工学系の学会にて思ったこと

1999年 記載

工学系の学会にて思ったこと

奈良で行われた「細胞工学」という国際学会に行って来ました。工学系の学会でかなり分野の異なる学会で、内容が良く解らないので質問もせずに静かにしておりました。能楽堂で行われ、2方向から聴衆者の目があり、奇異な感じを受けました。

そのような中で、内容が分からない分、発表方法について気が付いたことがありました。3通りの方法で発表が行われました。一番多かったのは、コンピュウタを用いたもので、次がオーバーヘッド・プロジェクターを用いた発表で、残りはスライドでした。私はスライド以外の発表はほとんどしたことがありませんので、奇異な印象を受けました。奇異な印象と言うと変なイメージがありますが、正確に言えば良い意味で驚きました。コンピュウタを用いることで、動画をビデオ無しで示すことが可能となっていました。また、図の一部を変えることができ、それによって明らかに理解が深まりました。ピントがずれて困ることがなくなりました。コンピュウタは基本的に発表者が演題の上から自分で操作しますので、スライド係がいらないように感じました。発表者も練習の時にコンピュウタ上で練習できますので、便利なような気がしました。

欠点として、一番感じたことは発表者がコンピュウタを持って行かなくてはいけない点です。コンピュウタは決して軽くありません。外国からの研究者は、わざわざ海外からコンピュウタを持参したようです。電気のコンセントと電圧の問題はどうしたのか知りませんが、各国で異なる規格があると予想されます。画像の質は、スライドの方がいいはずです。組織の写真やX線ではスライドの方がいいと主張する方がいるかもしれません。

本年度の慶應医学会総会でも、コンピュウタで発表した方がいらっしゃいましたし、塾長がスピーチの際に利用するのを拝見したこともあります。自分のまわりでも、じょじょにコンピュウタを利用した学術発表が普通のものになっている現実があります。自分がコンピュウタを使用しない理由も考えてみました。まず、多くのスライドの蓄積があり、その作成方法を含め、慣れています。自分はその発表用のソフトに慣れていません。コンピュウタは重い。また、自分は発表用に使用できるポータブルのコンピュウタを一台も持っていない。言い訳にすぎないかもしれませんが、自分は今の所は使用するつもりはありませんが、動きを伴う発表には大きな力となることは間違いありません。

ここで申し上げたいことは、発表の方法についてです。発表そのものは、個々の発表者のレベルによって大きく異なり、発表方法そのものによる差よりも大きいことは明らかなのですが、コンピュウタによる発表が一番感銘を受けたことは間違いありません。このことは、新しいものが全て良く見えることとは異なります。また、発表の際にコンピュウタを使用した方が、不手際のために学会が遅れることはひとつもなかったことを申し添えます。