アカキクラゲ綱の分類と生態から見えてきた木材腐朽菌の多様性と進化

 アカキクラゲ綱を対象に取り組んできた木材腐朽菌の多様性と生態に関する研究成果について解説する.

 分子系統解析の結果に照らして分類体系を再評価し,新目Unilacrymales を設立するとともに,複数の科と属が単系統群ではないことを指摘した.

 また,本綱の宿主再現性を明らかにし,その要因について菌の木材分解効率から説明を試みた.さらに,二核菌糸が一核菌糸よりも高い木材分解効率を示すことを見出し,前者の後者に対する優位性を裏付けた.

 アカキクラゲ綱の効率的な多様性探索法を検討した結果,子実体採集では得られない未知の初期分岐系統を検出した.この結果に基づき,肉眼で見える子実体を形成せず環境中に潜在している未知系統が,ハラタケ亜門の進化を考えるうえで重要な系統的位置を占めている可能性を指摘した.

 アカキクラゲ綱を対象とした分類・生態研究を進めることで,木材腐朽菌の多様性と進化に関する理解をより深めることができるであろう.


白水貴 アカキクラゲ綱の分類と生態から見えてきた木材腐朽菌の多様性と進化.

日本菌学会会報,日本菌学会,57:13–22,2016

Abstract