリサーチ (幹細胞に対する規格設定)

【研究の概要】

1.受精の膜融合を制御する分子メカニズムの解明と不妊治療への応用

昨年度はCD81遺伝子欠損マウスの解析を卵子の機能を中心に行った。CD81は膜4回貫通型蛋白質スーパーファミリー(テトラスパニン)に 属する膜蛋白質である。CD81はT細胞の増殖に対して抑制効果のある抗体の抗原として単離された。CD81遺伝子欠損マウスは当初の予想とは異なり、T 細胞の増殖異常を示さず、B細胞が関わる免疫応答に異常を示すことが報告されている。CD81は卵子で発現していることが報告されているが、CD81の卵 子における機能は不明であった。そこで、CD81欠損雌マウスより卵子を採取して機能異常を詳細に検討した。その結果、CD81欠損卵子は受精過程に異常 を示すことを明らかにした(Mol Reprod Dev. 2008)。CD81欠損雌マウスからは野生型と同等数の卵子が排卵し、第2減数分裂中期に停止した正常な状態で排卵することが確認された。しかし、 CD81欠損卵子は精子との融合能に異常を示すことが体外受精により確認された。CD9とは局在が異なるCD81の機能解析は、受精の分子機構を解明する ための新たな手がかりとなると考えられる。

本年度は、CD9欠損マウスの受精異常を更に解析した結果、膜融合に関わる新しいメカニズムが存在することが明らかとなった。今までの研究か ら、CD9欠損卵ではほとんど受精が起こらず、多数の精子が透明帯と卵細胞膜のすき間に溜まった状態になることが観察され、透明帯を人為的に除去した CD9欠損卵に精子を加えると、精子は卵細胞膜には結合するが、融合はきわめて稀にしか起こらないことがわかっている。すなわち、CD9欠損卵では、精子 の透明帯への結合、透明帯の通過、卵細胞膜への結合は起こるが、続いて起こるべき膜融合がほとんど観察されず、その段階で精子が止まったままの状態にな る。抗CD9抗体によってもCD9欠損卵とよく似た膜融合の異常が観察されたことから、CD9は卵細胞膜の表面で精子側の因子との相互作用に何らかの役割 を担っており、膜融合過程のいずれかのステップに必須であると考えられている。本年度は、受精の膜融合過程でのCD9の機能を検討するため、CD9のN末 端にEGFPを融合させた蛋白質を卵子特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製し、受精前後でのCD9 の経時的な局在変化について調べた。その結果、CD9を含む膜構造体(エクソソーム、exosomeと命名)が卵から放出され、この膜構造体が精子の融合 活性を制御することを明らかにした(PNAS, 2008)。

2.卵の老化と胚発生メカニズムの解明と生殖医療への応用

初期胚の網羅的遺伝子発現解析より初期胚発生に特異的に係わる新規遺伝子群と個体の加齢にともなって卵子で大きく変動する遺伝子群を同定して きた。今年度は、それら重要な遺伝子群のin silicoからin vitro及びin vivo解析に発展させ、機能解析を行ってきた結果、特定の初期胚特異的遺伝子がその後の胚発生にも重要な機能をもつことなど新たな重要な知見を獲得して きた。更に研究を展開することで謎が多い初期胚発生に関わる分子メカニズム解明に新たな光を当てることができ、原因不明の機能性不妊の一端を明らかにする 可能性がある

加齢と卵子の質低下との関連は指摘されてきたが、本質的なメカニズムは不明であった。我々は、これまでの加齢卵子の網羅的遺伝子発現解析デー タや加齢実験動物マウスを用いた加齢卵子由来ES細胞解析システムを構築し、加齢卵子の機能低下について分子レベルでの解析を行える系として有用である成 果を得てきた。

3.ES細胞及びiPS細胞の樹立に関わる技術の確立と機能解析

これまで行ってきたマウスES細胞樹立及び無血清化培地システム開発をもとに、霊長類(カ ニクイサル)ES細胞を用いて、異種由来物を完全に排除した完全ヒト型培養維持システム構築に関する研究を行っている。ES細胞の検定システムとして遺伝 子発現、タンパク質及び移植による多能性解析全ての運用系を構築してきた。今年度は、既に確立したヒトフィーダー細胞検定システムを応用し、ヒトES細胞 に適したオリジナルのヒトフィーダー細胞株を樹立し、ヒト幹細胞の未分化維持に働く分子機能の解析を行ってきている。

