第一回 「地域における建築の未来」
第一回 「地域における建築の未来」
発表テーマ:「地球を体感するパッシブハウス」と「四季ある家+」
登壇者から一言: 太陽や風の恵みを活かしつつ「地球を体感」できるパッシブハウスの追求を重ねています。それに加えて高知にて四季を感じる古民家改修に「何か」をプラスして作り上げる「古くて新しい民家」の構築をはじめました。双方が重なる時、地域家屋の新たな未来が開けるかもしれません。
座長の解説:登壇者は建築家であり,里山工学では氏神さまの再建に尽力してもらった.今回のテーマは,パッシブハウス.「母なる地球,父なる太陽」をコンセプトに,空と地を結ぶ場所がパッシブハウスの要だと力説していた.日時計のように家屋内で太陽の位置が意識できる空間や,北極星の見える天窓を設置した数々の作品が紹介された.最後に,二人目の登壇者と共同で取り組んでいる「四季のある家,常春のハコ」と題した古民家とトレーラーハウスを組み合わせた作品について,無鉄砲な共同研究者との取り組み状況をユーモアを交えて紹介してもらった.今後も奇抜な作品が生み出されていくことだろう.
発表テーマ:”居心地”の良い空間を拡張する未来
登壇者から一言: 夏を旨とした日本古来の建築・住まい方と、閉じた空間で空調する現代的な建築・住まい方をいかに活かし、新たな建築・住まい方へとつなげるのか。温熱環境とともに地域の持つ豊かな環境とつながることで、”居心地”の良い空間を拡張するための新たな取り組みについて紹介します。
座長の解説:登壇者は室内環境の専門家であり,里山の微気候と古民家の温熱環境との関係を解析したり,トレーラーハウスの利活用に関する研究を行っている.今回は,最初の登壇者と共同で取り組んだ古民家とトレーラハウスを組み合わせた建築について,温熱環境の計測結果を示しながら紹介してもらった.トレーラーハウスを収容する建屋は,ポリカーボネートで覆い,中で太陽光発電が機能するようにしている.夏場の日中はかなり暑くなるが,エアコンの効いたトレーラーハウスで凌ぎ,朝夕は冷涼な北側の土間空間を利用することができる.トレーラーハウスを置くことで,季節と時間帯に応じた居心地の良い場所の選択肢が広がるということであった.この夏にトレーラーハウスが納入されるということで,実際の住み心地については,今後検証を重ねていくようである.
登壇者:梅原佑司(風憬社,高知工科大学)
発表テーマ:里山と建築
登壇者から一言: 里山の風景は、自然と人の暮らしが長い年月をかけて共に形づくってきたものです。
里山の資源を活かし、持続可能な暮らしを支える建築の役割とは何か。
風憬社として地域に根ざした新しい拠点づくりの取り組みを通して、自然と共にある建築の可能性についてお話しします。
座長の解説:登壇者は,高知工科大学出身で,卒業後建築設計の道へ進み,現在は設計事務所を立ち上げるとともに高知工科大学の特任准教授として教鞭をとっている.「自然と共にある建築」「人と風景の再接続」というテーマのもと設計に取り組み,アウトドアメーカーとキャンプ場を設計したり,宿泊施設としてのトレーラーハウスを設計した経歴を持つ.昨年,物部川の川畔の土地を購入し,自身が主宰している設計事務所をそこに移すため,現在学生を巻き込んで様々な活動を行っている様子を紹介してもらった.現在は,人が里山に関わり続けられるために建築で何ができるか,という問いに答えるべく活動している.今後の活動が楽しみである.
ゼミナールを終えて:現在の地域は,里山に限らず人口減少が著しく,空き家が増える一方である.市街地は地区ごとに再開発しているところもあるが,田舎では難しい.そこで,地域での建築は今後どうあるべきか,建築の専門家に登壇してもらった.パッシブというキーワードは,里山暮らしに適合しそうである.しかし古民家の改修だけでは,現代の多くの若者は受け入れてくれないだろう.そこで今回の登壇者が提案したのはトレーラーハウスである.トレーラーハウスには太陽光パネルを設置し,室内はエアコンが完備する.気密性が高いので虫も入ってこない.自然環境の良さには憧れるものの,虫嫌いの若者は増えているので,トレーラーハウスの導入は一つの解決策と思われる.ただ,トレーラーハウスにこだわる必要はなく,機密性の高い部屋を一つ用意するだけで良いのではないだろうか.トレーラーハウスを起点に,里山におけるスタンダードな建築が生まれて来そうである.