第三回 「持続的な食文化」
第三回 「持続的な食文化」
登壇者:百田美知(食文化研究家)
発表テーマ: 和食文化・郷土料理の事例
登壇者から一言: 栽培技術の進化や温暖化は「旬」を変え、流通や情報の発達は地域性を薄れさせている。
持続可能な食文化とはなにか。ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」や、郷土料理を事例に考えたい。
座長の解説:登壇者は,薬膳・和食文化研究科として活動しており,酢みかんについての造詣も深い.講演では,まず在来野菜として,物部川の上流ではハチマキ大豆,安芸市では入河内大根など,地域にそれぞれ特有のものがあったが,現在は少なくなり,「在来野菜は生きた文化財」であることを強調されていた.また味噌や醤油は,家庭で作るものであったが,買う時代となり,独自の郷土料理が減っていることを嘆いていた.同じ品種の植物でも自生のものは,栽培されたものより味が強いとのことで,自生している有用植物の保全の重要性を説き,食文化も含めて消えていくものに対して,自分は残していきたいと訴えていた.里山工学において重要なテーマを扱ってくださっている.
登壇者:松原浩二(松原ミート)
発表テーマ: 食を通した仕事と暮らし
登壇者から一言: 東京でフランス料理のシェフをしていました.現在は香美市で食肉製品製造業をしています.暮らしと仕事の両立を考えながら辿ってきたこれまでの道を紹介し,食と健康について考えていきたいと思います.
座長の解説:登壇者は,フランスで修行を積み,東京に戻って有名なレストランで働いた後,六本木にフランス料理店を開業.その後高知に移住し,食肉製品製造業をしている.その経緯を対談形式で伺った.働く場を選ぶきっかけは成り行きのようで,大きな志を感じさせないものの,仕事には真摯に向き合い,自身のスキルを磨くプロセスは凄まじく,職人の魂を感じた.一方で,レストランで働くのは過酷で,家庭での暮らしと両立できないことから,食肉製品製造業に切り替えたとの話は,生き方として素晴らしい.そして健康のため,化学調味料の入っていない天然素材の重要性を訴え,学生でも作れる簡単なレシピを紹介していただいた.
ゼミナールを終えて: 高知工科大学の里山研究フィールドがある佐岡地区にも佐岡大根という在来種があったそうだ.佐岡地区は,火山灰土が残っているので,土壌との相性も良かったのだと思われる.地域の地理的特徴を活かした栽培は,無理が少ないことから持続的な栽培が可能である.
今回の登壇者に共通する点は,天然素材中心の食生活にすることで健康が取り戻せたということだった.商品を買う時,ラベルを読んで何が入っているか確認し,よく分からないものが入っているものは避けた方が良い.
今回紹介してもらったレシピに,タイムというハーブが入っていた.手に入りにくいので,大学の敷地に植えられているローズマリーに代えても良いのか聞くと,松原さんは「別にタイムはなくて構わない.ローズマリーを入れるとその味になるだけ」とバッサリ.ポン酢にしても何の酢が良いのか聞くと,百田さんは「柚子を入れると,柚子の味になるだけ」と,これもバッサリ.そりゃそうだと思うものの,素人なので答えを欲しがってしまう.レシピは一つの例示に過ぎない.自分で味が想像できるようになるまで経験を積む必要がありそうだ.