1939年の原記載以来80年間報告がなかったDacrymyces pezizoidesを再発見し,形態観察および分子系統解析の結果とともに記載した.洋コマ状から円盤状の担子器果,クランプコネクションを欠く菌糸,厚壁の縁菌糸,3隔壁の担子胞子などの形態的特徴はホロタイプに基づく記載文と一致した.
一方,原記載では宿主が“サワフタギ”とされているが,今回得られた標本で同定された宿主はすべてアセビであった.この宿主植物の原記載との不一致は今後の検討課題であるが,そもそもアカキクラゲ類は木材腐朽菌のため宿主特異性はそれほど強くはないと考えられる.
これまでの採集記録から,本種は日本の暖温帯において,秋(10月~11月ごろ)に広葉樹枯死枝上で成熟した担子器果を形成していると考えられた.
和名は担子器果の色にちなみダイダイアカキクラゲとした.
図.Dacrymyces pezizoidesの担子器果.
Shirouzu T., Sanjo K.
Rediscovery of Dacrymyces pezizoides (Dacrymycetes, Basidiomycota) 80 years after
its original description.
Phytotaxa, Magnolia Press, 371, pp293–300, 2018