骨髄間質細胞株の樹立、CMG細胞の特徴、CMG細胞の活動電位

2-1. 骨髄間質細胞株の樹立

C3H/Heマウス大腿骨骨髄より,Dexter法により初代培養を行った.骨髄間質細胞は付着細胞であ り,血球系の細胞を除去した後,3ヶ月以上の長期培養を行った.長期培養後,不死化した細胞による多クローンの細胞株を作成し,その中からサブクローニン グを反復した.得られたサブクローンの中から自己拍動をする割合が高いクローンを最終的にCMG細胞と命名した.CMG細胞は凍結融解を繰り返しても表現 型は変わらず,分化誘導後自己拍動を開始する比率も変化しなかった.

2-2. CMG細胞の特徴

CMG細胞は5-azacytidineによる最終的な分化誘導を行う以前には単核の線維芽細胞の形状を 呈したが,分化とともに形態は著しく変化した.分化誘導1週目頃より一部の細胞の細胞質が大きくなり円形を呈してくる.一部は棒状を呈し,細長くなった. これらの細胞が後に自動拍動を開始する細胞となるが,この時点では自動拍動を行うことは稀であった.分化誘導後2週になると既にこうした細胞の多くは自己 拍動を開始した.興味深いことに,この自己拍動を開始した細胞が互いに連結しあい,縦に連結し筋管細胞状を呈したことである.3週では多くの細胞が縦に一 列に並び,同期して収縮した.

免疫組織化学では分化誘導後1週間では既にミオシンを発現し,細胞体が円形をしていた.2週では近接する ミオシン陽性細胞が筋管を形成していく様子が観察された.3週ではこれが完全に連結した細胞が同期して収縮した.CMG筋管細胞は分岐により他の筋管細胞 と接合し,全体としては網の目状の外観を呈した.筋管の長さは最長のもので3 mmに達し,拍動数120-250/分で収縮した.

2-3. CMG細胞の活動電位

ガラス微小電極を用いて記録したCMG筋管細胞の活動電位は洞結節細胞型と心室筋細胞型の2種類に大別さ れた.両者に共通した活動電位の特徴は1.活動電位持続時間が長いこと,2.比較的浅い静止期電位をもつこと,3.ペースメーカー細胞に見られるような静 止期電位の緩やかな脱分極が認められることであった.また,心室筋細胞型では活動電位はPeak & Dome型を呈した.分化誘導初期には洞結節型が多く,時間と共に心室筋細胞型が多くなることも明らかにした.また,Ca遮断薬であるベラパミルを投与す ると,この活動電位がカルシウム電流を起因するものであることが明らかになった.