日本新産種Auricularia americana s. str.(キクラゲ目)

 モミ属樹木の材上に発生したキクラゲ属(Auricularia)の子実体を採取し,分子系統解析と形態比較によりA. americana s. str.と同定した.

 これまで本邦からの正式なA. americana s. str.の報告がないため,本研究が本種の日本初報告となる.北海道から多くの標本が得られたことから,A. americana s. str.の和名としてキタキクラゲを提唱した.

 市場に広く流通しているキクラゲ属菌の栽培では,培地の主原料として広葉樹材が用いられており,針葉樹材の利用は不適とされている.一方,A. americana s. str.の子実体はモミ属やマツ属などマツ科の針葉樹材上に発生することから,本種は針葉樹材を用いたキクラゲ属菌栽培手法の確立において有望な系統となりうる.

図.日本産Auricularia americana s. str

白水貴,大前宗之,新井文彦,稲葉重樹,服部友香子

日本新産種Auricularia americana s. str.(キクラゲ目).

日本菌学会会報,62,pp.125–130,2021

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