ヒトの発生過程でメチル化が ばらついている話

1999年 記載

ヒトの発生過程でメチル化がばらついている話

遺伝子の転写調節領域のDNA のメチル化ないしクロマチン構造は,発生過程で正確に決定されていると考えられています.特に転写調節領域のメチル化は遺伝子発現と逆相関になっており,このことは成体のヒト・マウスの組織で明確となっています.一方,発生初期ではプロモーター及びエンハンサーが転写調節領域のメチル化はかなり「ばらつく」可能性があり,確率論的に決まっているのではないかと考えています.言い換えれば初期発生では遺伝子発現はDNA の不規則なメチル化に依存しており,組織と比べていいかげんでではないかということです.「遺伝子のプロモーターは発生初期に高度にメチル化がかかっているがそのメチル化は分裂を繰り返すごとに確率論的に希釈され減少し,ある時点で遺伝子が発現可能な状態になる.個々の遺伝子または細胞をみるとメチル化は確率論的ではあるが,全体としてみると時間的空間的に正確に遺伝子発現は決定されているようにみえる.」ということです.初期発生過程の細胞のDNA メチル化を遺伝子ひとつひとつについて決定することで少なくとも組織とは異なり初期発生ではメチル化はばらばらであることまでを示したく思います.