博士課程で取り組んだアカキクラゲ研究の中核的論文．

　日本産アカキクラゲ相を明らかにすべく，北海道～沖縄の様々な樹林で調査採集を行い，得られた標本をもとに分類学的研究を行った．日本産アカキクラゲ相が調査されるのは実に70年ぶり． 

　結果，Dacrymyces ancyleus Shirouzu & Tokum.，D. aureosporus  Shirouzu & Tokum.，D. pinacearum Shirouzu & Tokum.，D. subarcticus  Shirouzu & Tokum.，Dacryopinax sphenocarpa  Shirouzu & Tokum. の新種5種と，日本新産種9種を含む6属28種を採集・同定した．これにより，日本産アカキクラゲ類の全記録種数は27種（＋1品種）から43種（＋1品種）に増加した．得られたアカキクラゲ類の形態的特徴をスケッチ・写真とともに記載した．形態に基づく種同定は分子系統解析によって再確認した．今回記載された5新種の中には無性生殖世代のみ確認された種が2種が含まれており，アカキクラゲ類の無性生殖世代がこれまでの認識よりも多様であったことがうかがえる．また，アカキクラゲ綱内の科・属レベルの分類学的問題についても議論した．

Shirouzu T., Hirose D., Tokumasu S. 

Taxonomic study of the Japanese Dacrymycetes.

Persoonia, National Herbarium Netherland & Centraalbureau voor Schimmelcultures, 23, pp16–34, 2009

Abstract