ES細胞の未分化維持機能に関して、これまで必要不可欠と報告されてきた分子の認識に関して、ノックアウトマウスを用い未分化維持機構に関す る新たな知見を得てきた。

また、当研究部が中心となって行う「ヒトES細胞の樹立計画」は、当センター倫理審査委員会及び胚提供機関倫理審査委員会において科学的及び 倫理的妥当性について総合的に厳正に慎重に審査され、平成18年6月8日に承認を受けた。最終的に、平成19年3月5日には、文部科学大臣より確認を受 け、国内2例目のヒトES細胞樹立研究の認可となった。国の指針を遵守しヒト生命の萌芽の滅失の上に成り立っていることを常に認識し厳粛に行っていく。ヒ トES細胞樹立が円滑に遂行されるため、胚提供機関の追加申請等に関して関係諸機関と連携をとり遂行している。このヒトES細胞樹立研究が最大限有効に行 われるように基礎研究を進めている他に、ヒトES細胞に関する培養技術や知見を海外の先端の研究所といち早く共有できるようにハーバード大学幹細胞研究所 と共同研究を含めた人的交流を積極的に行ってきている。

2007年11月に京都大学の山中教授がヒトiPS細胞の樹立を報告して、ヒトiPS細胞の生命科学への貢献が大きく日本のみならず、世界的 にも大変な注目を集めている。当研究部は、これまでのヒト体性幹細胞及びES細胞研究の基盤を応用し、ヒトiPS細胞を樹立することに成功し、その作製方 法と機能解析システムを構築することができた。現在、京都大学山中教授やiPS細胞研究拠点機関と連携をとりつつ、本邦のiPS細胞研究の推進に大きく貢 献している。

4.ヒト幹細胞の心筋組織への分化と細胞移植法の開発

ヒト組織由来の幹細胞を用いて心筋細胞を作製し、心筋細胞移植のドナー細胞を開発することを目的とする。昨年度までに胎盤、子宮内膜、臍帯 血、臍帯に関してその採取・研究利用にあたり、倫理委員会の審査を経た組織を用いて、同様の検討を行った。現在、間葉系細胞の心筋分化にはマウス心筋との 共培養が必要であり、マウス心筋からの分泌物質、物理的刺激、細胞融合などの要素が考えられている。今年度は、それらの候補物質に焦点をしぼり、Gene Chipによる網羅的遺伝子解析をおこない心筋形成を促進するタンパク質としてグレムリン(Grem1)を同定することに成功し、国際専門誌に報告した。

5.先天代謝異常に対する幹細胞治療法の開発に関する研究

先天代謝異常を対象として骨髄間葉系細胞を含めた体性幹細胞を利用した細胞治療法の確立に向けた基盤研究を行う。さらに、これらの幹細胞を臨 床応用するための安全かつ効果的な培養システムの確立をめざす。ムコ多糖VII型モデルマウスを用いた細胞治療法の安全性と治療効果を検討した。新規のヒ ト細胞供給源となるヒト細胞培養システムとして、月経血、臍帯血より間葉系細胞の培養を開始しており、それらが複数の分化形質を示すことを明らかにした。 また、胎児期における細胞移植法についても検討を行い、妊娠マウスを用いて、胎児期の免疫寛容を利用したドナー細胞の種類による治療効果の違いについて検 討を開始した。

6.成育バイオリソース-ヒト臍帯血・子宮内膜・月経血・胎盤・軟骨・骨髄・眼球由来幹細胞-の単離技術の開発、多分化能の同定

2008年の生物資源寄託実績として、医薬基盤研究所に胎盤由来細胞2件・iPS様細胞9件、理化学研究所に羊膜由来細胞6件・胎盤由来細胞 3件である。また、成育バイオリソースが将来の再生医療ツールとして有用な性質を持つことを国際専門誌、国際学会に報告し、国内・外のメディアにも取り上 げられてきた。成育バイオリソースの有用性について社会に示すことができた。

