Fungal succession associated with the decay of leaves of an evergreen oak, Quercus myrsinaefolia

 修士課程で取り組んだ落葉を分解する菌類の生態研究第1報.

 落葉の分解に伴ってそこに生息している菌類の種組成が移り変わっていく現象,「菌類遷移」に関する研究.落葉上の菌類遷移は主にマツなどの針葉樹で研究されてきたが,シイ・カシなどの常緑広葉樹ではまだよくわかっていない.落葉分解に伴う菌類遷移の統一的理解に向けて,広葉樹,特に常緑広葉樹の落葉上で進行する菌類遷移を理解する必要がある.そこで,常緑広葉樹の葉上で起こる菌類遷移の知見を蓄積する目的で,明治神宮の社寺林にてシラカシを対象とした調査を行った.

 シラカシの生葉と落葉を 2005年4月(春),8月(夏),10月(秋),2006年1月(冬)に採集した.採集した葉からコルクボーラーにてディスクを打ち抜き,洗浄後,寒天培地上で培養し,出現してきた菌類を顕微鏡下で識別して分離する方法により菌類群集の調査を行った.結果,シラカシ葉には針葉樹や落葉広葉樹とは異なる特徴的な菌類群集が形成されていることが分かった.さらに,葉の菌類群集を樹上の生葉から分解の進んだ落葉まで調査し,シラカシ葉の分解に伴う菌類遷移を明らかにした.全体的な菌類遷移パターンは落葉量が最大となる初夏の落葉上で起こる菌類遷移によって特徴づけられていた.

図.シラカシ葉の分解に伴う菌類遷移

Shirouzu T., Hirose D., Fukasawa Y., Tokumasu S.

Fungal succession associated with the decay of leaves of an evergreen oak, Quercus myrsinaefolia.

Fungal Diversity, Fungal Diversity Press, 34, pp87–107, 2009

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