EATの実験計画

  1. ヒトEC細胞よりEATを免沈してきて,アルリルアミドの濃度を決める.即ち,ビスとアクリルアミドの比を変化させることによって,バンドが明確に2本でるようにする.例としてアクリルアミド30gとビス0.4g, 0.8g, 2.0gとする.だんだん減らす.

  2. 一番最初にやる実験(アクリルアミドの条件を決めてからではある)は,EATをヒトEC細胞か ら免沈してきて,フォスファターゼ処理をして,泳動する.このときは,いつも4レーンを1セットとする.即ち,第I,2のレーンには,EC細胞のレチノイ ン酸処理前後,そして第3,4レーンには,心筋虚血の前後でやる.だけど,ラットのEATないしはマウスのEATが,われわれが保持している抗体で免沈さ れるかどうかは佐野君に聞く.ダメなときはヒトEC細胞だけで取りあえず行う.ここでの目的は,細胞の問題は関係なく,ただEATがリン酸化されるかどう かを検討するだけである.まず用いるフォスファターゼは,CIP, Potate Acid phosphatase, Tomato acid (alkali?) phosphataseである(コントロール実験).後に論文にするためには,PP2A (Serine, Threonine特異的)とLAR (Y045: Tyrosine特異的)で行うことが必須である.CIP, PAP, TAPはinhibitorで阻害されないが,PP2A, LARはinhibitorで阻害される.長くなるが,この後,リン酸化がとれて,バンドが下がったものを活性型JNKで再びバンドの高さを上昇させるこ とが大事である.できれば,EC細胞のレチノイン酸処理前後と心筋虚血前後を4レーンをセットとする.

  3. in vitroの実験として,GST-EATのセリン残基とスレオニン残基をアラニンに変えてから,活性型!JNKとγ-32P-ATPを用いてリン酸化す る.泳動して場所を見ればリン酸化したかどうか分かる.GST-EATとフラッグEATでは,GST-EATの方が安くて(アフィニティカラムが安い)い い.

  4. 活性型JNKを抽出するには,NBEで活性型JNK-GST fusion(細菌で作らせたJNK-GSTをMAPKKで活性型に変えたもの)を購入するのがひとつの手である.別の方法は,Jurkatt細胞に対し てsorbitolかNaClをかけて(浸透圧ショック)JNKを活性型にする.UVも悪くはないが,Jurkatt細胞にはUVをかけにくい.医科歯科 では,EATと(JNKまたはp38)とASK1をco-transfectionするのは活性型のJNKを得るのにASK1を用いた.

  5. ゲル内リン酸化法は,in vivoの中でJNKが主たるEATキナーゼかどうかを検討するのに適切である.だから,EC細胞,心筋虚血モデル,また受精卵の発生過程でこれらの実験 を行うのは大変意義がある.ある細胞ではEATキナーゼはJNKかもしれないし,それが虚血や分化や初期発生の過程で変化するかもしれない.

  6. EC細胞に対するin vivoの実験としては,ただ一次元電気泳動するだけだったら,10 mCiか下手すれば1 mCiくらいで実験ができる.ペプチドマップのためには絶対10 mCi orthophosphateが必要だが,後に言うマススペクトルでできればいいので余りin vivoのペプチドマップは考えない方が「とりあえず」いい.

  7. 一番最後に行う実験をして,ペプチドマップ(in vivo)の代わりにTOF-MSがある.受託でやっているそうで,Sawadyなどで行っているという記憶が松田先生にはある.

  8. 話がずれるが,c-jun mRNAはJNK(MAPK)で安定化するという事実はある.JNKはEATに対しても同様の作用(EATのmRNAを安定化する作用)があるかもしれない.だって,心筋虚血の際には,JNKは核に移行するということが知られている.