具体的には爪母、靭帯、表皮、真皮、皮下脂肪、皮質骨、海面骨、硝子軟骨、骨膜、骨髄、肋軟骨、肋軟骨膜、耳介軟骨、耳介皮下脂肪、網膜、強 膜、虹彩、角膜、子宮内膜、子宮筋、臍帯、臍帯動脈、臍帯静脈、臍帯血、胎盤、羊膜、絨毛膜板、絨毛、脱落膜に由来する細胞を樹立した。

7.安全で高品質な細胞提供技術の開発

前年度までに、CPC(セル・プロセッシング・センター)を使用したヒト幹細胞の培養ならびに臨床研究への供給を課題として、研究部横断的な 推進体制を構築した。手順書の整備を完了し、前実験として全ての手順の確認を行い、詳細に検討を行った。今年度は、東京医療センターとの共同で細胞移植医 療を行った。

【研究業績】

1.論文発表

[原著論文(欧文)]

1. Hamatani T, Yamada M, Akutsu H, Kuji N, Mochimaru Y, Takano M, Toyoda M, Miyado K, Umezawa A, Yoshimura Y. What can we learn from gene expression profiling of mouse oocytes? Reproduction. 2008;135(5):581-592.

2. Hida N, Nishiyama N, Miyoshi S, Kira S, Segawa K, Uyama T, Mori T, Miyado K, Ikegami Y, Cui C, Kiyono T, Kyo S, Shimizu T, Okano T, Sakamoto M, Ogawa S, Umezawa A. Novel cardiac precursor-like cells from human menstrual blood-derived mesenchymal cells. Stem Cells. 2008;26(7):1695-1704.

3. Inaoka Y, Yazawa T, Mizutani T, Kokame K, Kangawa K, Uesaka M, Umezawa A, Miyamoto K. Regulation of P450 oxidoreductase by gonadotropins in rat ovary and its effect on estrogen production. Reprod Biol Endocrinol. 2008;6(1):62.

4. Inoue S, Imamura M, Umezawa A, Tabata Y. Attachment, proliferation and adipogenic differentiation of adipo-stromal cells on self-assembled monolayers of different chemical compositions. J Biomater Sci Polym Ed. 2008;19(7):893-914.

5. Ishii K, Yoshida Y, Akechi Y, Sakabe T, Nishio R, Ikeda R, Terabayashi K, Matsumi Y, Gonda K, Okamoto H, Takubo K, Tajima F, Tsuchiya H, Hoshikawa Y, Kurimasa A, Umezawa A, Shiota G. Hepatic differentiation of human bone marrow-derived mesenchymal stem cells by tetracycline-regulated hepatocyte nuclear factor 3beta. Hepatology. 2008;48(2):597-606.

6. Kami D, Shiojima I, Makino H, Matsumoto K, Takahashi Y, Ishii R, Naito AT, Toyoda M, Saito H, Watanabe M, Komuro I, Umezawa A. Gremlin enhances the determined path to cardiomyogenesis. PLoS ONE. 2008;3(6):e2407.

7. Katsuki Y, Sakamoto K, Minamizato T, Makino H, Umezawa A, Ikeda MA, Perbal B, Amagasa T, Yamaguchi A, Katsube K. Inhibitory effect of CT domain of CCN3/NOV on proliferation and differentiation of osteogenic mesenchymal stem cells, Kusa-A1. Biochem Biophys Res Commun. 2008;368(3):808-814.

8. Kawakita A, Sato K, Makino H, Ikegami H, Takayama S, Toyama Y, Umezawa A. Nicotine acts on growth plate chondrocytes to delay skeletal growth through the alpha7 neuronal nicotinic acetylcholine receptor. PLoS ONE. 2008;3(12):e3945.

9. Miyado K, Yoshida K, Yamagata K, Sakakibara K, Okabe M, Wang X, Miyamoto K, Akutsu H, Kondo T, Takahashi Y, Ban T, Ito C, Toshimori K, Nakamura A, Ito M, Miyado M, Mekada E, Umezawa A. The fusing ability of sperm is bestowed by CD9-containing vesicles released from eggs in mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008;105(35):12921-12926.

10. Miyagawa Y, Okita H, Nakaijima H, Horiuchi Y, Sato B, Taguchi T, Toyoda M, Katagiri YU, Fujimoto J, Hata J, Umezawa A, Kiyokawa N. Inducible expression of chimeric EWS/ETS proteins confers Ewing's family tumor-like phenotypes to human mesenchymal progenitor cells. Mol Cell Biol. 2008;28(7):2125-2137.

