修士課程で取り組んだ落葉を分解する菌類の生態研究第2報．

　カシ葉の分解に伴う菌類遷移の調査中に分離された新種，Beltraniella botryospora Shirouzu & Tokum. をスケッチ・写真とともに記載した．核 rRNA遺伝子を用いた系統解析により，本種と形態的に類似する不完全菌類 Beltraniella sp.，Beltrania rhombica，Beltraniopsis sp.，Subramaniomyces fusisaprophyticus が子嚢菌Pseudomassaria carolinensis と単系統群（Beltraniaクレード）を形成することが示された．Pseudomassaria carolinensis の無性世代はBeltraniella 属菌の形態をとることから，Beltraniaクレードを構成する菌種は無性生殖世代の形態において共通性があるといえる．さらに，Beltraniaクレードは強力な植物基質分解菌であるクロサイワイタケ類が所属することで知られる Xylariales（クロサイワイタケ目）の系統に含まれた．

　本種はアカガシの生葉・落葉から高頻度で分離されたが，同じ調査地のシラカシ，スダジイの生葉・落葉からは全く出現せず，唯一，ウラジロガシから1度だけ分離された．このことから，本種はアカガシ葉に強い選択性を持つ内生菌もしくは落葉分解菌であると考えられる．

Shirouzu T., Hirose D., Tokumasu S., To-Anun C., Maekawa N. 

Host affinity and phylogenetic position of a new anamorphic fungus Beltraniella botryospora from 

living and fallen leaves of evergreen oaks.

Fungal Diversity, Springer, 43, pp85–92, 2010

Abstract