1.本年度の活動方針
本研究会の設立趣旨のひとつは「最新の研究内容や方法を、高校・大学教育で使えるように紹介する」ということです。
歴史学研究をはじめ人文学研究の目標のひとつは、「自分の立ち位置の探究(クエスト)」であることは言うまでもありません。歴史学研究でいえば日本史・東洋史・西洋史の違いを問わず、今の日本/今の世界における自らの研究の位置づけを求められています。歴史教育でいえば、文学部学系出身と教育学部系出身の違いを問わず、高校生・大学生の目線にたった「自らの立ち位置の探究(クエスト)」を支える役目が求められています
阪大歴史教育研究会の参加者の多くは、高校・大学の歴史教育の現場に携われている(あるいは将来携われる)方々です。プラトンの対話篇『テアイテトス』で語られるソクラテスの問答法は、「助産師」の例えで知られています。対話相手になっている教師を「助産師」に例え、生徒は「助産師」の助けを得ながら、自らの内面に隠されていた「知識」を探り出すという訳です。歴史教育の現場にたつ私たちは、ソクラテスの対話における「助産師」としての高校生や大学生たちが自らの内面に隠されていた「知識」をクエストする際にそれを支える立場にあることに変わりはありません。
昨年度は「ジェンダーを読み解く」合評会シリーズを軸に、歴史学と歴史教育がジェンダーの視点をどう取り入れるかを議論しました。帝国主義論の例会(院生発案)、「ポジショナリティ・ケア・対話」の例会(高校教員発案)もあわせて、「誰の視点で歴史を語るのか」という問いを多角的に掘り下げた一年でした。
本年度は、この蓄積を踏まえ、研究会の軸足のひとつを「歴史におけるポジショナリティ」に置きます。
歴史叙述や教科書が「誰の立場から書かれているのか」という問いは、ジェンダーにとどまらず、カースト、人種、宗教、階級、植民地と宗主国の関係など、歴史教育のあらゆる場面に通底します。現在進められている指導要領の見直しでも「多様性の包摂」が主要なキーワードの一つとされており、この問題系に取り組む意義は増しています。さらに、生成AIが教育現場に急速に浸透するなかで、「AIが語る歴史は誰の立場から構成されているのか」という新たな問いも浮上しています。こうした多方面にわたるポジショナリティの問題を、実際の授業実践と結びつけながら掘り下げていきます。
あわせて、2026年度に大阪大学人文学研究科へ新たに着任される先生方の研究を、例会で積極的にご紹介します。先端的な研究と高校の教室をつなぐ回路を確保することは、高大連携を掲げる本研究会の存在意義そのものに関わると考えています。これらの活動を通じて、最新の大学における歴史学研究が日本で歴史教育を受ける人たちにむけて「いかに語られるべきか」に配慮しながら、「助産師」に位置づけられるべき皆さん、つまり「歴史教育における探究(クエスト)をデザインできるみなさん」との交流の場としていければ幸甚の至りです。
2.本年度の活動日程
原則として、3ヶ月に一度、第3土曜日に開催します。
対面とオンライン(ZOOM使用)とを併用するハイブリッドで開催します。
今年度例会の開催予定日
第169回例会:2026年4月18日(土)
第170回例会(予定):2026年7月18日(土)
第171回例会(予定):2026年10月17日(土)
第172回例会:2027年1月23日(土)あるいは2027年2月20日(土)←2027年1月16日は共通テストが実施されるため、第172回例会は2027年1月23日(土)あるいは2027年2月20日(土)に開催します。