11. Mohri Y, Kato S, Umezawa A, Okuyama R, Nishimori K. Impaired hair placode formation with reduced expression of hair follicle-related genes in mice lacking Lgr4. Dev Dyn. 2008;237(8):2235-2242.

12. Morito T, Muneta T, Hara K, Ju YJ, Mochizuki T, Makino H, Umezawa A, Sekiya I. Synovial fluid-derived mesenchymal stem cells increase after intra-articular ligament injury in humans. Rheumatology (Oxford). 2008;47(8):1137-1143.

13. Nimura A, Muneta T, Koga H, Mochizuki T, Suzuki K, Makino H, Umezawa A, Sekiya I. Increased proliferation of human synovial mesenchymal stem cells with autologous human serum: comparisons with bone marrow mesenchymal stem cells and with fetal bovine serum. Arthritis Rheum. 2008;58(2):501-510.

14. Oikawa K, Yoshida K, Takanashi M, Tanabe H, Kiyuna T, Ogura M, Saito A, Umezawa A, Kuroda M. Dioxin interferes in chromosomal positioning through the aryl hydrocarbon receptor. Biochem Biophys Res Commun. 2008;374(2):361-364.

15. Segawa Y, Muneta T, Makino H, Nimura A, Mochizuki T, Ju YJ, Ezura Y, Umezawa A, Sekiya I. Mesenchymal stem cells derived from synovium, meniscus, anterior cruciate ligament, and articular chondrocytes share similar gene expression profiles. J Orthop Res. 2008.

16. Seko Y, Azuma N, Takahashi Y, Makino H, Morito T, Muneta T, Matsumoto K, Saito H, Sekiya I, Umezawa A. Human sclera maintains common characteristics with cartilage throughout evolution. PLoS ONE. 2008;3(11):e3709.

17. Shiraki N, Yoshida T, Araki K, Umezawa A, Higuchi Y, Goto H, Kume K, Kume S. Guided differentiation of embryonic stem cells into Pdx1-expressing regional-specific definitive endoderm. Stem Cells. 2008;26(4):874-885.

18. Sullivan S, Ichida JK, Umezawa A, Akutsu H. Elucidating nuclear reprogramming mechanisms: taking a synergistic approach. Reprod Biomed Online. 2008;16(1):41-50.

19. Takeda Y, He P, Tachibana I, Zhou B, Miyado K, Kaneko H, Suzuki M, Minami S, Iwasaki T, Goya S, Kijima T, Kumagai T, Yoshida M, Osaki T, Komori T, Mekada E, Kawase I. Double deficiency of tetraspanins CD9 and CD81 alters cell motility and protease production of macrophages and causes chronic obstructive pulmonary disease-like phenotype in mice. J Biol Chem. 2008;283(38):26089-26097.

20. Tanigawa M, Miyamoto K, Kobayashi S, Sato M, Akutsu H, Okabe M, Mekada E, Sakakibara K, Miyado M, Umezawa A, Miyado K. Possible involvement of CD81 in acrosome reaction of sperm in mice. Mol Reprod Dev. 2008;75(1):150-155.

21. Tokunaga A, Oya T, Ishii Y, Motomura H, Nakamura C, Ishizawa S, Fujimori T, Nabeshima Y, Umezawa A, Kanamori M, Kimura T, Sasahara M. PDGF receptor beta is a potent regulator of mesenchymal stromal cell function. J Bone Miner Res. 2008;23(9):1519-1528.

22. Yazawa T, Uesaka M, Inaoka Y, Mizutani T, Sekiguchi T, Kajitani T, Kitano T, Umezawa A, Miyamoto K. Cyp11b1 is induced in the murine gonad by luteinizing hormone/human chorionic gonadotropin and involved in the production of 11-ketotestosterone, a major fish androgen: conservation and evolution of the androgen metabolic pathway. Endocrinology. 2008;149(4):1786-1792.

23. Zhu W, Shiojima I, Ito Y, Li Z, Ikeda H, Yoshida M, Naito AT, Nishi J, Ueno H, Umezawa A, Minamino T, Nagai T, Kikuchi A, Asashima M, Komuro I. IGFBP-4 is an inhibitor of canonical Wnt signalling required for cardiogenesis. Nature. 2008;454(7202):345-349.

