第二回 「トレーラーハウスの可能性」
里山に適した建築の未来を考える
登壇者:梅原佑司(風憬社,高知工科大学)
発表テーマ:里山と建築
登壇者から一言: 里山の風景は、自然と人の暮らしが長い年月をかけて共に形づくってきたものです。里山の資源を活かし、持続可能な暮らしを支える建築の役割とは何か。風憬社としての地域に根ざした取り組みや、off-grid cabinなどの実践を通して、自然と共にある建築の可能性についてお話しします。
座長の解説:登壇者は,風憬社という設計事務所を主宰しており,今年度から高知工科大学の特任准教授として教鞭をとっている.本発表では,これまで設計してきた様々なキャンプ場やトレーラーハウスについて説明しながら,人が里山に関わり続けられるようにするため,建築にできることは何かという命題に対するそれぞれの思いを語っていただいた.その命題に対する答えの一つとして,現在は「自然の中で働く場をつくる」というテーマで活動している.香北町の物部川河畔に設計事務所を建て,自らそれを実践しようと活動している.登壇者を含め,トレーラーハウスを運営しているのは,高知工科大学の卒業生である.その卒業生たちの思いと,我々の思いとが重なる部分が多く,今後の発展が楽しみである.
登壇者:佐藤理人(高知工科大学)
発表テーマ:里山を活用した移動型空間の未来を考える
登壇者から一言: トレーラーハウスを含む移動型空間は、里山のような人と自然が積極的に関わる地域で、より多様な活用が考えられます。発表では温熱環境やエネルギーの視点も踏まえながら、里山と移動型空間の未来について考える機会としたいと思います。
座長の解説:登壇者は,高知工科大学の准教授で,室内環境を専門としている.里山研究フィールドの古民家でも温熱環境を計測し,解析を行っている.本発表では,トレーラーハウスを含む移動型空間について,各国の事例を紹介したのち,日本におけるトレーラーハウスの規制や要件を解説していただいた.次に里山での利活用に向け,様々な計測を行った成果を知ることができた.斜面温暖帯に位置する里山の場合,冬は熱が逃げにくいというメリットがあることや,古民家を計測した結果,瓦屋根や土壁が熱を遮蔽し,特に床下には冷気が溜まっていることが示された.現在,この登壇者も香北町の敷地に移動型空間を導入しようと計画中だという.これについても今後の展開が楽しみである.
ゼミナールを終えて:トレーラーハウスは建築物ではなく,車両として扱われるため,多くの規制をクリアしなければならないことが分かった.また,運ぶための道や導入路も十分な幅員が必要なので,どこでも置けるものではない.トレーラーハウスは,一つの選択肢として捉えておいた方が良さそうである.現在,上下水道・電気・ガスなどのインフラの維持管理は,地方財政上大きな負担になっている.インフラに頼らないオフグリッド建築の重要性は,田舎ほど高まっていくだろう.