これまでアカキクラゲ類の分子系統解析は主に北半球サンプルに基づいて進められてきたため，南半球産アカキクラゲ類の系統関係や多様性に関する知見は限られていた．本研究では，南半球産アカキクラゲ類の系統関係と種多様性を明らかにする目的で，2011年～2015年にかけてニュージーランドにて子実体採集を行った．

　結果，アカキクラゲ類の子実体441標本とこれらの分離株281株が得られた．分子系統解析および形態観察に基づく種同定の結果，8新種 Calocera pedicellata，Dacrymyces longistipitatus，D. pachysporus，D. stenosporus，D. parastenosporus，D. cylindricus，D. citrinus，D. cyrtosporus と既知種11種が同定された．これらのうち，8新種と既知種7種 Calocera fusca，C. cf. guepinioides，C. lutea，Dacrymyces flabelliformis，D. intermedius，D. subantarcticensis，Heterotextus miltinus はこれまで北半球からの報告がなく，南半球産アカキクラゲ相を特徴づける種であると考えられた．

　本研究により，南半球産アカキクラゲ相の一部を明らかにするとともに，アカキクラゲ綱のより信頼性の高い系統解析に向けてタクソンサンプリングを拡充することができた．

Shirouzu T.*, Hosaka K., Nam K.-O., Weir B.S., Johnston P.R., Hosoya T. 

Phylogenetic relationships of eight new Dacrymycetes collected from New Zealand.

Persoonia, Naturalis Biodiverity Center & Centraalbureau voor Schimmelcultures, 38, pp156–169, 2017

Abstract