24. Chen A, Egli D, Niakan K, Deng J, Akutsu H, Yamaki M, Chad C, Fitz-Gerald F, Zhang K, Melton D, Eggan K. Optimal timing of inner cell mass isolation increases the efficiency of human embryonic stem cell derivation and allows generation of sibling cell lines. Cell Stem Cell. (in press)

[著書(欧文)]

1. Sullivan S, Egli D, Akutsu H, Melton D, Eggan K, Cowan CA. Derivation of human ES cells. In “Human Embryonic Stem Cells: The Practical Handbook” ed. By Sullivan S, Cowan CA and Eggan K. John Wiley & Sons, Chichester, 2007.

[総説(和文)]

1. 梅澤明弘,阿久津英憲.骨・軟骨再生に関わる細胞源.Clin Calcium 2008;18(12):1721-1727.

2. 梅澤明弘,高橋秀和.幹細胞-基礎から臨床応用まで-間葉系幹細胞の基礎と応用 間葉系幹細胞の培養技術.最新医学 2008;63(12):2324-2328.

3. 梅澤明弘.II.細胞ソースとバンキング 間葉系幹細胞の継代に伴う特性変化.再生医療 2008;7(4):389-392.

4. 梅澤明弘.3.発生・分化・老化・再生医学 間葉系幹細胞の起源.生体の科学 2008;59(5):394-395.

5. 梅澤明弘.新しい幹細胞テクノロジー 幹細胞技術の現状と展望-生体マイクロデバイスによる臓器再構築.実験医学 2008;26(18):2936-2939.

6. 阿久津英憲,山田満稔,梅澤明弘.生殖補助医療をめぐる諸問題 8.卵子の加齢.産科と婦人科 2008;75(10):1257-1264.

7. 豊田雅士,梅澤明弘.臨床糖鎖バイオマーカーの開発-糖鎖機能の解明とその応用 第4章 臨床編 1.糖鎖関連バイオマーカーの医療応用 4)再生医療における糖鎖マーカー.遺伝子医学MOOK 2008;11:240-244, 15-16.

8. 梅澤明弘,豊田雅士,阿久津英憲.iPS細胞と再生医療.日本病院薬剤師会雑誌 2008;44(7)1023-1027.

9. 西野光一郎,梅澤明弘.広がる''エピジェネティック疾患''研究の世界 エピジェネティクスと再生医療.医学のあゆみ 2008;225(7):588-592.

10. 梅澤明弘,牧野初音.基礎研究の進歩 細胞ソースの確立.日本臨床 2008;66(5):865-872.

11. 梅澤明弘,西野光一郎.エピジェネティクス-最近の動向と疾患-各種疾患におけるエピジェネティクス研究の新展開 再生医療とエピジェネティクス研究.最 新医学 2008;63(4):833-841.

12. 上大介,渡邉昌俊,石井隆雅,梅澤明弘.グレムリンは心筋発生への決定経路を強化する.再生医療 2008;17 増刊号:227.

13. 梅澤明弘.間葉系幹細胞の組織特異性および継代に伴う特性変化.再生医療 2008;17 増刊号:148.

14. 梅澤明弘.月経血,臍帯血由来の間葉系幹細胞提供システム.血液・腫よう科 2008;56(1):100-106.

15. 高橋祐司,宮戸健二,齋藤英和.生殖における酸化ストレスの生理的役割と不妊症疾患.実験医学 2008;26(4):586-590.

[著書(和文)]

1. 宮戸健二,岡部勝 編.顕微鏡活用なるほどQ&A.羊土社 東京 2008.

2.学会発表

[招待講演・特別講演・シンポジウム・ワークショップ]

1. 阿久津英憲.iPS研究の現状と方向性 シナジスティックアプローチの必要性.総合科学学術会議第47回生命倫理調査会,東京,1月31日,2008.

2. 阿久津英憲.ヒトES細胞培養のピットフォール.第81回日本組織培養学会総会,つくば,5月19-20日,2008.

3. 阿久津英憲.ヒトES細胞とiPS細胞研究のゆくえ-世界をみつめて-.第18回自治医大不妊症診療勉強会,自治医大,5月23日,2008.

4. 梅澤明弘.Glycoscience for Innovative Medicines: A Case Study in Japan

BIO2008 International Convention, 米国サンディエゴ,June 17-20, 2008.

5. 阿久津英憲.再生医療研究の現状に関して.東京都難病連絡協議会,東京,6月8日,2008.

6. 宮戸健二.Tetraspanin and gamete membrane fusion. FASEB Summer Research Conference. 米国コネチカット州ニューヘブン,6月27日,2008.

7. 阿久津英憲.ヒトES細胞とiPS細胞研究の現状と未来.平成20年度県立広島大学生命環境学部セミナー,庄原,6月28日,2007.

8. 阿久津英憲.受精卵を用いたクローン技術-3前核胚の応用-.総合科学学術会議第49回生命倫理調査会,東京,7月16日,2008.

9. 宮戸健二.The fusing ability of sperm is bestowed by CD9-containing vesicles released from egg sin mice. 第3回生殖研究ワークショップ,東大三崎臨海実験所,8月9日,2008.

10. 阿久津英憲.卵子がにぎるES細胞の質.第26回日本ヒト細胞学会学術集会,東京,8月30日- 31日,2008.

11. 阿久津英憲.失敗しないヒトES/iPS細胞の培養.第29回神経組織培養研究会,東京,9月20日,2008.

12. 宮戸健二.受精現象の可視化から膜融合の分子機構解明へのアプローチ.第53回日本生殖医学会学術講演会,神戸国際会議場,10月24日,2008.

13. 阿久津英憲.ヒト万能細胞は本当に“万能”か -ES/iPS細胞研究の行方-.平成20年度日産婦会福島地方部会秋季学術集会,郡山,10月26 日,2008.

[一般演題発表]

1. 阿久津英憲. Unique differentiation character of embryonic stem cells derived from oocyte of 76 weeks old-aged mouse. 41st Annual Meeting of the Society for the Study of Reproduction, 米国・ハワイ,5月27-30日, 2008.

2. 宮戸健二.The fusing ability of sperm is bestowed by CD9-containing vesicles released from egg sin mice. 第31回日本分子生物学会年会,神戸,12月9日,2008.

【公的研究費】

1. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 創薬基盤推進研究事業(ヒトゲノムテーラーメード研究)

糖鎖プライマー法を利用した白血病等の発現糖鎖パネル化と発現糖鎖プローブの開発による診断・治療への応用

梅澤明弘(分担)(3,000,000)

2. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 政策創薬総合研究事業

規格化された高品質な成育バイオリソースと異種由来成分を排除した完全ヒト型培養システムの構築-再生医療・細胞治療の有効性、安全性の検証システムの標 準化-

梅澤明弘(代表)(35,550,000)

3. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 政策創薬総合研究事業

ヒト乾燥羊膜の機能再生医療材料への実用化に関する研究

阿久津英憲(代表)(9,500,000)

4. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 創薬基盤推進研究事業

ヒトiPS細胞等応用による新規細胞評価系構築のための基盤研究

梅澤明弘(分担)(17,000,000)

5. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 医療機器開発推進研究事業

エコーガンによる低侵襲の胎児期遺伝子治療:胎児腹腔内への非ウイルス性ベクター注入と胎児肝母体外超音波照射による遺伝子機能発現の出生前是正

梅澤明弘(分担)(3,000,000)

6. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業

歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発

梅澤明弘(分担)(1,500,000)

7. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業

超少子化時代のわが国における新たな不妊症原因の究明と社会に即した治療システムの開発

阿久津英憲(主任)(15,320,000)

8. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 子ども家庭総合研究事業

生殖補助医療の医療技術の標準化、安全性の確保と生殖補助医療により生まれた児の長期予後の検証に関する研究

梅澤明弘(分担)(1,500,000)

9. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業

ヒト幹細胞を用いた細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保のあり方に関する研究

梅澤明弘(分担)(1,000,000)

10. 厚生労働省 成育医療研究委託費

外来種由来因子を排除し品質保証されたヒト幹細胞の樹立

梅澤明弘(主任)(4,500,000)

11. 厚生労働省 成育医療研究委託費

生殖腺・配偶子保存を中心とした悪性腫瘍患者の妊孕性温存

宮戸健二(分担)(800,000)

12. 厚生労働省 成育医療研究委託費

再生医療技術の開発と臨床応用に関する研究

阿久津英憲(分担)(1,000,000)

13. 厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費

筋ジストロフィーに対する治療研究を臨床に展開するための統括的研究

梅澤明弘(分担)(2,500,000)

14. 厚生労働省 循環器病研究委託費

生理活性ペプチドを用いたメタボリックシンドローム合併症に対する新規組織保護再生治療法の開発

梅澤明弘(分担)(1,500,000)

15. 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(S)

次世代幹細胞治療のための生物機能改変技術の開発

梅澤明弘(分担)(2,000,000)

16. 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)

ヒト心筋形成物質(因子)の同定-ヒト心筋の再生誘導-

梅澤明弘(代表)(4,300,000)

17. 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)

不妊病態に関わる膜融合因子の研究と生殖医療への応用

宮戸健二(代表)(2,800,000)

18. 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(C)

「ヒトパピローマウイルスの口腔病理学」に基づいた細胞の寿命制御

寺井政憲(代表)(1,000,000)

19. 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(C)

糖鎖バリデーションシステムを利用したヒト卵細胞の老化と試験管内成熟

豊田雅士(代表)(1,300,000)

20. 文部科学省 科学研究費補助金 萌芽研究

精子・卵の細胞接着の分子メカニズムと生殖医療への応用

宮戸健二(代表)(1,300,000)

21. 文部科学省 科学研究費補助金 萌芽研究

ヒト胚性幹(ES)細胞を生かすことができるヒトフィーダー単離システムの創成

美留町潤一(代表)(700,000)

22. 文部科学省 科学研究費補助金 若手研究(B)

筋ジストロフィー疾患への細胞移植戦略-膜融合理論に基づく骨格筋再生による治療開発

崔昌浩(代表)(1,100,000)

23. 文部科学省 科学研究費補助金 若手研究(B)

“fetus as a patient”-胎児に対する骨髄移植の治療戦略-

井原則公(代表)(1,300,000)

24. 文部科学省 科学研究費補助金 若手研究(B)

糖鎖プローブによる卵子評価の開発と生殖医療への応用

宮本潔子(代表)(1,300,000)

25. 文部科学省 科学研究費補助金 若手研究(B)

胎盤由来細胞を用いた血管内皮細胞培養システムの確立

牧野初音(代表)(700,000)

26. 文部科学省 科学研究費補助金 特別研究員奨励費

眼疾患に対する遺伝子・幹細胞治療-ヒト眼球幹細胞の可塑性と脱分化遺伝子Msx-

世古裕子(代表)(1,100,000)

27. 文部科学省 再生医療の実現化プロジェクト

再生医療対応ヒトES細胞樹立と長期安全性・品質保持システムの確立-戦略的ヒトiPS細胞を先導する基盤研究-

阿久津英憲(代表)(28,000,000)

28. 経済産業省 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構

バイオ心筋機能向上技術の開発

梅澤明弘(9,000,000)

29. 経済産業省 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構

糖鎖プロファイリングによる幹細胞群の品質管理、安全評価システムの研究開発

阿久津英憲(13,000,000)

30. 経済産業省 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構

基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発 間葉系幹細胞を用いた再生医療早期実現化のための橋渡し研究

梅澤明弘(プロジェクトリーダー)(16,000,000)

31. 経済産業省 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構

基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発 再生医療材料の安全性の確立と規格化及び臨床研究への応用

宮戸健二(4,000,000)

32. テルモ科学技術振興財団

生分解性骨再生用インテリジェント足場材料の開発

梅澤明弘(代表)(10,000,000)

33. 財団法人喫煙科学研究財団

喫煙による胎児・小児の骨軟骨成長障害-ヒト成長軟骨細胞モデル系のイノベーションを利用したニコチンの新規作用の発見―

梅澤明弘(代表)(2,000,000)

34. 財団法人コスメトロジー研究振興財団

形成外科領域におけるヒト間葉系幹細胞移植を用いた瘢痕形成制御の実現ならびに問題点の抽出と改善

梅澤明弘(代表)(1,000,000)

35. 三共生命科学研究振興財団

疾患モデルシステム展開のためのヒト多能性幹細胞マイクロRNA制御の解明

阿久津英憲(代表)(1,000,000)